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十六 持つべきは素晴らしき仲間

私は目が覚めた。


まだ、朝日が出たばかりのようだ。窓から太陽が見えたが、全てが見えてない。


私は体を起こす。


…夢?


起こしに来た師範もいないし、別にいつもと変わらない朝。


夢だとしてもいい気がしないものである。イアランが死ぬなど考えられない。イアランは強い。しかも賢いし、簡単にイアランを殺せるようなヤツはまず居ないはず。


とりあえず顔を洗おうと台所へ行くと師匠と師範の声がしてきた。


「これは私たちが介入すべきではないな」


「だが、こんなこと、ここ数百年なかったぞ!」


珍しく二人が言い争っている。私はこの二人が言い争うのは今まで見たことがなかった。


盗み聞きも良くないと思い、二人に挨拶をすることにした。


「あの…おはようございます」


二人が私の顔を見る。その切迫した顔から私は嫌な予感しか感じない。


「気が付いたか、ジール」


気が付いた?起きたか、ではなく今気が付いたと言った師範。


私は師範が言い間違えた、と自分に言い聞かせる。


「どうしたんですか?二人が言い合いするなんて珍しいですね」


何かを言おうとする師範を師匠が手で制した。


「ジール、お前は夢だと思ってるのか、もしくは『夢であってほしい』と願ってるのかわからないが」


嫌だ。師匠、その先は聞きたくない。言わないで欲しい。お願いだから…。


「イアランの死は間違いない。我等ゴッドキラーはどの界のゴッドキラーの就任、解任、死亡は伝えられる」


言葉が出ない。最後の希望だった夢で会あって欲しいは師匠の言葉で消えた。


私はその場に力なく崩れた。


「何で?イアラン死んだの?ねぇ!どうして!」


声が出てない。いや、声を出してるはずである。それなのに、私には私の声がほとんど聞こえない。


「アイツ、今度私の部屋で一泊するってバカみたいなこと言って帰って…しばらく来なくて…でも一生懸命に包魔石の研究してるだろうなって…だから、来ないんだろなって…」


取り止め無く言葉が出てくる。いつの間にか涙が出てる。そして出てくるのは「なぜ?」と言う言葉だけ。


「言ったはずだぞ、心を乱すな…と」


振り向けばアルビオが立っていた。


そうか、夜に言った言葉の理由はこれだったのか…。だとしたら…


「アルビオ様、イアランを助けてよ…」


頭では分かっている。こういう時、アルビオに何を言ってもダメだと。


でも、私は言ってしまった。


何より一番意味のない、虚しい言葉を。


「失った時に気付くってホント…イヤになるよね。イアランのこと…私、好きになってたんだって…」


こぼれる涙が増えてくる。でも言葉にしないと気持ちが私を潰しそうで怖かった。


「アイツ、何だかんだ言いながら…私に優しくて…私といると嬉しそうで…私も思ったより楽しくて…」


話せば話すほど、イアランの楽しそうな顔が浮かんでくる。とうとう私は言葉に詰まり泣くことしかできなくなった。


そんな私の目の前にアルビオは何かを置いてきた。


白くて、小さくて、フワフワした四つ足の生き物。


昔、何かの書物で見たことがある。


ホワイトウルフ。


真っ白なオオカミだが、実は高位の魔物であり、長く生きているホワイトウルフなら魔法を使いこなし、単体でドラゴンとも戦う戦闘力を持つ。


ゆえに、一部の地域では神格化されており、山の神の使いとして崇められている。


今や絶滅したのでは?と言うくらい姿を見ることも無く、伝説の生き物として扱われている。


その、ホワイトウルフの子供である。


つぶらな瞳で私を真っ直ぐ見ている。


私は衝動的に思わず抱きしめる。そして声をあげて泣いた。


「イアラン、ごめんなさい!もっと私、あなたに優しくすべきだった!」


本当に私は愚かだ。失って後悔している。イアランに対する謝罪の気持ちでますます悲しみが増してくる。


ホワイトウルフのふさふさした毛が癒してくれるものの、涙でどんどん濡れていく。


「んじゃ優しくしてよ、ジール♪」


とうとう幻聴である。悲しすぎて幻聴が聞こえてきている。もう、私はダメかもしれない。


「んじゃ、まずはほっぺにキスとかして欲しいな♪」


私は辺りを見渡す。すると、師匠と師範が驚いた顔をしている。


「師匠?師範?」


「ねえ、キス、まだ?」


声は私から聞こえる。いや、正確には違う。


「早く♪早く♪」


まさか…喋っているのは先ほどから抱きしめているホワイトウルフ!?


