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十九 その名は「マジックハンド」

気がつくと、私は懐かしく感じる自分の部屋にいた。


少し寒い。


私は外が気になり、体を起こす。


だが、そこには自分の知らない風景が広がっていた。


私の寝てたベッドの横にたくさんの花や草の冠、果物が置いてある。


「どういうことなの?」


戸惑う私に答えが返ってきた。


「それは子供達からの貢物だ。ありがたく受け取るがいい」


入り口からアルビオが入ってくる。


「どうやら、我が最も運がよいのかもしれんな」


アルビオはベッドの横のテーブルに水の入ったグラスを置く。


「他に飲みたいものがあるなら遠慮なく言うがいい。食事も欲しいなら用意する。今、何か欲するものはないか?」


格好も相まって本物のメイドさんのようである。


上から目線で要を承る少し変わったメイドさんではあるが、アルビオらしくて私は微笑ましく思える。


「何だ?何かおかしいことでもあったか?」


アルビオの反応で私はつい笑顔になっていることに気付く。


「まあ、我にお前の名が来てないゆえに死の心配はないが、目覚めず生きることもあるゆえ、目が覚めて安心したぞ」


「アルビオ様、俺よりここ、訪れてませんか?」


アルビオの後ろからイアランが入ってくる。


「ジール良かった♪もし人間の姿なら真っ先にキスして起こしてあげたんだけどね〜♪」


イアランの言葉に私はある光景が思い浮かぶ。


目覚めると目を潤ませ、顔を赤らめて私の唇を奪うハルコの姿。


あれはもう二度と体験したくはない。


あのまま続けられていたら、自分の常識を上書きされてしまいそうな気がしなくもない。


「イアラン、それをされたら…今の私は本気でぶん殴ってたから命拾いしたわね」


もう、あんな起こされ方は勘弁してほしい。


それよりイアランの言葉からすると、アルビオはかなりの頻度で私の部屋に来ていたようである。「運がいい」とか言っていたが、かなり心配してくれていたようである。


「アルビオ様、ご心配かけて申し訳ございませんでした。でも、そのお気持ち、とても嬉しいです」


私の言葉を聞きアルビオはいきなり仮面を付けた。本業に行くのだろうか?


「べ、別にし、心配などしておらぬ!そ、そんなことしておらぬ!た、た、ただ皆と同じように様子を見てただけだ」


私とイアランは顔お見合わせ「どうしようか?」と困惑してしまった。


きっと、あの仮面の下には照れているアルビオの可愛らしい表情があるのだろうが、私たちは触れずに、アルビオが落ち着くのを待った。


「わ、我のことはいい!それより子供達に礼を言え!お前がおらぬ間、かなり寂しがっていたぞ!」


「アルビオ様も毎日『まだジールは帰って来ぬのか?』『もう帰ってきても良い頃ではないのか?』って言ってました…ひっ!?」


イアランの首元にアルビオの鎌が現れた。


「黙れ犬!それ以上言うなら今お前の魂を刈り取る!」


ホント、イアランは余計なことを言う。


でも、帰ってきたって実感がわいてくる。


「ところで…私がエアマスと出て行ってどれくらい過ぎたんですか?」


アルビオとイアランは沈黙した。私は変なことを聞いたのであろうか?


