二十二 初めまして、神様
イアランが私に作戦を提案して一週間が過ぎた。
今、私達はエアマスの親衛隊を目の前に対峙していた。ハルコの姿が無いことが気がかりではある。
こちらはイアランを筆頭に師匠と師範、ウィン様と私、それとクアンタとヘキサも来た。
「まさか、生き帰ることができるとはな、イアラン」
「好きな女性を残していると成仏できないんだよね」
減らず口は相変わらずのイアラン。
だが、次の瞬間、イアランもエアマスも言葉を止めた。
空から光の柱が現れ、人間の年なら十歳くらいだろうか?短髪のその辺の子供が着ていそうな服を着た男児の姿をした者と、従者らしき二人が地上に降りてきた。
「ちょうど暇してたから助かるなぁ♪」
私には誰だか分からなかったが、師匠や師範が頭を下げた。
エアマスも親衛隊も、イアランも頭を下げる。
ウィン様と私は誰か分からずリアクションに困っていた。
すると従者の一人が私とウィン様に向けて叫んだ。
「人間界の神の御前である!エルフ共、頭を下げぬか!」
あー、神ね、神…神様!?
私もウィン様も慌てて頭を下げる。
「そんなことはどうでもいいよ。イアランの申し出、ゴットキラーの座を奪うための決闘を承諾したんだけど…絶対この戦い、面白いに決まってるよね♪さあ、さっさと始めちゃって」
何だか神様というよりワガママな坊ちゃんみたいに感じてしまう。
ここまで来た。いよいよ作戦が始まる!全てはイアラン次第である。
一週間前、イアランは作戦を説明してくれた。
「まず、第一段階。俺が復活してエアマスにゴッドキラーの座を狙うため決闘を申し込む」
そう、今人間界のゴッドキラーはイアラン死亡後、後任をすでに就任させており、ゴッドキラーの席は埋まっていた。
つまり、今イアランはゴッドキラーではない。まあ、死んだんだし当然と言えば当然である。
「人間界はゴッドキラーの座を狙って決闘をすることは許されている。それは神が決めたことだからな」
「で、イアランはどうやって勝つつもりなの?こう言っては何だけど、一対一で殺されたような相手でしょ?」
イアランは余裕の笑みで私に答える。
「ここでのポイントは、戦う者が使える武器、魔法なんだよ」
イアランは空中に魔法でで図を描いて説明を続けた。
「まず、基本は一対一で、自分の使う武具、魔法で戦うことになる。それと、俺の場合、召喚した生物は加勢ではなく魔法として見られるので何を召喚しようがルール違反にならない」
「つまり、ホワイトドラゴンのような強力な魔物もOKってことね」
イアランはホワイトドラゴンを描き、そこに×を書いた。
「あれは確かに強いけど、エアマス相手には不向きだ。悪魔じゃないエアマス相手にはホーリーブレスは大したダメージにならない上に俺の魔力を多く消費する」
「でもスライムは多く召喚できるけど、決定打を与えられないでしょ?他に強力な魔物召喚できるの?」
イアランは首を横に振った。
「なら、どうやって勝つのよ!」
「そこでジールにお願いがあるんだよね♪」
イアランは私の耳元で要件を話した。
「…そんなこと、可能なの?」
「レパルド先生は出来たんだよ。つまり、俺もできるよ」
イアランの自信ってどこから来るか分からないけど、今はそれしかないようである。
「早速練習したいから生き返らせてもらうかな♪」
「それなら、我が手伝ってやろう」
振り向くと鎌を手にしたアルビオが立っていた。
「その体から魂を刈り取り、遺体へ移してやる」
鎌は美しく光を反射し、今か今かと刈り取る時を待ちわびてるように見えた。
「アルビオ様、その、優しく、優しく、優しくして下さい…」
言い終わる前にイアランの体を鎌が切り抜けた。
すると淡く光る球がアルビオの手元に落ちて来た。
「時間が無いのであろう?行くぞ」
その後、アルビオは遺体に魂を鎌で叩き入れていた。
…アルビオ、ホワイトウルフの上に落としたって言ったの、ウソってばれてるよ、その行為で。