ホワイトウルフは嬉しそうに尻尾をフリフリしている。とても可愛い。


「ジール、まだ、キスは?」


やはり喋っている。しかもこの言い方…。


「イア…ラ…ン?」


「そうだけど?」


場の空気が止まる。いや、意味がわからない。死んだはずのイアランが今ホワイトウルフ!?


冷静になれよ私。こんな事前にも似たことあったような…。


「間違いなくそれはイアランだぞ」


悩める私に答えてくれたのはアルビオであった。


私は二度見する。どう見てもホワイトウルフである。


「その…何だ。我は魂を刈ることを失敗したことはない。相手も間違えたことはない」


アルビオはまるで独り言のように語り続ける。


「だがな、時々…いや、本当に稀に刈り取った魂が我の手からつい、うっかり、たまに気が付かないときに落ちることがあってな」


いや、そんなドジっ子属性ある死神聞いたことないですよ、アルビオ。


「たまたま山火事で呼吸が出来なくなり死んだホワイトウルフの所に落ちてしまったのだ」


どういうたまたま!?そんなことあっていいの!?


「ねぇ、キスまだ?」


ホワイトウルフはぶんぶん尻尾をふって嬉しそうに私を見ている。


「お互い好きな者同士、キスしてもいいんじゃないかなぁ♡」


そう言えば以前、ブラービの体ににウィン様の魂が入ってことがあったが…その時、アルビオは全く気にしていなかった。


つまり、刈り取った魂にはあまり興味が無いのかもしれない。その魂をどうしているかは今度聞く機会があったら聞いてみよう。


それより問題がある。


さっきの…全部聞かれたってことだよね?


「ちなみに…アルビオ様はいつからそこにいたんですか?」


「お前がそこの二人に挨拶したときには後ろにいたぞ」


つまり「全部聞かれた」ということになる。


私の悲しさは消え、あっという間に恥ずかしさが頂点に達した!


「あ、ああ、あ、あ、、あ、あ、あ、あんたなんかべ、別にスキなんかじゃないんだからァぁぁぁぁぁぁぁ~!」


叫んでももう遅い。アルビオ、もっと早く言ってほしかったです…。


あぁ、もう消えてしまいたい…。いっそアルビオに頼んで私の魂を刈りとてもらいたい気分である。


「まあ、その獣をどうするかは好きにするがいい。我は仕事の用意をする。もうすぐ子供らが来るであろうからな」


そう言うとアルビオは台所から出ていった。


事態の急展開に置いて行かれた私と師匠、師範はしばらくホワイトウルフになったイアランを見つめて時間を過ごしてしまうこととなった。


「ねぇ、ジール、キスは?」


ずっと嬉しそうにしているイアランを見てると可愛くて怒れもせず、そっと床に置いて私はまず、顔を洗うことにした。


今日は朝から疲れた。


でも…これで一件落着どころか、問題の始まりだろうとは何となく予測がつく。


少なくともハーフエルフのイアランは死んだ。師範は殺されたと言った。


何のために?