「ジール、お前どんなとこに監禁されてたんだよ!」


何か言おうとしたイアランをアルビオが制した。


「結論から言えば…期間は『半年』だ」


私は血の気が引いた。


エルフの寿命から言えば半年は大したことではない。


問題は、あんな生活を半年続けていたということだ。そうなると、この花や果物の多さ、アルビオの態度は納得できる。


「俺はてっきり拷問とかされてたんじゃないかと思って心配してたよ。助けに行こうとして何度ゼフィに止めらたことか」


ただ、そうなると一つ疑問がある。


イアランはまだホワイトウルフなのである。


「イアラン…蘇生失敗したの?」


「あー、それも話すこといっぱいあるんだけど、とりあえず今生き返らない理由ができたんだ。遺体は結界内で保存してあるから腐敗はしないけどね」


どうやら私のいない半年でなにかあったようである。


「それにアルビオ様も『我が行って連れ戻してくる!』と言い出した時も大変で…ひっ!?」


またもやイアランの首に鎌が現れた。


「犬、もう現世に未練は無かろう。今から消しても我は構わんと思ってあるのだが」


イアラン、あなた賢いんだから学習しようか。


「この犬はさておき、まずは体を休め、食事を摂り、体を慣らすことを優先して生活するが良い。託児所は我とこの犬で何とかなっておる。気にせず休むがいい」


私はアルビオの優しさに思わず涙が出てきた。本当にアルビオは死神ということを忘れるくらいにここに馴染んできた。


「そういえばウィン様は大丈夫なんですか?」


「ウィンもかなり疲弊しておったが、さすがと言うべきかもしれぬ。少し瘦せてはおったが、寝込むことなく普通の生活をしておる」


それを聞いて安心した。


ただ、私は気になることがあった。


頭の痺れが…消えてない。


何より、ここに来ても、ハルコが与えてくれるあの感覚が恋しく思えている自分がいる。


色々考えてるうちに思わず頭を抱えてしまった。


「どうした?頭が痛むのか!?」


アルビオが寄ってくる。イアランも心配そうな顔で私を見ている。


「頭が…痺れてるっていうか…ちょっと…変なんだよね」


「もしかして薬物投与されたのか?どういう痺れなんだ?」


イアランにもそういう知識があるのだろう。質問をしてくる。


「何ていうか…気持ち悪くないんだけど…この痺れ、嫌いじゃない…と言うか、少し気持ちいいというか…」


それを聞いたイアランは、何かを思い出したかのように部屋を出ていった。


「それは…ジール、ちと厄介かもしれんぞ」


アルビオも何か心当たりがあるようだ。一体何なのだろう、これは…。


「ジール、行って欲しいところがある!」


戻って来たイアラン。その後ろから師匠がやって来た。


「アイツのとこに行くのは行きたくないんだが…イアランの話が当たってるなら連れて行かざるを得ないようだな」


「誰の所に行くんですか、師匠?」


師匠が答える前にイアランが私のベッドに飛び乗って答えた。


「最強の医者の所だよ」





ターンズ国の少し西の森に町がある。その名はフロンティア。


決して大きな町ではなく、交易の宿場町として未だ発展中といったところである。


そこに不釣り合いなくらい大きな門があった。


私と師匠はその門をくぐり、奥にある白い小さな要塞のような建物へと向かった。


「ここで私は何を診てもらうんですか?」


「まあ、診断してもらうまで何とも言えないが…いいか、これから会う相手は口が悪いが地上最強の医師であり、最強の合成魔法を使う魔導士だ。腹は立つだろうが我慢しろ」


いきなりスゴイ言葉が出てきた。合成魔法。そんなものを使う医者とはどんな人物なんだろうか?


「私も実は苦手でな。できたら…二度と会いたくなかったんだがな」


師匠の苦笑いを見ると何となくは予想はできるが、嫌な予感がしてきた。





建物の中は明るく白くキレイであった。入ってすぐが待合室がある。ただ、ツッコミを入れたいのは患者がいないこと。


待合室にイスが五脚ほどあるが、誰も座ってない。最強の医者というのにこれは違和感でしかない。


「患者か?入ってこい」


奥の部屋から声がした。若い声である。


私は声のする部屋に入った。


「ダークエルフか。支払いはできるのか?」


私は目疑う。


医師が座るであろう椅子に女の子が座っている。白衣は着ているが、どう見ても幼い。


童顔なのに違和感でしかないキツイ目つき。黒髪を三つ編みにして肩にかけている。白衣はどう見ても大人用であり、低い身長に不釣り合いである。


「で、ババア、どうした?なぜここに来た?」


ば、ば、ババア!?わ、私のこと…でいいのかな?


「言葉も知らんのか?惚けてないで答えろ。でないと消すぞ」


今度は脅し。信じられない。これが本当に医者なのだろうか?


「ティゴ、私の所に住んでいるジールだ。少し診てもらいたい」


後ろから入ってくる師匠が答えた。


「あー、悪魔のジジイか。まだ死なないのか?悪魔は無駄にしぶといな」


コイツ、師匠のこと知ってそうだけど、さすがにジジイ呼ばわりはどうかと思った。師匠がゴッドキラーということを知っているのだろうか?


