自称勇者 第十四部 第五章
大翔兄と私が柴犬になったポチを颯真と優斗と魔法使いの爺さんのいる所に連れてきた。
ポチは散歩が出来ると思っているので大喜びしていた。
父母にはいろいろと志人兄の事でポチが必要と言う意味不明の話をして無理矢理借りてきた。
もし、ポチが死にでもしたら父母がショックを受けるので、突撃させたりとか出来ないので扱いが難しい。
颯真も優斗も魔法使いの爺さんも柴犬のポチを連れてきたから、ちょっと困った顔をしていた。
今回は一真は家族会議の最中だそうでいない。
まあ、いてもいなくても関係ないのだが。
一真はゾンビを操るしか能力無いし、死体がある状況で無いと意味が無い。
特に東京とか今は安全らしいので、死体も無いし意味が無いだろう。
「また、辛辣な意見だな」
横で魔法使いの爺さんがため息をついた。
「いや、いちいち、私の心を読んでくるなよ」
「いや、聞こえてくるんじゃもの」
「そう言うのは聞かないふりして知らないふりするのがエチケットと言うものでは無いか? 」
「いや、思ってる事が一番辛辣なんで、自然と聞いてしまうと言う。たくさんの人がいろいろ言ってて、そんな中で、どうしても目立った事を言っているのがいると聞いてしまうだろ? 」
「だとしても、それは聞いていて聞かないふりくらい一番の年寄なんだから出来るだろうが……」
「ふふふふ、果たしてわしが一番の年寄なのかの? 」
魔法使いの爺さんがそうにやりと笑った。
「? どういうこと? 」
私が首を傾げた。
「ああ、俺も思ってた。結構、クオの世界では俺達は有名らしいから、多分、これが産まれて初めてじゃないよな。となると、この転生も何回目なんだかわからん。千年くらい生きるらしいから500年くらい生きていてもおかしくない」
大翔兄が笑った。
「いやいや、記憶は無いんだがな」
「何かイレギュラーがあって記憶が残ってないとか言ってたろ」
「そうか、確かになぁ」
「実はババアの女子高生って嫌だな」
優斗に言われてショックを受ける。
「ババアだと? 」
「いや500歳とかだったら笑えないよ」
「エルフだと思えよ」
「そう考えると辛いものがあるな」
優斗が苦笑した。
「どうでも良いけど、なぜ、犬を連れてきた? 」
颯真が少し不機嫌そうに聞いた。
「いや、こいつに探してもらおうと思ってな……」
「行く場所が分かってんじゃないのか? 」
「いや、警察庁にいるだけしか知らない」
「嘘だろ? 」
颯真が凄い顔してこちらを見た。
いやいや、颯真にそんな顔されるとは思わなかった。
ちょっと失礼じゃないか?
「やはりな。そうじゃないかと思ったんだ。やはり実は何も考えて無いだろう。場当たり的で実際に適当だな」
優斗がため息をついた。
「そら、普通の女子高生に警察の中がどうとか知らんし。兄の大学の先輩だとかで紹介されただけだしな。警察の先輩とは言っていたが、そもそも、兄は警視庁にいたわけでは無いしな」
「そうそう、兄の大学の先輩だって紹介を受けてただけだし。兄が県警にいただけだから、警視庁なんて知るわけがない。俺は単なる大学生だし」
私と大翔兄が笑顔で答える。
「いや、だいぶ混乱は収まったとか言っても、まだまだ落ち着いたばかりの状態で、それでそんな適当であの菅原さんだっけ? 会えるの? 」
「良く名前を憶えていたな」
「凄いじゃん」
私と兄が優斗に感心した。
「ほら、他人事じゃん……」
優斗がそう呆れ切った顔をした。
「どうするんだ? 行くのか行かないのか? 」
そう颯真が私と大翔兄に聞きただした。
「え? 行くんだろ? 」
「行くよ」
「……本当に軽いよな。何も考えてないって分かるわ。ノリだけでやっているといつか痛い目みるぞ? 」
魔法使いの爺さんが今さらながらにって感じで突っ込んできた。
「いや、というか、今回は嫌な予感がする。それでもしないといけないと思っているんだけどな……」
「……それ、むこうで仲間が半分以上亡くなった魔物退治の時の言葉だな……」
颯真の真剣な呟きに、魔法使いの爺さんが少しビビっていた。
「ちょっと待って。え? やばい話になるの? 」
優斗もびびりまくっている。
「だが、しないといけない気がする。この場合の直感はいつも正しい。だから行くべきなんだが……」
颯真が真剣な顔でこちらを見た。
まるでこちらの決意を探るようだ。
「行くよ」
「行くぞ」
私と大翔兄が微笑みながら答える。
「いやいや、待て。こいつがこういう時は大体死地に行くときのパターンになるぞ? 」
魔法使いの爺さんがそう私と大翔兄の顔を覗き込むように話す。
「行くよ」
「行くぞ」
「いや、だから、なんでそんなに朗らからに微笑みながら言えるんだ? 俺なんか凄い不安だが! 」
優斗がちょっと困惑気味に聞いたて来た。
「いや、私達は死なないって話してたじゃん。志人兄が」
「死にそうになったら時間転移か異世界転移するんだろ? 絶対に死なないのがクメンって言ってたし」
「自分達が死なないから、笑顔で言ってんのかよ」
優斗が吐き捨てた。
「もし、なんなら、兄と私だけで行って来るぞ? 」
「それでも良いけど」
私と兄が微笑んだ。
「何というか、考え方が違い過ぎる……」
魔法使いの爺さんが絶句した。
「まあ、その覚悟があるなら良い。それなら行くか」
そう颯真が苦笑した。
優斗と魔法使いの爺さんは相当に躊躇した顔で尻込みをしていたが。




