自称勇者 第十二部 第三章
空気の重いまま互いにしゃべらず、晩御飯は終わった。
消化の良い粥と近隣で取れた野菜を食べた。
魚の煮つけも出た。
大聖寺が寺なので、四つ足は食べないとか。
まあ、別に魚は嫌いでないのでいいのだが、肉好きの兄は少し不満気だ。
それから、部屋に布団を並べて寝ることになった。
その時間を狙って、またしても優斗の妹の穂佳がこちらに来ようとして、廊下でバタバタしていた。
勿論、疲れているので知らなかった振りをする。
颯真も無視したようだ。
何しろ、今は寝たい。
ホテルとかで寝たけど、何かあった時の心配もあって良く寝れなかったところもあるし。
狭い部屋に布団を敷き詰めて、家族で寝た。
本当にそれは久しぶりの事だった。
「昔はこうやって寝ていたのになぁ」
「一人減ってしまったけどね」
などと大翔兄さんが余計なことを言うから、父母がそれを思い出している。
だが、多分、生きてるような気がする。
でないと業とか言う奴があんなことを言うはずが無い。
というか、皇帝の話したい話ってそれに関する事だったのではと思ったが、今さら遅いしな。
などと考えていたら寝てしまった。
私が寝る前に兄も寝息を立てていたし、疲れているのは確かだし。
真っ暗な部屋で目が覚める。
父母はいなかった。
そして布団も無い。
私は寝た時のパジャマを着ていた。
色気も何もない姿である。
すでに兄は起き上がって、あたりを警戒していた。
勿論、兄も親父みたいなパジャマを着ていた。
そこは想像以上に広い空間だった。
その横には颯真がいた。
颯真はジャージを着ていた。
「何、これ? 攻撃? 」
「いや、女神っぽいな」
私の疑問に兄がそう冷ややかに話す。
「いやいや、なんで? 女神はいないけど? 」
「俺がこないだ殴ったから警戒してんじゃないのか? 」
兄がそう困った顔で呟いた。
「流石に陰口は多いだろうけど、殴られたことは無いだろうからな」
そう颯真が横で苦笑した。
「あの性格だと殴られていそうだがな……陰口は自覚してるのか? 」
「聞こえてるだろ。昔から耳は良かったはずだ」
「そうか、まんまのキャラクターなんだな」
私がそれで苦笑した。
そうしたら、闇の中から優斗と一真と魔法使いの爺さんが歩いてくる。
「……あんた、パジャマなのか? 」
私が魔法使いの爺さんに驚いた。
「いや、寝間着で貰ったのがこれだからな」
「着物かと思った」
「いや、わしもそう思ったが、流石にこれを着るように渡されたからな。でも、それで正解だったと思うよ。何しろ、寺って結構寒いから」
「寺は仏像とか仏画が湿気が問題なんで、湿気がこもらないように、密閉しないように出来てるから、風の通りが良すぎてスースーだからな」
魔法使いの爺さんの言葉に一真が答えた。
「それにしても、色気も可愛げも無いパジャマなんだな」
そう優斗が私を見る。
「流行り廃りが無い方が地味でもずっと着れるからな」
「女の子だから、もう少し気を使っては? 」
「お前が言うか? 」
「妹の穂佳なんてネグリジェだぞ? 」
「え? そんな格好でうろうろしてたの? 」
「ジャンパーは着ていたが」
「いやいや、止めろよ。ここには野獣のような男がいるんだぞ? 」
私が優斗に注意した。
「いやいや、もっと怖いのいっぱいいるじゃん」
優斗が私達を見て苦笑した。
「その話は置いといて、とりあえず話をしたいとおっしゃってらっしゃるから」
そう一真が奥を指さした。
そこに西洋の頑丈なフルフェイスの甲冑を着て盾を持った人が立っている。
「……」
兄がそれを見て無言になった。
「なんで、そんな格好で女神が現れるんだ? 」
私が一真に聞いた。
「え? 一目見て分かるとは! 」
「いや、こんな格好して会いに来る人、女神しかいないじゃん」
「私って、そんな評価っ? 」
西洋の頑丈なフルフェイスの甲冑の人物……女神が騒ぐ。
「ごめんよ。こないだは横で煽られたから、昔を思い出して殴っただけだし……」
兄がそう素直に女神に謝った。
「いや、そんな事で女性を殴る奴は最低です! 」
女神がきっぱりと話す。
「いや、あんた。俺が小学一年生の時に足をひねって酷い捻挫で動けなくなった時に、横で「この程度なら歩いて見せろ! 」とか散々煽ったやんかっ! 」
兄がそうブチ切れる。
「大人の姿でか? 」
「女神は最初から大人だ」
私の疑問に兄が返す。
「小学一年生に? 」
「ええええ? 」
優斗と一真がドン引きしていた。
「こいつ、その時に俺を殺そうとしたんだぞ? 最初に」
そう兄が突っ込んだ。
颯真が聞いてて頭を抱えた。
「いや、糞女神とかまあ呼ばれていたが……そこまでとは……」
魔法使いの爺さんがそれでドン引きしていた。
「いや、戦いと言うのは敵が弱いうちに仕掛けるものだろう」
そう女神が甲冑のままで胸を張った。
「それは正しい」
「いや、正しいんだけど、やられる方はたまったもんではないがな」
私と兄がその意見に同意する。
かって、唐の太宗の李世民は父を立たせて唐朝を作るきっかけを作ったが、能力が凄すぎて、後に大きな敵になりそうなのを先回りで小さいうちに潰しまくったので大したライバルがいなかったと言う。
そう考えれば、それは正しいのだ。
将来的に物語にするとインパクトも何もなくなるが。
「ええええ? 本気で殺そうとしたの? 」
「小学一年生を女神様が? 」
時間差で優斗と一真が驚いた。
いやいや、反応が遅いわ。
「ああ、あんたのその行為を正しいと理解していたから、あんたはこの兄妹に目を付けたって事か? 」
颯真が笑って納得した。
こいつもずれているよな……。
「いや、小学一年生なのに、歯を食いしばってこちらを睨むから、ゾクゾクして可愛く見えた」
女神がそうフルフェイスの甲冑の面当てを外して顔を見せると嬉しそうに話す。
変態だ。
間違いのない変態だ。