「で、コイツを解剖していいのか?それとも、無駄に付いている腹の脂肪、取ってやるのが優しさか?ダークエルフのクセにだらしないな」


ここまで言わなくてもいいんじゃなかろうか?初対面でここまで言われたことは無い。託児所の子供の無邪気なメンタル攻撃ワードが可愛く思えてきた。


「ティゴ、実はジールの脳に痺れがあるらしい。診てもらいたい」


「は?何でだ?」


あんた、医者じゃないの!?患者が来て診てくれって言ったら診るのが医者でしょ!


「私の好みじゃないブス相手にしなきゃならん私の気持ちになってみろ。時間の無駄だろ?適当にその辺の薬持って帰って飲ませて寝かせたら治るかもしれないからそうしとけ」


ぶ、ぶ、ブス…。確かに自分で可愛いとか言ったことは無いけど、ブス…ではないと思うんですけど?だってエルフなんだし!


「じゃあティゴ、治療費としてこれを受け取ってくれ。これなら文句ないはずだ」


師匠は手のひらに収まる小さな木箱をわたす。それを少し開けてティゴはニヤリと悪そうな笑みを浮かべた。


「よし、ババア、そこのベッドに横になれ。まあ、目を見て症状は予測できているが、もう少し診てみよう」


師匠が何をあげたのか謎だが、ここに患者がいない謎だけは解けた。


こんな医者に診て欲しい患者は普通ならいないだろう。


「で、いつまでダークエルフでいる?まあ、そのままでいいか。ブスはブスだしな」


どうやら私の変装魔法を見破っ多様だが…顔、関係ないよね!さっきからブスいいすぎじゃない!


不満しかないが仕方なくベッドに仰向けになり横たわった。


苛立ちがどんどん募っていく中、ティゴが私の頭に手を当てて何かの魔法をかける。


「ゼフィ、お前の奴隷か、コイツ?だとしたらもっと洗脳をしっかりしないと反抗してくるぞ」


「いや、奴隷ではなく共に暮らしている。私の託児所で働いているんだ」


「なら愛玩か?」


「いや、そうではなくて…」


どうして師匠はこんなに下手に出るのだろうか?ゴッドキラーならその名を使えばこんな生意気な子供なんてどうにでもなるだろうに。


「まあいい。このババアに少し興味が出てきた。コイツ、格闘バカ悪魔と同じ能力を使えるところが面白い」


しかし、この短時間で私の情報を収集し、見事に当てている。能力は高いようである。


というより、格闘バカ悪魔は師範のことなのだろう。師範も知っているということは、師範もここに来たことがあるのだろうか?


「どうする?コイツを命令通り動く従順な兵士にでもするか?十分もあればやるぞ」


「そうではなく普通に治療をして欲しい。できるか?」


ティゴは私の頭から手を離し、師匠の胸ぐらをつかみだした。


「できるか?誰にもの言ってる!十二年しか生きてないからってバカにするなよクソ悪魔!消すぞ!」


…今、十二年って言ってたよね!?この子、十二歳ってこと!?


「悪かった悪かった。普通に治療をしてやってくれ」


「次、ナメたこと言ったら消すぞ!」


私、今病院いるんだよね?どこかの盗賊のアジトにいるわけじゃないよね?


「まあ、報酬をもらった以上、肉体改造でも顔面改造でも洗脳でもしてやる。ありがたく思え」


ティゴはそう言うとポケットから瓶を取り出しコルクを開けて飲みだした。


「お酒…飲むの!?」


「黙れバカエルフ!これは薬草から抽出された血液をきれいにする飲み物だ!酒のような害悪物質と同じにするな!消すぞ!」


罵声を浴びせてくると今度は指で私の胸を押してきた。


「ここに栄養与えすぎて脳に栄養が足りてないんじゃないか?面白そうだから乳牛の脳みそ移植してやろうか?」


いや、その発想はクレロやラサイと同じでしょ!どっちがバカなのよ!