恨みとか妬みだとしても、イアランを殺せる相手は数えるほどしかいないだろう。


となるとまさか…。


顔を洗い私は師匠に単刀直入に聞いてみた。


「イアランを殺したのって…ゴッドキラーですよね?」


「そうだろうな。イアラン、殺された時のことは覚えているか?」


師匠がイアランに目線を落とす。私は話がしやすいようにイアランをテーブルの上に載せた。


「多分…エアマスだな。俺の防御結界、警報結界を全て無効にして俺を殺せるのはアイツくらいかもしれない」


それを聞いて師匠は少し考えて再び質問をする。


「クスではないのか?アイツとエアマスは同レベルの強さだ。アイツの剣技は多少の防御結界は斬り裂くぞ」


「クスは話によると正面から敵を倒すタイプだ。今回のようなやり方はしないだろう。何よりエアマスは…ニンジャマスターだ。暗殺を得意としているからな」


イアランは自分の下に小さな魔方陣を描きスライムを召喚した。


「ごめん、疲れたから寝るよ。この体は子供だからかもしれなが疲れるのが早い。少し寝かせてくれ」


そう言うとスライムをクッションにして寝始めた。あ、そういう使い方もできるのね、スライム。


「どうする、ゼフィ。ここにイアランがいるのがバレたらきっとエアマスは来るぞ。アイツはイアランと同じく情報収集力もかなりのものだからな」


真剣に悩む師匠と師範には悪いが、そのエアマスとクスとは誰なのだろうか?ゴッドキラーなのは間違いないだろうけど。


「師匠、そのエアマスとクスって何者なんですか?」


「人間界のゴッドキラー、ニンジャマスターのエアマスとサムライマスターのクスだ。当然ゴッドキラーに恥じない強さを持っている二人だ」


だとしたら疑問が浮かんできた。おかしい。何で人間界のゴッドキラー同士が殺し合って、しかも人間界の神は何も言わないのか?


この前、弟子がゴッドキラーと交戦してもレパルドが命で責任を取らされた。


「そのイアランを殺したゴッドキラーは何かペナルティあるんですか?」


もしかしたら、事件が起きたばかりで対応中かもしれないが、だとしても、ゴッドキラーがゴッドキラーを殺しても、ペナルティを受けても殺す理由は私には分からなかった。


「魔界のゴッドキラー同士の殺し合いは禁じられているが、人間界は禁じられてない。まあ、そんなことここ近年起きたことが無いんだがな」


「禁じられてないってことは、何か理由があるんですか?」


私はゴッドキラーについて詳しくはない。だが、仲間同士で殺し合うようなことをすれば間違いなく他の界から侵略を受けやすくなると思うのだが、それ以上に何か理由があるのだろうか?


師匠は半分呆れたようにため息を吐き答えた。


「人間の全盛期の短さゆえに…だ。常に強い者がゴッドキラーでなくてはならない。悪魔や天使は無限に等しい時間がある。ゆえに鍛錬すれば強くなる可能性がある」


「人間は…その鍛錬できる時間が短いから、いつでも入れ替わることを…強い者がゴッドキラーになりやすいように殺し合いは禁じてないということなんですね」


しかし、もう一つ疑問がある。ゴッドキラーではない者がイアランを殺すならゴッドキラーという称号が目当てになる。


だが、ゴッドキラーがゴッドキラーを殺す理由は見当もつかない。少し調べる必要があるのかもしれない。


「ジール、これ以上この件に介入するな。イアランは無事とは言い切れないが戻ってきた。これで良しとしておけ。エアマスは正面からやれば勝てるが、暗殺だとそうはいかない」


