自称勇者 第十六部 第一章
中村さんの死体が寝かせてある。
そして、その隣にも二人のおっさんの死体が寝かせてあった。
大翔兄が窒息で亡くなった綺麗な死体を数人だけテレポートで運んできたそうな。
まあ、ゾンビ化するつもりなのだそうだが、よく考えたら窒息死で脳細胞も壊れているだろうに、ゾンビ化できるってのは無理が無いだろうか。
「いや、それ言ったら、死んで数時間経っている時点で細胞も何も死んでるから」
魔法使いの爺さんが私の心を読んで呟いた。
「まあ、そう言われると身も蓋も無いよな。あの世界のそういうのって何でもありなのか? 」
「それを言っちゃうんだ」
「相変わらず、空気が読めないと言うか……」
優斗と一真がため息をついた。
「本当にやるのか? 」
住職の志人兄がそう聞いてきた。
「やるしか無いでしょう。魔法使いの爺さんの話もあるし」
「大豆生田外郎さんの話か……」
住職の志人兄はそうため息をついた。
魔法使いの爺さんに説得されたので、こうなったが納得していないのだろう。
「その名前を言われると、わし的には、ちょっと辛いな。魔法使いの爺さんで良いんじゃが。剣聖アウロスに言われた時もちょっと嫌だったのだがな」
「珍しい名前だからな」
「普通の家に産まれたかったがなぁ」
「まあ、一族しかいないって事で良いじゃないか」
「微妙だけどなぁ」
魔法使いの爺さんがぼやいた。
ゾンビ化は外の人に見られないように会議室をカーテンで閉め切ってでやっている。
住職の志人兄は最後まで反対していたが、魔法使いの爺さんの意外な説得で折れた。
単純に、魔法使いの爺さんの言い分は警察に関係がある人をゾンビ化して、警視庁に探りを入れて、剣聖アウロスの警視総監を先に見つけて、こちらに来るまでに倒した方が良いと言う話を剣聖アウロスの昔の話をして説得しただけだ。
ぶっちゃけ、その話は剣聖アウロスがえげつなさすぎると言う事で、幕末の新選組みたいな事を平気でするそうな。
曰く、敵を殺して晒しておいて、それを見かねた敵の仲間が夜に回収に来たところを襲ったりとか言う奴である。
まあ、私も何であんなに美化されてんのか良く分からないんだけど、新選組。
爺さん先生も良く言っていたが、武道を志すものに悪い奴はいないとか、そういう幻想があった時代があったそうな。
まあ、当然、そんなわけ無いし。
屑と言うのは必ず決まった数だけ、どんな立派な場所でもいるのだ。
さらに、屑な事に、剣聖アウロスの得意技が相手の身内を人質にして相手を上手く戦えないようにして、誘い出して殺すのだそうな。
それも人質は実はすでに殺していて、切り取った指を送って子供がどうなるか知らんぞとかやって誘い出す。
完全に外道である。
どうして、これが剣聖なのか分からないが、あの下種な女神ならあり得ると言う事か。
「良く、お前はこんな奴の弟子になったな」
「強制だ。あの糞女神に無理矢理させられた」
「卑怯すぎて、攫ってきた人質をその場で殺そうとしたので、そこで戦いになって、3日間戦った。とにかく正面から戦う事はまずないし、有利な状態で無いと戦わないし、持って生まれた素養と剣に対しての何かがあったから俺は生きていたようなものだ。向こうも糞女神の命令は仕方なしに聞いていた時だったから、つばを吐きかけてきたりしたがな」
「とても、剣聖と言う奴にはみえないがな」
大翔兄も流石に突っ込んだ。
いや、大翔兄も空手道を邁進とかいろいろと言ってやっていたろうにとは思うが、まあ、そういう相手の大切なものを攫う様な卑怯な事はしなかったから、まあ良いのだが。
それでも、流石に、えええって顔で全員が大翔兄を見た。
それを見て察したのか、住職の志人兄がため息をついた。
まあ、バイトをさせたのは、一真の父の副住職の主導だったので、あまり聞いて無かったのだろう。
「まずは中村さんからゾンビとして蘇らせてくれ。一気にやると流石に説明するのが大変だ」
「……正直、ゾンビとして生き返らせないでくれたら良かったのにと相手が後悔したらどうするんだ? 」
本音は反対の住職の志人兄がそう聞いた。
「いや、それならすぐ死体に戻せるし」
一真が何の気にもせず答えた。
「いやいや、そう言う問題を言ってるんじゃないっ! 」
「それはやってみないと分からないし。こないだのヤクザの人は好きな幼馴染と一緒に亡くなれて良かったみたいだし、まあ幸せそうだったよ」
「そーそー。とりあえずやってみて、本人が嫌がったらやめたらいいかと」
「なんで、そう行き当たりばったりなんだ? お前達は? 」
「「いや、昔からだし」」
私と大翔兄が住職の志人兄に答える。
「……いや、そりゃそうだけど」
「まあ、でも、住職殿も、ここの信徒や仲間や家族が剣聖アウロスに攫われたりして、殺されて誘い出されてってされたら困るでしょ。正面切って戦うような男ではありませんし」
「それは断言する。相手の隙を作ったり、勝つ為にはどんな外道な事でもするのが、あの男だ」
颯真がもはや、師匠とは言わずに外道と断言した。
警察官を次々と盾にしたのが本当に最悪だったようだ。
まあ、どうなったかは颯真には聞かないことにしているが……。
「するしかないのか……」
住職の志人兄がそうため息ついた。