こうして、イアランは無事?生き返り、作戦成功に向けて動き出したのであった。
「ところでイアラン」
人間界の神がイアランを無表情で見つめてくる。
「俺はお前のこと、高く評価してるのは今も変わらない。ただな、エアマスも同じくらい気に入ってるんだよね」
「じゃあ、もうゴッドキラー、五人にしてみませんか?」
しばしの沈黙が辺りを包む。
「そういうとこなんだよ。俺はイアランのそういう度胸と、神である俺の裏をかこうとしてるところが気に入っててさ」
人間界の神はすっとイアランに近付き肩を叩く。
「でもさ、それと同時に私の裏をかくよなことは少し面白くないとも思ったんだ」
私はそんなやり取りを見て怖くなった。
作戦がバレてイアランが今、この場で殺されるのでは!?と不安になってきた。
「こういうのはどうだろうか?お前が負けたらエアマスにお前の召喚できるもの全てエアマスにわたす、というのは」
理不尽である。イアランに聞いてはいるが選択肢は無い。どう考えてもその神からの提案は飲む以外無い。
「いいですよ。あ、でも、スライムなんてもらって喜ぶお年頃じゃないとは思うんですけどね、エアマスは」
イアランはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
「私はなんでもいいさ。こんな事、さっさと終わらせてしまいたい。私も暇ではないのでな」
正直イアランのあのチャラチャラした態度、今回ばかりは感心した。
あの神の前でもいつもと変わらない。これは凄い!以外の言葉が思いつかなかった。
「ではエアマスとイアラン以外は少し離れてろ。結界を張る」
そう言うと人間界の神は指を鳴らした。
指が鳴ると同時にイアランとエアマスの周りにドーム状の結界が作られた。
「決着はエアマスとイアランが決めることとする。初めていいよー」
気の抜けた人間界の神の言葉で決闘が始まった!
「あ、ジール、こっち来て〜」
まるで後ろから誰かに抱えられるように私は人間界の神の隣に連れてこられてしまった。
「ジール!」
イアランは私に駆け寄ろうとする。それを人間界の神は手で制した。
「大丈夫だよ、イアラン。口説いたりしないからさ。少しお話したかったからさ、ジールと」
人間界の神が私を見る。何を考えているかまるで分からない。
深い、吸い込まれそうな、それに威圧はしてなくともその瞳から圧のようなものを感じてしまう。
「お前はスイーツが好きなんだろ?用意させよう。少し話をしようじゃないか」
そして、私の耳元でささやいてきた。
「もし、『用事』でここを離れたいなら気にせず離れて良いよ」
ニコニコする人間界の神。その笑顔に私の鼓動が早くなった。
コイツは間違いなく、私たちの作戦を知ってて楽しんでいる。
「人間界の神よ!ジールをどうする気ですか!?」
師匠が人間界の神の前にやってきて問いただす。その顔は鬼気迫る、見たことのない顔であった。
「へぇ、ゼフィが戦いでもないのにそんな顔するとはね。やはり、この見た目のせいかな?」
人間界の神は私の頬をそっと撫でる。
「人間界の神よ、無駄な話が過ぎるなら私にも考えがある!」
「ぜひ聞こうか。攻撃魔法が使えないゴッドキラーが何をするか聞いてみたいものだ」
私は驚きのあまり人間界の神を見た。
「おや、知らないのか?それは失礼した。ゼフィ、身近な者に隠し事は良くないな」
私はエルフの里を滅ぼされたあの日、師匠と師範に出会った。
あれからほとんど一緒にいるし、魔法も教えてもらているが、確かに攻撃魔法を使っているのを一度も見たことがない。
「攻撃魔法がなくとも、封印はできる!」
師匠が手に魔力を集中させていく。その時、私の後ろに人影が現れた。
「落ち着け、ゼフィ。お前はこの小娘のことになると感情が前に出過ぎる。コイツの安い挑発に乗るな」