「乳がデカけりゃ女はエライわけじゃねぇんだよ、バカエルフ」


そろそろ殴っていいかな?という衝動がわいてきたが、ティゴを見てちょっと分かった。もしかして、今のは…。


まだまだ未成熟なティゴの胸を見てちょっと納得した。


「お前、私の胸を見て何を思ったんだ?」


ティゴの顔がものすごく恐くなった。


「お前の胸、削ってやろうか?それとも乳牛にしてここで毎日新鮮なミルクを私に捧げるか?二択を選ばしてやるから選べ!」


「ティゴ!ジールに悪気はない!許してやってくれ!」


必死に師匠が止め、説得し、ティゴは落ち着きを取り戻した。それに一時間費やした。


「クソエルフ感謝しろよ。このクソ悪魔が報酬の上乗せするというから許してやる。次はないからな」


そう言うとティゴはまた頭の上で何かの魔法を使う。すると不思議なことに頭の痺れが消えていく。


「クソエルフ、理由は知らないが脳に強い刺激を与え続け過ぎだ。肉欲に溺れて男遊びを続けたくらいのレベルではないぞ。何をしてこうなった?」


思い当たるのはハルコが私の生命エネルギーを吸い取ったことくらいである。それをティゴに話してみた。


「そうか、お前は無節操なのは分かった」


いや、そこじゃないでしょ!


「それに、その話だと脳が興奮する状態を短期間に、しかも通常あり得ない刺激を受け続けて脳の機能が追い付かなくなってきている」


さらにティゴは私の頭を両手で触り魔法をかけてくる。


「ゆえに刺激から脳自身を守るために防衛モードに入り脳の処理能力を上げた」


今度は私の額に手を当て魔法をかける。


「その代償として生命維持のため必要な機能の維持を優先し、他の機能を機能低下させ、対処。今、それを私の魔法で修復している」


時々頭が熱くなるくらいで痛みはない。本当にこれで治るのだろうか?