やはりゴッドキラー相手では師範も慎重にならざるを得ないようだ。各界のバランスを保つ力を持っているゴッドキラーは飾りではないようだ。


「じゃあ、イアランはこのままなんですか?」


確かに可愛いし、もふもふできるメリットはあるけど、何とか元に戻してはあげたい。


「そうなるな。身体造形師ハイムも暇ではないし、死体があるなら私が蘇生を試みれなくもないが、それでもできるかどうか…」


私は寝たイアランを起こした。


「ねぇ、あなたの、ハーフエルフの体はどこなの!私が取りに行く!」


「やめろ、ジール!」


師匠の聞いたことのない強い口調に私は固まってしまった。


「エアマスの目的が分からない以上、行くのはダメだ!」


「ゼフィの言う通りだ。…お前は俺たちを倒せるのか?ゴッドキラーに遭遇したとき、逃げ切れるのか?どちらかできないなら、今度殺されるのはお前だ」


悔しいがその通りである。だが、死体は腐敗する。時間はそんなに無い。


「では、私が行くというのはどうだろうか?」


こういう時、こんなことを言ってくれるこの人を私は心から尊敬してしまう。


「ウィン様…いいんですか?」


「私ならゴッドキラーに関係ないし、そういう暗殺を仕掛けてくる者の対処は慣れているしな」


様々な戦地を生き延びていたウィン様ゆえの自信であろう。だが、相手はゴッドキラー。もしかしウィン様でも…。


「別に倒すのが目的ではないなら逃げればいい。何より、ジールの結婚相手なら助けるべきだろう」


結婚相手…まだそれ引っ張ってくるんだ、ウィン様。


「それは助かる、ウィン。この体だとジールを抱きしめたり、キスしたり、夜ベッドでの」


「黙れ!このエロ犬!」


私は強引に手でイアランの口をふさいだ。必死にもがくイアランだがどんなにがんばっても子供のオオカミ。じゃれてるようにしか感じない。


「…遺体捜索より、危なくなったら逃げることを優先するんだぞ、ウィン」


師匠も声に緊張感がある。


「あぁ、そうする。この体ではまだ全盛期のようにはいかないからな」


とりあえずイアランの遺体捜索はウィン様に任せるしかないようだ。


「後、ウィン様、できたら変装したり、肌の色を変えた方がいいと思います。ウィン様なら捕まえに来た相手を倒して騒ぎになるでしょうから」


「そうだな。どんな服装にするかな…」


ウィン様が悩んでいるとアルビオがやってきた。


「お前ら何をしている?そろそろクアンタとヘキサに朝飯を用意せぬか。早くせねば魔物の子供も来るぞ」


「ジール、アルビオ様と同じ格好ではダメなのか?」


それは…メイド服のウィン様…カワイイから私としてはOKなんですし、見てみたいですけど…。


「さすがにこの格好はちょっと…」


「そういうことなら俺がコーディネートしてやるよ」


そう言って師範が魔法でウィン様の服装と肌の色を変える。


実にシンプルな魔法使いに変身である。黒の羽の形をした髪飾りに黒のマント。その中はシルクの黒い胸当てに黒の丈の長いズボンが子供とは言え足の長いウィン様に似合っている。


「これも…アリね♪」


ウィン様は何を着ても似合うのがうらやましい。肌もダークエルフ風に茶褐色。でもカッコイイんだよなぁ。私もこうありたいものだ。


「では、行ってくる!」


ウィン様は転移魔法を使いターンズへと向かった。


私はとりあえず朝御飯の用意に取り掛かる。


「我も手伝った方が良いか?」


初めてである。アルビオが朝食作りを手伝うなど。私は流石にそれは…と思ったものの、何か意図があるのかと思い手伝ってもらうことにした。


「ありがとう、アルビオ様」


どうしても私はアルビオに言いたかった言葉。イアランの魂を救い、私に希望をくれたアルビオには足りないくらいである。


「何のことかは分からぬな」


こっちを向くことなくアルビオは野菜を切っていく。


「アルビオ様ってホント優しくて思いやりあって…素敵な死神様です♪」


切った野菜を鍋に入れていたアルビオだが、野菜が全て鍋の外に落ちた…。


「し、死神が素敵なわけはない!断じてない!素敵な死神など聞いたことない!」


あ、また動揺してる。こういうとこも含みで可愛かったりするのがアルビオである。


「少なくとも私は今回そう思いました。だめですか?」


「ダメとかダメではないとかの問題ではない。それでは死神として…その…何だ…」


鍋の周りの野菜を拾い集め洗いながら少しずつ声が小さくなっていった。照れてるのだろうか?


