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自称勇者 第十五部 第八章

 兄がそれから、警視庁の数キロ先に再度テレポートしたのは30分ほど経ってからだった。


 ボロボロになった颯真を一真とか優斗とか皆だけがいる会議室に連れてテレポートしてきた。


 大翔兄がちょっと気にして、マットか何かを皆に言って持って来させて颯真をそこに寝かした。


 つまり、歩ける状況じゃなかったのだ。


 いや、本当に酷かった。


 いやいや勝っていたのでは無かったのか?


 全身にやけどもあり、腹がぱっくりと裂けていて、良くこれで内臓が飛び出ないなと言う状態だった。


 血も止まっているようだが……。


「ああ、剣聖アウロスもするが、斬れた場所を肉体をコントロールして出血を止めたり筋肉を硬化させて内臓がはみ出ないようになる本来の仕組みを利用して斬り傷を抑えたりするんだ」


「……何? 私が見た剣聖アウロスの隙に対する攻撃は意味がないって事か? 」


 私があまりの事に思っている事をつい吐き出した。


「いや、動きも鈍るし意味はあるだろうけど。まあ、化け物同士の戦いって事だ」


「逃げて正解だったな」


「想像よりもだいぶやばかった……」


 私の吐露した言葉に大翔兄達が続けた。


 大翔兄がテレポートしてなかなか帰ってこないので、私と優斗と魔法使いの爺さんと一真で会議室で待っていたのだが、住職である志人兄と一真の父の副住職も来ていた。


 信徒さんまで集まるとまずいからいつもの会議室から大翔兄がテレポートしたのだが、時間がかかり過ぎていたのだ。


「とにかく、ヒーリングを」


 私が慌てて、傷口に手を当ててヒーリングを始めた。


 実際、気力で血と流出するはずの内臓を止めているような状態なので、流石の私も慌てていた。


 その深い傷とは別に、やけどにもヒーリングを行った。


 やけどがあちこちにあったのだ。


 そして、やけどが治り、傷とかふさがった途端に、颯真が凄い顔をしている。


「あの糞師匠の野郎、自分が負傷した途端に次々と周りにいた警察官を盾にしやがって、攻撃しにくくてこうなった」


「剣聖アウロスのやり方だな。殺す対象の大切にしている奴を盾に斬りこんだりとか普通にする。それとか、隠れていた場所から出てきた仲間の一人を斬撃で延々と攻撃して、仲間が助けに出てくるのを待ったりするのも良くやっていた」


「鬼畜だな」


「それ狙撃兵がやる奴だ」


 魔法使いの爺さんの言葉に優斗と大翔兄が苦笑した。


「と言う事は警察官を斬らないように戦ったんだな」


 私がそれで颯真の頭を撫でた。


 まさか、そう言う心づかいが出来るとは。


 ちょっと感心していた。


「……なるべく……頑張ったんだが……まあ……」


 その目を逸らした颯真の言葉で皆が黙る。


 まあ、多少の犠牲は出るよな。


「じゃあ、皆、死んでいたのか? 」


「かなり、ミンチだな」


「巻き添えでか……」


「いや、分からん。剣聖アウロスが忌み嫌われるのは、目撃者とか自分にとってやばい相手は全部殺すからだ。だから、わしだって隠れて攻撃してるところとかしか見たこと無い。それ以上知ると殺されそうだったし。女神に命令された数回だけ一緒に戦ったが、それ以降は全部断った。たった一人の勇者ってのは一人で戦うのが好きって言うよりは組む奴がいないからだからな」


 皆の顔が魔法使いの爺さんの言葉で歪んだ。


 酷い話だと思ったのだろう。


「じゃあ、中村さんは……」


「死んでた……」


 私が聞くと大翔兄が悲しそうに呟いて、追加で何か言いたそうにしてたが結局は黙った。


「酸素が少なくて、酸素欠乏症で死んだんだと思う」


 いきなりな言葉を颯真が答えた。


「はあああ? 」


 私があまりの言葉に驚いた。


 あの攻撃法で窒息死は無いだろうに。


「剣聖アウロスの持っている<爆殺剣>ってのがあって、あれを使うと大量の酸素を集めて爆発するように燃やしながら斬るから」


「それで、やけどがあったのか……」


 私がやっと納得した。


 爆発物など無いから、建物に火でもつけたのかと思ったからだ。


「まあ、それで、助けるのはとても無理だった。正直、周囲の建物も瓦解していて、隣の警察庁も崩れ落ちていたよ」


「この国の警察の本部が壊滅って事か? 」


「まあ、本部はそうなる」


「せっかく落ち着いてた来たのになぁ」


「いや、お前らが行くからだろ? 」


「そうだよ! 話を大きくしてどうするんだ? 」


 そう一真と副住職の一真の父が突っ込んできた。


「わぁ、叔母や大叔母に失礼だな」


 私がそう言うと黙る。


 黙ると言うか、複雑そうな顔をしているだけだが。


 まだそのあたりが心に引っかかっているらしい。


 だが、それとは別の話が出てきた。


「お前……何か隠しているな? 」


 住職の志人兄がじっと大翔兄を見た。


 大翔兄が目を逸らした。


「喋れ」


 またしても浅野兄妹の必殺の<拝み固め>が出た。


「言う言う言う! 」


 大翔兄がコメカミあたりをギリギリやられて叫んだ。


 まあ、私も大翔兄は何か隠しているなと思ったのだが、志人兄も即座に見抜いたらしい。


「酸欠で死んでたって話したでしょ? 中村さんとか死体が綺麗だからさ」


 そう大翔兄が困った顔で話す。


「なるほど、ゾンビにすると言う事か? 」


 私が納得した。


「今後の事を考えたら、警察の上層部と話せる人はいるでしょ。特に爺さんの道場で先輩なら、結構強いはずだし」


「いや、亡くなられた方をだな。そういう風にしては……」


「いや、悪くない考えだな。剣聖アウロスは死んでないんじゃろ? 」


 説教を始めようとした住職の志人兄は魔法使いの爺さんの言葉に遮られた。


「死んでないな」


「じゃあ、間違いなく、こっちに来るな。それならば味方を増やした方が良い。あの颯真に対する固執の仕方だと厄介だぞ? 」


 颯真の言葉に魔法使いの爺さんが断言した。


 本当に厄介な奴だな、剣聖アウロス。


 剣聖じゃなくて暗殺者じゃないか。


 それでもゾンビ化を反対する住職の志人兄と大翔兄と魔法使いの爺さんが延々と話し合いをしていた。


 魔法使いの爺さんの懸念はマジで深刻そうなので、多分、ゾンビにする方が良いのだろうが、住職である志人兄は僧侶としての立場もあるのだろう。


 まあ、あれだ、やっぱり私達が行かなきゃよかったなと、そう思った。




 


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