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自称勇者 第十五部 第七章

 逃げるぞ。


 そう私が心の中で魔法使いの爺さんに告げる。


 魔法使いの爺さんが凄い顔をしていた。


 テレポートなら逃げれる。


 私は続けて心の中でそう告げる。


「そ、そ……」


 魔法使いの爺さんが颯真の名前を出さないように工夫して聞いてくる。


 それは状況を見てだ。


 颯真は助けれそうなら助けるし、今回テレポートできなくても、そう簡単に死ぬような男でもない。


 逆にひ弱わなのはこちらの方だ。


 こんな人外の戦いに付き合ってられない。


 そう、正直に心で伝える。


 とにかく、勝っても、警視庁のトップなんて殺したり怪我させたら、あれはクルトルバの皇弟によって転生させられたとか説明しても話なんか通じない。


 すでに、生物兵器では無いかと思われているなら、今回の異常な戦いだって生物兵器のせいで、勝っても人殺しや傷害犯になる可能性が高い。


 さらに、日本が得意の隠蔽もあるだろう、狂った男子生徒の暴挙で終わりにされてしまう。


「し、しかし……」


 そう魔法使いの爺さんが睨みあう、颯真を案じたように見る。


 それは後で考えると魔法使いの爺さんに告げるように思う。


 双方の戦いが始まれば、恐らく、ここは壊滅状態になるだろう。


 ぶっちゃけ、どちらもまわりの環境を考えないで戦うタイプと見た。


 その言葉で魔法使いの爺さんががっくりと顔を伏せた。


 兄と私がちらと目を合わせた。


 兄は剣聖アウロスと颯真をちらと見た。


 双方の戦いが始まると同時にテレポートするつもりだ。


 それを目と目で確認し合った。


「え? 逃げるの? 」


 優斗がその回る頭でぼそりと聞いた。


「よ、余計な事を! 」


 私が焦った。


 それと同時に剣聖アウロスと颯真が動いた。


 まずは剣聖アウロスが逃げると話した私達に対して、即座に反応した。


 逃がしてなるものかと。


 どうやら、テレポートして現れたのを見ていたのだろう。


 うちの面子の誰かがテレポート出来ると読んでいたようだ。


 そして、それこそが剣聖アウロスの最大の誤算になったのだと思う。


 颯真は私達が逃げると言った話が出たのを気にしなかったのだ。


 いや、それだけ戦闘マシーンと言うよりは、後の話では颯真は私達が逃げるのまで予想していたようだ。


 剣聖アウロスの今までと違う剣戟が動く。


 それは目の前の全てを消し去るかのような剣戟。


 私達を逃がさない為に動き出した、その剣戟が颯真に対して最大の隙になった。


 多分、颯真もこちらに合流すると思って先回りしたつもりなのだろう、こちらに凄まじい剣戟を浴びせてきた。


 それに対して、その対峙している自分に対してではない攻撃をした隙をめがけて颯真が同じような剣戟を下側から逆袈裟斬りとして動く。


 それで、剣聖アウロスが慌てて、私達の動きに対する攻撃を修正する事で颯真の剣戟に合わせる。


 そのせいで剣聖アウロスは颯真に対して出遅れていた。


 その動きの中で一瞬にして大翔兄が動く。


 魔法使いの爺さんと私のとこへジャンプした。


 そして、泣きそうな顔で股間の痛みを抑えながら、優斗もこちらに飛びつくようにジャンプしてきた。


 その時の優斗の顔は終生、私達から、からかわれるくらい、情けなくて面白い顔をしていた。


 残念ながら、優斗のジャンプはこちらに届かなかったのだ。


 股間が痛くて思うようにジャンプ出来なかったらしい。


 その時にポチが動いて、飛びついて優斗の腕に噛みついてくれた。


 勿論、私はポチの足を掴んで繋がっていた。


 繋がっていればテレポートは出来るはずだ。


 そして、その一瞬のテレポートの間で、颯真と剣聖アウロスの激突で周りの全てが弾けるように吹き飛んでいくのを見ながら、颯真の剣戟が防ぎに戻ってきた剣聖アウロスの剣戟に防がれながらも剣聖アウロスの下から肩のあたりを斬っていくような軌跡が見えた。


 それで、テレポートで消える瞬間に颯真に向けてやったなって感じで親指を立てた。


 多分、この一瞬は剣聖アウロスにとって命とりだろう。


 颯真の勝ちでは無いだろうか。


 それで私達はそのテレポートで大聖寺の境内に戻ってきた。


 そのままで転移したせいで、凄く変な感じに全員が地面に叩きつけられる。


 ポチがちょっと悲鳴を上げてキャンキャン言っていた。


 お腹を打ったみたい。


 ただ、怪我するほどでは無かったようだ。


 そして、その夕闇の中、信徒達が騒いでいた。


「帰って来られた」


「良かった」


 父母も駆け寄ってきた。


「どこに行っていたんだ! 」


 一真と一緒に志人兄である住職も来た。


「いや、偵察に……」


 大翔兄がそう目を泳がせる。


「助かった。助かったよ……」


 凄い実感のある声で優斗がポチを抱きしめた。


 まあ、多分、あれだけのエネルギーを受けてたら、皆、あのあたりにいた人は死んでいるだろうからなぁ。


「いや、颯真はどうするんだ? 」


「それは様子を見て考える。今は行かない方が良いと思う」


 私の心を聞いて、慌てた魔法使いの爺さんが颯真の事を聞いてきたので、大翔兄の方がどうするかを話したが、私は颯真が勝ったと心の中で魔法使いの爺さんに告げた。


「いやいや、勝ってるか? 」


「ずっと見てたからな。こっちが逃げると思って、先回りで颯真もこちらに逃げると思って剣聖アウロスが剣戟をこちらに振ったのが失敗だったな。颯真は私達の行動に慣れてるから、そんな事で動揺しないし、ちゃんと私達が逃げるのを見越していたのだろう。動揺もせずに剣聖アウロスに斬りつけて行ったのが良かった」


 私がそう解説した。


「いや、それじゃあ、分からんだろう? 」


「あの異常な攻撃の出し合いで隙を作ったのだから、それは大きいと思うぞ。直撃ななら奴らでも死ぬレベルだったし。それで慌ててこちらに出していた攻撃を慌てて颯真の方に防御で戻して剣聖アウロスも何とか剣戟で颯真の剣戟を受けたが、完全には受けれていなかったから、相当なダメージがあったはず」


「良く見てたな」


「ちょうど、そう言う位置にいたからな」


 私がそう親指を立てた。


「颯真君は深入りするタイプなのか? 」


「いや、この場合は敵地だから、そんなにしつこくはやらないと思う」


「じゃあ、少し時間を置いてから、距離を置いてテレポートして来る」


 魔法使いの爺さんにそう言われたので、大翔兄が答えた。


「全然昔の無茶苦茶やってた頃と変わらないじゃないか」


「「何を今さら」」


 住職の兄の志人がその私と大翔兄の姿を見てため息をついた。


 

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