「…恥ずかしいではないか」


本人も言ったつもりが無いくらいの声だった。私は、こんな可愛い死神が近くにいることを嬉しくもあり、ありがたくも思った。


「ご飯、作ってしまいましょ、アルビオ様」


この日の朝食、ちょっとコゲたものがあったが、それはアルビオが照れながらやってたために起きたことであった。


当然、誰が作ったかみんな分かっているので誰も文句を言わず食べるのであった。




子供たちを迎えていつものように子供たちを遊ばせる。


ここに来る者はホント予想に反して良い仕事をすると思う。


今日の人気者はイアランである。子供たちと駆け回り、ボール遊びに付き合い、子供たちその毛並みを触らせ喜ばせる。


ただ…


「俺はジールと結婚するために花婿修行中なんだ♪」


と子供たちに吹き込むのは止めて欲しとこではあるが…。


おかげで子供たちに私は「とうとう種族超えたんだ」とか「カワイイ子供できそうだね」とか「子供に手を出したの?」など言われたい放題である。


朝の出来事がウソのようにいつもの日常である。


ターンズに行ったウィン様が心配ではあるが、今は待つしかできない。


だから、今は目の前の仕事をちゃんとこなしていくことに集中する。全てはウィン様が帰ってきてからである。


「ウィンが心配か?ジール」


アルビオが私に寄って来た。ホント、アルビオは私の心を…そっか、魂はウソつけないもんね。


「まず先に言っておく。今、我にウィンの名は届いておらぬ」


それはつまり直近でウィン様が死ぬことはないということである。それを聞けただけでも今の私の心は晴れていった。


もしかしたらウィン様がゴッドキラーと対峙する可能性もある。あの体でゴッドキラーと戦うのは無理であろうし、逃げるのも至難の業のはず。


きっとウィン様も私の心を察して行ってくれたのだろう。天然なところはあるが、肝心な時はちゃんと物事の道理を理解し、行動できる人である。


「だが、それはあくまで直近の話。先の話は分からぬから過剰な期待はせぬようにな」


それだけを言うとアルビオは子供たちの元に戻ていった。アルビオって魂が見える分、本当は誰より人の心をを知っているのかもしれない。


それを表に出さずに…そっか仮面欲しくなる時もあるよね。仮面が無ければもし、感情が表情に出てしまったら…アルビオの思い描く死神らしくないもんね。


「なんだか今回、ウィン様とアルビオ様には助けられてばかりだなぁ。今度何かお礼考えておかないと」


アルビオは新しい茶葉とスイーツでいいとして、ウィン様は何が良いのだろうか?


いや、三人でお茶会ってのもいいかもしれない。


考えてみると師匠や師範とはお茶したことはあるけど、女性でのお茶はやったことは無い。まあ、アルビオもこの場合女性カウントだね。


イアランが元に戻って、平和になったらやってみよう♪実に楽しみである。きっと話はとんでもない方向に行きそうな気もするが、それはそれで楽しいはず。


私はどんな茶葉を用意し、どんなスイーツにするかを考える。


今から楽しみになってきた♪


「ここが『神の箱庭』か」


聞いたことのない声が後ろからした。振り返ると細身の初老の男性が立っていた。


「あの…どちら様ですか?」


この気配の無さ、ただ者ではない。警戒をしつつ、無難な質問をする。


「私はエアマス。ゼフィに聞きたいことがあって来た。どこにゼフィはいるのかね?」


穏やかな声。きっと普通に話しているのであろう。でも圧のようなものを感じる。師匠や師範とは違うが、侮れない相手なのは分かる。


「わざわざ訪ねてくるとは珍しいな、エアマス。何の用だ?」


この気配に気が付いたのか、師匠がいつの間にかそばに来ていた。


「ここで立ち話もなんだ。茶菓子持って来たから中に入れてくれないだろうか?」


イアランと言い、このエアマスと言い図々しいというか、自信があるというか知人の家に遊びに来る感覚でここに来るのは理解できない。


私は必死に感情を殺す。そんな私の心情を知ってか知らないでかは分からないがエアマスは私に茶菓子の包みを渡してきた。


「水ようかんだ。できたら渋めのお茶か紅茶で頼む」


師匠はエアマスを案内をする。私は包みを台所に持って行きお茶の用意を始めた。


この時、私は気が付くべきだった。


このタイミングでエアマスがここに来た意味を。


だが、今、私は茶菓子の水ようかんの美しさに目を輝かせながらお茶の準備をするのであった。

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