「だが、こんな状態は通常あり得ない。それだけ相手から生命エネルギーを抜き取るというのは危険ということだな。エアマスもとんでもないことをさせるものだ」


今度は後頭部側面に魔法をかけてくる。これはちょっと気持ちいい。


「何よりその吸収した女も無事だはないだろう。面白い検体だから診てみたいものだがな」


そうだ、私がここまでひどいことになってるのならハルコも同じように脳にダメージを負っている可能性は高い。


だからこそ、あんなに私の生命エネルギーを求めてきたのかもしれない。


「ティゴ…もしかしてハルコも同じようなことになってたりするの?」


「本人を診てみないと分からないが、その可能性はある。なんだ?またその女が恋しくなってきたのか?」


そうじゃない。


確かにあの時ハルコに生命エネルギーを貪られる…まるで私が酒に狂った人間にとっての酒樽のような存在だったたとしても、あの子が堕ちていく姿には心が痛んだ。


何より、あの必死さはまるで、子供が母親に助けを求めているようにも見えた。


もし、助かられるなら助けてあげたい。頭がクリアになってきている今でもそう思っている。


「…もし、ここにハルコを連れてきたら診てもらえるの?」


ダメ元で聞いてみた。さっきの師匠のように報酬が必要かもしれないが、聞いてみる価値はあると思った。


「自分の治療費払えないクセに人の治療を聞くとかバカなのか?お前なんかが払えるもんじゃないくらい察しろ、クソエルフ」


予想通りの答えが返ってきた。


でも私は引き下がる気はない。今、相手は返事を返してくれる。話はまだ聞いてくれている。何とか糸口を見つけなければ。


こんなことを考えてるとなんだかアルビオとの時のことを思い出し笑みを浮かべてしまった。


「ん?何か変な性癖でもあるのか、変態エルフ?」


「それは無いけど、どうすればティゴにハルコの治療をしてもらえるか考えていたらつい…ね」


ティゴはあからさまに聞こえるように大きなため息を吐いた。


「さっきの話を忘れるくらい脳が死んでるのか、バカエルフ。自身を売り飛ばしても私に報酬を払えないお前が何で人の治療を考える?」


「それって金銭なの?」


まずは具体的に何なのかを聞き出す作戦を取ってみることにした。


「金はいらん。金は腐るほどある。そんなゴミ、報酬になると思ってる時点で話にならん」


そう言いながらティゴは私の頭頂部に手を当て魔法をかける。


「じゃあ、何だったら報酬として受け取ってもらえるの?」


そう聞いた時、ティゴは悪魔かと思うような笑みでこちらを見た。


「お前、本当に私に報酬を払う気なのか?」


単純に怖い。この顔、別にすごんでいるわけでも、特段変な表情をしているわけではない。でも怖さだけが伝わってくる。


こんな体験はエアマスに睨まれた時くらいであった。


「ジール、余計なことは考えずまずは自分の治療に専念しろ!」


師匠からの言葉で我に返る。


こんなことで負けるわけにはいかない!


「一体何だったら報酬として受け取ってもらえるの?」


顔は怖いがティゴの手は少しずつ私の頭を移動しつつ止まっては魔法をかけて治療を続ける。


「今、私が欲しいものは竜人族の血だ」


師匠と私は顔を見合わせた。それを見たティゴがバカにしたように私を上から目線で見て来た。


「ここ最近見ることが無くなったんでサンプルが手に入らない。それに今、存在しているかどうかも怪しい。まあ、見つけたとしても竜人族はお前のような者では到底傷すらつけれないだろうからな」


私は少し悩んだ。どのくらい必要なのかが問題である。


「どのくらいの量が必要なの?」


「少量でいい。言い伝えでは血液に再生能力の促進効果や抗老化作用もあるらしく、私の頭脳が衰えさせないようにするために使えるなら使いたいからな」


そう言い終わるとティゴは私の頭から手を離した。


「治療は終わりだ。だが、生命エネルギーを使う時は注意しろ。後遺症が出ないとも限らん。しばらくは安静にしておけ」


そう言うとティゴは伸びをして椅子に座った。


「さあ帰れ。用は終わっただろうが」


「その前に竜人族って子供の血でもいいの?」


私の質問にうんざりとした顔をするティゴ。


「子供でもいいが、子供とか大人とかの問題ではないことも分からんのか?まず見つけられん。それくらい分かれ、バカエルフ」


「いや、うちに竜人族の子供、います」


早かった。私の言葉を聞いてティゴは私に瞬足で近寄って詰め寄って来た。


「もし、ウソをついてると言うなら笑って許してやる。バカが私に見栄を張ろうとして言ったと思ってな。だが、ウソをつき通すなら…消すぞ!」


「ウソではない、ティゴ。本当にいるんだ、うちには」


師匠の言葉で止まるティゴ。急に下を向き体を震わせ始めた。


「早く…早く行くぞ!今行くぞ!急ぐぞ!さあ早く!」


別人である。


再び私の方を見てきたティゴは目を輝かせて物凄い笑みで私を見て来た。子供らしくワクワクした気持ちが顔いっぱいに広がっている。


「人間界のゴッドキラーの基準は本当に分からんな…」


師匠がいきないり爆弾発言!ティゴってゴッドキラーなの!?


「ゴッドキラーなんて称号はどうでもいい。便利だからもらっただけだしな」


後で師匠に聞いたのだが、ティゴは史上最年少のゴッドキラー、マジックハンドのティゴ。


その上あらゆる病やケガを合成魔法で治療する医学界の天才児とのこと。


その手から生み出される合成魔法と、手を触れて治療する姿からマジックハンドの二つ名が付いた。


わずか七歳でゴッドキラーになり今に至る。


七歳の当時で合成魔法を理論ではなくニュアンスで使う天才児というとんでもない子供だったとのこと。


暇つぶしに現代医学を半年で学び終え、合成魔法と組み合わせることにより唯一無二の医者としてここで生物研究をしながら医者として治療をしている。


口の悪さは彼女の頭の回転の速さゆえに周りが付いてこないため、苛立ちを解消するために暴言を吐くようになったらしい。


「さあ、行くぞ!待っててね、竜人族ちゃん♪」


…もしかして、私、何かとんでもない失敗したんじゃなかろうか?


不安を胸に、私と師匠、そしてハイテンションのティゴは託児所に向かうのであった。




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