振り向くと真紅のドレスを着た美女がいた。
絵画から飛び出したように整った顔立ち。
その瞳は赤く、だが色に反して冷たい感じがする。
しかし、この顔、どこかで見たことあるような気もする。
「邪神様…どうしてここに!?」
邪神は髪をかきあげると師匠を見つめた。
「オーキスに感謝しろ。あやつが我を呼んだ。お前が暴走しそうだ、とな」
邪神は言い終わると今度は私の顔をじっと見つめてきた。
今にも体が内側から凍てついてしまいそうな感覚。人間界の神とは別種の圧を感じる。
「そう言えばまだ礼を言ったことがなかったな」
へ!?礼!?邪神に礼を言われることに心当たりがない。
「箱庭の管理、良い成果を上げている。ゼフィやオーキスだけでは続いていなかったであろう」
あ、そのことか。そのことで礼を言われると思わなかった。
「ただ、それと同じくらい問題を作ってくれてるが、箱庭の件で大目に見ておるがな」
大目に見てると言いながら、その目は私をしっかり見ている。これは間違いなく許してくれてはいない。あくまで「大目に見る」である。
「何だ、来たんだ。もう少しゼフィで遊びたかったんだけどなぁ」
目が笑ってない人間界の神が邪神を見る。
「ここで我はお前を消せばいいのか?」
「誰が誰を消すって?面白い冗談だ。しばらく会わない間に冗談が言えるようになったのか?」
神と神の間にとてつもない圧を感じる。
「邪神様!」
師匠と師範が邪神の前に割って入る。
「我らが神よ!」
人間界の神の従者が割って入る。
「大丈夫だ、ゼフィ、オーキス。この愚かな神をからかっただけだ」
「そうそう、根暗な邪神の挨拶に付き合っただけだよ」
お互いそう言うと邪神は椅子を召喚し、人間界の神のの横に座った。
「まあ、久々の人間界だ。人間界の神の余興を見て帰るとしようか」
私はいつの間にか腰が抜け、座り込んでいた。
「ねえ、ジール、俺の代わりに神様やる気ない?」
いきなり人間界の神がにこやかに私へ聞いてきた。
言葉の意味が全く分からない。何の前振りもなく唐突にそんなことを…いや、冗談、冗談のはずである。
「私のような者には無理です。そんな器ではありません」
何とか立ち上がり、断ることを前提に考えた結果、出せた言葉はこれだけだった。
「冗談だよ、冗談♪」
人間界の神はケタケタと笑っている。頼むからそういう答えに困る冗談はやめて欲しい。
「まあ、半分冗談、なんだけどね」
急に真顔で私を見てくる人間界の神。「半分冗談」ということは、残りの半分は冗談でない…ということなのだろうか!?
「君はもう少し自分が何をしたかを自覚した方がいい。神々ができなかったことを君があっさりやってのけたんだからね」
私、何かやったのだろうか?まるで分らない。
ただ、人間界の神の反応を見る限り、私はとんでもないことをやってしまったようである。
「おい、人間界の神。そのような勧誘は許さん。ジールはゼフィの弟子。つまり我の管轄だ。それに手を出すのは許さんぞ」
また、一触即発の空気が漂う。
「おーコワイコワイ。ただ、ジール、これだけは覚えておけ」
真っすぐな、まるで心の奥を見透かしたような瞳で人間界の神がこちらを見つめて来た。
「自覚が無いようだが、お前の持っている能力は神になれるものだ。それを利用する者がいる」
「何が言いたい、貴様」
邪神の不機嫌な声が割り込んでくる。だが、人間界の神は話を続ける。
「最高の策は、策が行われたことを知られず、悟られず、その策を完遂することだ。そうすることで、誰もが自然に動き、その役割を果たしてくれる」
「もう一度言う。何が言いたい、貴様…」
先ほどより不機嫌な声で問う邪神。逃げていいならここから逃げ出したい気分である。
「姑息な邪神には心当たりがあるのかな?」
イアランには悪いが決闘どころではない。私は今、様々な憶測が頭の中に浮かんできている。
私は…誰かに…利用されているのだろうか?
