自称勇者 第十六部 第五章
住職である志人兄が深いため息をもう一度してから、中村警部補に向き直った。
「お二人だけではありません。実はあなたも亡くなられているのです」
住職の志人兄がそう一気に言っちゃった。
「は? 」
中村警部補が凄い顔をした。
まあ、そうだろうな。
実際、中村警部補は本当にハイグレードでゾンビに見えなかった。
恐ろしいまでのゾンビである。
これで私の浄化と合わせたら、そのまま生きていると言って良い状態でずっと行けるのでは無いかと言うレベルだ。
ネーミングセンスは最悪だが、その女神の力自体は凄いのだろう。
性格は糞だとしても。
「私の孫が亡くなっていた貴方をゾンビ化で復活させたのです」
住職の志人兄が一気に話を言ってしまった。
正面から言ってしまうのが志人兄である。
だからこそ、言いきっちゃった。
「は? 」
中村警部補が凄い顔のままだ。
それはそうだろう。
どこの世界に貴方はゾンビですとか言われて納得する人間がいるだろうか。
私なら生き返らしたと言って、そのまま知らんふりするとこだが……。
「いや、心臓とか止まっているんなだがな」
などとまたしても乙女の心を読んで言ってしまう老人であった。
魔法使いの爺さんは馬鹿だが、一番適切な方法になったと思う。
「何を馬鹿な事を……」
と言って、中村警部補が心臓に手を当てて、鼓動を感じないので少し慌てだした。
そして、自分の脈をとってみる。
残念ながら無い。
死んでるものな。
「ば、馬鹿な……」
中村警部補の顔が歪む。
「中村さんはあの警視庁で亡くなられていたんです。それで俺が運んでここに連れてきたんです。そちらのお二人も同じです」
そう大翔兄が説明する。
だが、ショックでまだ呑み込めていないようだ。
そりゃあ、死んでいるのに動いていたらなぁ。
「そちらのお二人にもゾンビ化をかけてくれ」
私がそう一真に頼む。
「いや、まだ中村さんと話をしていないし、良いのか? ちょっと動揺が止まらないみたいだし」
一真がそう慌てる。
「いや、もう一度死なせるのはすぐできるんだろ? こういうのは本人の意見を聞く方が大事だと思う」
私がそう言いきった。
ゾンビでも生きたいと言うものもいれば、そうでなくて自然に死なせてほしいと言う者もいる。
それはあくまで、自分が決めるべきだと思う。
その人の人生だしな。
そしたら魔法使いの爺さんが私の心をまたしても読んだらしくて、初めて満足気な顔で頷いた。
「わしもそう思う。少なくとも、やろうと思えば生前と同じ暮らしは出来るし、それをどうとるかはその人が決めるべきだ」
魔法使いの爺さんが初めて私と同じ意見を話した。
「まあ、それはそうだよね」
優斗もそう同意した。
颯真も頷いている。
「では、スキルの<ハイグレードゾンビ>を今度はお二人にかけます」
そう一真が死体の二人……海老原巡査部長と佐々木警部補に向かって話しかけるようにした。
爺さん先生の所でしていたせいで、武道家の雰囲気が漂う中村警部補と違って、海老原巡査部長は少し太った感じの優しい顔つきの人だった。
そして、佐々木警部補は少しやせ気味の身体で眼鏡をしていて、ちょっと神経質そうな顔に見える。
まあ、偏見だけど。
中村警部補は180センチくらいで佐々木警部補はそれより低く、海老原巡査部長は170センチくらいの身長である。
「行きます」
唖然としている中村警部補の前で一真が<ハイグレードゾンビ>をかけた。
すると同じ事が起こった。
死んでいたはずの二人が動き出した。
顎関節は硬直が始まり出したあたりであった。
8時間くらいで四股の硬直が始まるがそれはまだなって無くて、死体とすぐには分からないような所は確かにあった。
そして、その二人は同じようにうっと呻いたように動き出した。
眩しそうにあたりを見回しているのも同じである。
まるで生きているように見える。
それでますます、中村警部補が凄い顔をしていた。
「な、中村警部補? 」
「ここは? 」
二人の怪訝な顔が止まらない。
何しろ、破壊されていた警視庁にいたはずなのに、変な寺の会議室にいるのだから。
「おおおおおおおおおおおおおお! 」
中村警部補が驚いている。
まあ、生き返ったんだったら嬉しいだろうけど、死んでるからな。
中村警部補はゾンビなんで喜んでいいのかって顔だ。
「ええと……」
意外と素直に出るタイプらしくて、良かったとかそう言うのは言いにくいらしくて複雑そうな顔で中村警部補がこれまた凄い顔をしている。
「あなた方は大変申し訳ないですが、亡くなられたのをゾンビ化する事によってこの世界に戻ってもらいました。申し訳ない」
住職の志人兄が深く頭を下げた。
だが、海老原巡査部長も佐々木警部補もそれを異様なものを見るように見ていた。
まあ、そらそうだよな。
「何を言ってるんだ? 」
「ゾンビ化? 」
海老原巡査部長と佐々木警部補が訝し気に聞き直す。
まあ、普通なら、危ない寺の坊主だもんな。
ゾンビだと納得しないだろう。
ただ、中村警部補が今はいるので、任せるしかない。
「……俺達はゾンビらしい……」
私達のそういうの目を見たので、それで中村警部補が説明した。
流石に、ちょっと辛そうだが、それを見守るしかない。




