自称勇者 第十五部 第二章
「いや、本気で行くの? 勝手な行動はしない方がよくない? 」
優斗が必死だ。
何しろ、性格的に私達が心配で、ついて来ざるを得ない性格してるしな。
俺は行かないよと言うだけで良いのに。
「じゃあ、わしは行かない」
そう、魔法使いの爺さんが右手をあげて、そう微笑んだ。
「おいおい! 」
優斗が仲間がいなくなるからあわてて叫ぶ。
「いや、だって、絶対に無茶苦茶になるだろ? わしは向こうで戦争も経験しているが、その国の警察組織とか軍隊とか最初に攻め込んで制圧する場所だから、浸透する戦い方をしている以上、敵は間違いなく、そこにいる」
魔法使いの爺さんがそう断言した。
「いや、それはそうだけど……」
「俺は自分でもテレポートは出来る。距離的に難しいから、お前達が行かないと言うなら、近くまでは別のやり方で移動してでも行く」
そう颯真が断言した。
何という硬い意志だ。
困ったな。
「ポチはおいていくか? 」
「いや、調査に行くのに? ポチがいなと菅原さんがどこにいるか分からんだろうに」
私の言葉に大翔兄が突っ込んできた。
「いや、もう戦闘する気満々だし。颯真」
「ああ」
颯真は戦う気満々なんで、これは調査になんないのではと思って、ポチが死ぬのも困るしなと……。
「いないとどこにいるかわかんないんだろ? 菅原が……」
優斗がそう突っ込んできた。
「まあ、そうだが」
「なら、俺も行くよ。仕方ない。颯真だけで行くとか浅野兄妹だけ行かせるとか、どれも破滅的な未来しか見えないし」
優斗が仲間に対しての情からか仕方ないと言う顔で呟いた。
馬鹿だな、長生きしないぞ。
世の中はそういう優しい奴は最初に死ぬように出来ている。
そもそも、私と兄は皇弟とやらが言ったように死ぬとなると時間転移と異界転移が起きて死ぬことは無いのだ。
絶対に死なない我々と自分の立場を考えないとか……。
などと思ってちらと大翔兄を見たら、同じような事を思っていたのか、私と目が合って苦笑していた。
「お、お前ら……」
そう魔法使いの爺さんが私と大翔兄の本音を聞いたらしくて、ドン引きしていた。
「まあ、気にするな。彼の優しさに甘える事にしよう」
大翔兄が微笑んだ。
ああいう優しい微笑みに世間は騙されているが、あれは完全に作り笑いだから。
爺さん先生の道場を助けるために、お前はこの道場のマスコット的なヒーローになれと爺さんの弟に言われて、それをしていた大翔兄である。
それはもう筋金入りの微笑みであった。
ちなみに、それでおこずかいを貰っていたらしいから、守銭奴は昔からである。
ちらと見ると魔法使いの爺さんは凄い顔して大翔兄を見ていた。
多分、私よりもっと凄い事を思っているのだろう。
現実なんて、こんなものである。
「では、そろそろ転移して行くか」
魔法使いの爺さんがじっと見るので、それに気が付いたのか、咳払いして大翔兄がそう答えた。
「では、ポチ、行くぞ? 」
私がそう言いながらポチを抱きしめた。
最初の頃はあの筋肉質の上級悪魔の変わった犬なんて抱き着くのは気持ち悪かったのだが、すっかり家族として暮らすのが長いと可愛い柴犬のポチでしかない。
「では、警視庁へ、テレポートだ」
兄が皆に告げながら、雑誌の警視庁の写真をじっと見た。
颯真も優斗も意を決したように頷いた。
魔法使いの爺さんだけは、まだ嫌そうだったが。
「ど、どこへ行く気なんだ? 」
優斗がそう聞いた。
「とりあえず、総合相談センターと言うのが一階にあるそうなんだが……」
「いや、ネットが使えないから仕方ないが、警視庁も初手で攻撃受けたとか言う話が最初の頃の報道にあったんだが……」
「え? 警視庁は無くなってるの? 」
「いや、分からん」
「なら、とりあえず、行ってみるしかあるまい」
「いや、だから、ちょっとそれを調べれば良いのでは? それから行っても遅くないし」
大翔兄に行きたくない魔法使いの爺さんが突っ込む。
「いや、こういうのは出たとこ勝負だろ」
「そう言う考えが、お前のいけないとこだ」
颯真に魔法使いの爺さんが突っ込んだ。
「分かった。面倒くさいから行ってみて、警視庁が無かったら、即撤退しよう」
大翔兄が面倒くさくなったらしくて、即座に決めた。
「えええ? 」
「もう少し考えてだな」
などと優斗と魔法使いの爺さんが行ってる間にテレポートした。
「うおぉぉぉぉ? 」
テレポートした瞬間に大翔兄が驚いた。
警視庁の真ん中の吹き抜けをさかいに半分になって、半分は建ったままで、残りの半分は引き裂かれたように倒れて倒壊していた。
「なんじゃ、これは? 」
魔法使いの爺さんも驚く。
そして、皆が半分になった建物を見て驚いている時に私は周りを見て驚いていた。
検証しているのか知らないが、警察官らしい人が一杯いて、そこを調査している最中に目の前に突然私達が現れたのだから、凄い顔してこちらを見ていた。
そこにいる全ての警察官の視線が我々に注がれていた。
「これ、真っ二つに誰かが建物を剣か何かで割ってるぞ? 」
で、すぐに大翔兄がテレポートして逃げたらいいのに、そんな馬鹿な話をするのでさらに空気がやばくなる。
そして、颯真が手に<忘却の剣>を出したせいで雰囲気の最悪さは行きつくとこまで行った。
「おいおいおいおい! 」
優斗が必死に颯真を止めようと叫んだ。
「あいつ! 」
「また、斬る気か? 」
などと警察官の皆さんが腰から拳銃を抜いて、こちらに構えだした。
やばすぎる