「そうやってジールの心を乱して遊ぶのはやめろ、不真面目な神!これ以上ジールを惑わすなら、お前をここで消す!」
「今日はずいぶんと感情的だよねぇ。何か言われて困るような事、俺言ったかな?」
また人間界の神は笑い出す。
「今日はずいぶん安い挑発をするな。そちらこそ何か隠したい不都合でもあるのか?」
今度は邪神からの反撃が来る。その言葉に人間界の神が笑いを止めた。
「不都合はないさ。ところでジール、イアランと一緒にならないのかい?」
まるで掴みどころのない会話に少し慣れてきた。この人間界の神、会話が繋がらないような飛び方をさせてるが、確実に何かの意図があるように思えた。
「それは考えてません」
答えは簡潔に、余計なことは言ってはいけない。そして、余計な反応はしてはいけない。とにかく平常心を保つことを優先しなくては。
「二人が一緒になればエルフやハーフエルフ問題も早く解決すると思っていたんだけどなぁ」
含みのある笑み。平常心を保とうとする私をあざ笑うかのように私の心を乱す言葉を投げてくる。
「どうやって解決するんですか?」
興味が勝ってしまった。わたしはつい聞き返してしまった。
「イアランがゴッドキラーなれたら、国を作るといい。そこにエルフやハーフエルフを囲うことから始めればいい」
「でも、それだと攻められたらどうするんですか?」
「その時は…ジール、君が持つ力を使えばいいじゃないか」
私の持つ力?生命エネルギーを使い戦えということなのだろうか?
「君が動けば、死神も動くだろ?」
やっと理解ができた。アルビオのことだ。そう、アルビオは神であり、その神をあの託児所に留めたのは私。
まさかここまで大事になっていようとは…。
つまり、邪神が「それと同じくらい問題を作ってくれてるが」と言ってたのはこのことだろう。
「あれは私の力ではなく、アルビオの…」
「死神を生み出してから、俺や邪神は幾度となく死神に交渉をした。だがどれも成功しなかった」
人間界の神は顔は笑っているが、あからさまに圧を強めてきていた。先ほどより空気が張り詰めている。
「その上、ゼフィは君のためならきっと何でもするし、イアランは君に惚れちゃうし、あのティゴですら君に心を開きかけている。ホント、困った血統だよね」
それはイアランが勝手に思うことだし、ティゴはウィン様のおかげだし、私だけの力じゃ…ケットウ?私の血筋ってことなのだろうか?
別に私のお母さんは村一番の魔法使いではあったが、そんな色んな仲間がいたわけではない。
普通にみんなに好かれているくらいで、私のように無節操…もとい、種族をまたぐ仲間はお母さんの周りにはいなかった。
「そこのふざけた神よ。まだジールの心を掻き乱そうとしてるのか?本当にお前は神ではなく悪魔向きだな」
「邪神様にそう言われるとは自信もっていいかな?もし、神様辞めたら悪魔として雇ってくれるかい?」
先ほどの圧は緩み、少し落ち着く。ここは、この世にできた地獄と呼べるかもしれない。
「ジール、イアランが押されてるよ?見てあげなくて良いの?」
人間界の神が結界の方を指さす。
すると、イアランは攻撃しているものの、スライムを全てエアマスは受け流す。
何が驚いたかと言えば、エアマスは気を…生命エネルギーを開放していないのだ。
「イアラン!」
私は気づけば結界の前まで来ていた。
「そろそろこの戦い、やめないかイアラン。お前のことは嫌いじゃない。私がまたお前を殺す前に負けを認めてくれないだろうか?」
肩で息をしているイアラン。
まるでさっき始まったばかりのように落ち着いてるエアマス。
差は歴然である。
「お断りだね」
イアランは白いスライムを八匹召喚した。
「お前のお願い聞く理由はないし…」
召喚されたスライムがエアマスを囲む。
「好きな女性が望んでることを叶えるのが男だと思うからね!」
イアランはサンダーボルトを放つ!
だが、あっさりエアマスは避けた。
「この程度…なっ」
避けたサンダーボルトは白いスライムが薄い円形となり、そのサンダーボルトを反射しエアマスにヒットさせた!
