自称勇者 第十三部 第一章
昨晩の騒ぎでいろいろと寺ではあったらしいが、私達は無視してそのまま遅くまで寝ていた。
それだけ疲れていたのだ。
真面目な話、ちょっと、ここのところテレポートで救援物資だのヒーリングだの大変だった。
一応、現地にはそれなりの物資も届けて、今後について大聖寺で話し合いをしてくると新しい信徒さんに告げて、今日は休むことにしたのだが、いろいろと外が騒がしい。
とはいえ戦争になっている雰囲気でもない。
一真が私達と話をしたいらしくて、入り口に来てはうちの家族が起きている気配が無いので、困り切った雰囲気で廊下を行ったり来たりしている。
まあ、なんとなくそうだろうなと分かるだけだが。
「行ったり来たりしてるな……」
兄が寝言のように呟いた。
「みたいだな」
「戦闘では無いみたいだから、もう少し寝たいのだが……」
「私も同感だ」
それで、そのまま寝続ける。
父と母も私達兄妹が心配であまり寝れてなかったらしくて、今日はぐっすり寝ているようだ。
起きる気配がない。
まあ、あれだ。
疲れ切っている時にはやはり睡眠が大事だよと言う事だ。
だから、私も転がった。
そういや、目を瞑って横になっているだけで、完全に寝たのと比べて、その効果の7割くらいの意味はあるんだそうな。
だからこそ、この横になって目をつむっているのは無駄では無いのだ。
決して、寝たふりをしていると言うわけではなく、疲れを取れる時に取っておかないとどうにもならないと言う世知辛い現実もある。
「なんか、妹の方は睡眠の効果の解説しとるぞ。頭の中で……目を瞑っているだけでも寝たのと同じくらいの効果の7割はあって、これは寝たふりをしているのではないのだと……」
そう、外の廊下から魔法使いの爺さんが中の私に突っ込んだ。
しまった。
一真の奴、私達が起きているかどうか、魔法使いの爺さんを連れてきて調べるとは。
侮れない奴。
「おおおい、すいません。起きてくれませんか? 」
などと部屋の外で小声で一真が言い出す。
さっきまで、こちらが寝ていたので一声もあげなかった一真がである。
ちくしょう。
「馬鹿が……」
兄がむっとした感じで寝たまま呟いた。
どうやら、兄はそれを想定して何も考えないようにしていたようだ。
つまり、兄も寝たふりだったのだ。
ううむ、どうしょうかな。
このまま寝たふりで通すか?
「このまま寝たふりで誤魔化す気だぞ? 」
などと魔法使いの爺さんが囁く。
殺してやりたいな、このジジイ。
「頼むから、相談事なんだってば? 」
などと、一真が五月蝿い。
「なんだ。寝たふりか? 」
そう一真の父親の副住職の声がした。
やばいな。
「一つはバイト料についての相談なんだが? 」
などと一真の父親の住職が囁くように兄に向って部屋の外から話す。
もはや、ここまで世界が破壊されて、バイト料もへちまも無いのだが、兄は脊髄反射で飛び起きて、襖を父母が起きないようにそっと開けた。
「なんでしょうか? 」
それを見て私が呆れた。
仕方ない。
私も髪を整えながら起き上がる。
「女性もいるのになんなんです? 」
兄が言えないみたいなので、私がそう一真の父親に話す。
「ああ、ごめんなさい」
そこは素直に一真の父親の副住職が謝った。
「女性……か……」
「そうなんだよな……」
優斗もいて、一真と凄く失礼な事を言っていた。
なので寝起きで低血圧で機嫌がいい方で無いので、じろっと睨んだら、一真の父親の副住職まで恐縮していた。
「すまない。それがドンドン信徒が集まって増えているんだ」
そう一真が話す。
「はあ? 」
「四方から集まってきている。このままだと救援物資が足りない」
一真の父親の副住職すら動揺していた。
さっきまで私が不機嫌で気が付かなかったが、相当一真達は慌てていた。
「なんでですかね? こちらの方が爆心地だと伝えたのに」
兄がそう不思議そうに呟く。
「いやいや、信仰してたら分かるが、不安になると、やはりそういうものに頼るものだし」
一真の父親の副住職が説明する。
「世界の情報でも、乗っ取りがある程度すんだら、相手側が静かになりつつあるから、段々と政府も本格的に動き出していると昨日やってましたけど」
兄が昨日見たばかりの衛星放送の話をした。
確かに、世界中が落ち着いてきているようだ。
まあ、それだけ侵略側が頭が良いのだと思う。
最初のショック状況で混乱する中で、本命の侵攻部隊は主要なメディアとか政治家とかを乗っ取って、抑えるとこを抑えて時間をかけて拡大していくつもりだと思われた。
真面目な話、ここまで煽りだけで、私達もまともに戦ってないから、魔物はともかくクオカードとやらがどれだけ厄介かは分からない。
魔物の大半は最初に世界中を混乱させるのに使いつぶされて、その間に自分達は混乱の間に静かに人間の中に浸透していくとか、結構えげつないなと思う。
「やっぱりそうなのか……」
魔法使いの爺さんが私の考えに相槌を打つ。
「なになに? 」
「何を考えたの? 」
一真と優斗がそれで必死に魔法使いの爺さんから聞き出そうとしていた。
人の心をいちいちと読むのは、あの女神が兄の隠しているエロDVDとかを発見しているのと同じことだよね、人の隠し事とか暴き立てている訳だし。
そう思ったら、魔法使いの爺さんが凄い顔で固まっていた。




