自称勇者 第十六部 第六章
「はああ? どうしたんです? 」
「意味不明なんだけど」
そう海老原巡査部長と佐々木警部補が驚いた顔で見ている。
佐々木警部補は課が違う同僚で、海老原巡査部長は部下らしかった。
実際、海老原巡査部長は30前後に見える。
「自分の心臓を見てくれ。脈でもいい」
そう中村警部補が話す。
それで二人とも凄く驚いた顔をしていた。
「脈が無い」
「心臓が……」
二人の驚きの顔が凄い。
「すいません。貴方達は警視庁で起きた事件で亡くなられていたそうです。それを私の弟が転移の魔法で連れてきて、孫がゾンビ化の魔法をかけました」
そう率直に住職の志人兄が話す。
率直過ぎて、向こうも訝し気だ。
どう見ても60過ぎの老人に大翔兄が弟と呼ばれて、さらにそう変わらない年の一真が孫と言われたら驚くだろう。
「あの時に見た顔だな」
佐々木警部補が渋い顔で大翔兄と魔法使いの爺さんを見た。
「あの時の剣を持って戦った奴がいる」
そう海老原巡査部長が颯真をじっと見た。
「申し訳ない。そちらにいろいろと探りに行った時に、敵と遭遇してしまい大変な事態になってしまった。お詫びいたします」
そう住職の志人兄が頭を下げた。
「敵とはなんだ? 」
「生物兵器だと警視庁では話していたのだけどな」
海老原巡査部長と佐々木警部補がそう聞いた。
「今回の話は異界からの侵略なのです」
そう住職の志人兄が話すが、まあ信じないよね。
普通に。
凄く疑い深い目で佐々木警部補達が見ているのが分かる。
というかばっと聞いたら電波すぎるもんな。
ただ、自分の心臓が動いていなくて、それなのに自分が生きている事が唯一の何か起こっていると言う事の証拠であると言う感じ半信半疑のようだ。
「あのですね。もし、ゾンビになられたのが嫌なら、元のように亡くならせることはできます。ですから、良く考えておっしゃってください」
そう一真が話す。
「これはいつまで生きていれるんだ? 」
中村警部補が聞いた。
それで一真が困ったように魔法使いの爺さんに助け舟を求めるように見た。
勿論、適当女神のせいでいつまで生きれるかなんて説明は無いし、魔法使いの爺さんにその経験から聞くしかない。
「多分、30年はいけるはず。すでに死んでいるから死なないから。聖女の浄化を定期的に受けていれば、変な事も起きないし。実際に向こうの世界で彼女を亡くして、その人をゾンビ化してそれだけの間を暮らしてた人がいたからな。それは実際に見てそうだったし」
「「「30年……」」」
全員が魔法使いの爺さんの言葉に驚いた。
「100年いけてもおかしくない。実際、見てはいないがそういう噂はあった」
「100年って、えええ? 」
海老原巡査部長がドン引きしている。
「殆ど肉体の損傷がなければばれないし、不死だからな。というか死んでるから」
などと魔法使いの爺さんがぶっちゃけると、うーんって感じで中村警部補も海老原巡査部長も佐々木警部補も考え込んでいた。
まあ、自分がゾンビとか考えたくないだろうし、想像もつかないんだろうな。
そうなってしまったけど。
「いや、それと聖女ってなんだ? いや、誰かそんな人がいるのか? 」
中村警部補が考え込んでいたが、ふと気になったのか大翔兄に聞いた。
それで大翔兄が妹の私を指さした。
「ふはっ! 」
中村警部補が笑いを堪える。
「え? 聖女なんて名乗ってんの? 」
佐々木警部補も余計な事を話す。
それで、優斗と一真が笑いを堪えていた。
ちくしょう!
馬鹿にしやがって!
「一応、異世界の女神に聖女に選ばれているのです」
そう住職の志人兄が話す。
「……貴方は一体どなたなんです? ここはお寺のようだし、そこの住職さんのようだが……」
中村警部補がとうとう住職の志人兄に聞いた。
聞いてしまった。
「ああ、姿は変わってますが……浅野志人です」
「は? 」
中村警部補が凄い顔で住職を見た。
どうやら、大翔兄だけでなく、志人兄とも中村警部補は面識があったようだ。
空手の爺さん先生の同じ道場出身だしな。
私は会った事無いので知らなかったけど。
しかし、志人兄は困惑しきっているところで正面から自分の事を言ってしまうとは……。
それで、さらに中村警部補の困惑が広がった。
納得出来ないだろうな。
自分より年上になっているし。
こうして、その日は遅くまでどういう事かを皆で話し合った。
最終的には中村警部補達全員が納得いってないのは納得していなかったが、仕方ない。
事実そうなのだから、受け入れてもらうしかない。
ただ、ゾンビ化された事を誰も恨まなかったので、一真のほっとした表情だけが印象的だった。