「エアマス、俺を追い込めると思ってるのか?策士は簡単にメンタルが折れることはないんだよ。一つ折れても別の策を必ず用意してるからな!」
体制を立て直したエアマスが辺りを見回す。
「なるほど。これでは反射を全て避けるのは難しいな」
イアランはじっと魔法を使うタイミングをうかがう。それを見たエアマスは構えを解いた。
「そうそう、ジールさんが私の城に来て何されたか聞いたのかな?」
「何を今更!ジールから生命エネルギーを奪ったんだろ?それがどうした?」
さすがのイアランもエアマスの意図がわからないようである。私も全くわからない。
「毎日、毎日、来る日も来る日も…ハルコとキスをしてたんだ」
な、何を言ってるんだ、エアマス!?それが今のこの状況と何の関係が…。
「ジール!ホントなの!?俺にはキスしてくれないし、て言うかホワイトウルフの時もしてくれてないのに!?どーゆーことなの!?」
イアランが号泣し始めた。
さっきの策士は〜とカッコつけたあれ、どうするんでしょうね。
「途中でジールもハルコのキスを求めるようになっていったんだよ、イアラン」
膝から崩れ落ちるイアラン。両手を地面に付いて震えている。
「イアラン、その…大丈夫?」
「ジールは女の子が好きなの!?」
真っ赤な目のイアラン。いや、メンタル攻撃でやられてるじゃない。
後ろで人間界の神が大爆笑している声が聞こえる。
「だから、俺とはキスしてくれないの?」
まるで捨てられて雨に濡れた子犬。全身から悲しさが溢れている。
「そうじゃなくて、ホワイトウルフでもイアランはイアランだし、女の子が好きとか…えっと…」
振り返ってみた。
最近、ウィン様に魅入ること増えたし、アルビオの可愛さに見惚れることもある。ハルコも可愛いと思うし…あれ?
「そうだよね…俺死んだ時言った好きだって気が付いたって言葉、あれはもう過去のことだもんね…」
今度はすねた。
…今、決闘中だよね?
「あのね、その、何と言うか…キスってその…す、好きな人とするものであって、つまりね」
言葉にすればするほど恥ずかしくなってくる。どうしよう…。
「そのわりにジールさん、ハルコに強引に唇奪われた時もしっかり受け入れてあげてたし。ハルコ、嬉しそうにはなしてたなぁ」
しみじみ言うエアマス。なんでそういう報告を親にしちゃうかな、ハルコ。
「じゃあ俺も強く押したら…いや、さんざん殴られたもんなぁ…」
更にへこむイアラン。思ったのと違う展開でイアランがピンチである。
「キスぐらいしてあげればいいのに。んじゃイアランが勝ったらジールがキスしてあげてよ」
後ろから笑いながら人間界の神が言う。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てください!そういうのは景品とかじゃなくて、その時の雰囲気や気持ちが…」
「ありがとうございます!神様!」
精気の戻った声と共にイアランが立ち上がった。
「エアマス、悪いがこの戦い、負けられない!」
さすがにその態度の変わりようは、いかにエアマスでもあきれてるのでは…。
「面白い。本当に師匠そっくりだな!」
大きな笑い声を上げ、再び構えなおすエアマス。
てか、レパルドもこういう感じなのか…。あまり関わることなくて良かったとちょっと思った。
そこからイアランが怒涛の魔法ラッシュを始める。
スライムに囲まれたエアマスは防戦一方となる。
「どうだい、俺のリフレクタースライムは?」
イアランの少しずつエアマスの衣服にかするようになってきた。この戦いで初めてイアランが優勢に見えた。
「イアラン、そのままやっつけて…」
私は言いかけて止めた。なぜならイアランがリズムに乗って言っているつぶやきが聞こえたからである。
「ジールからの♪キッス♪キッス♪」
おい、真面目にやれよ!
勝利を期待しつつも、イアランのテンションにドン引きしている私。
「キッス…キックに変更してもらえないかな…」




