自称勇者 第十二部 第二章
大聖寺の一角で壊れなかった建物の一部屋を父母とポチと私と兄に与えられていた。
まあ、大聖聖女如来の聖女だの女神の御使いなどと言われてる立場もあるし、安全も考えての意味合いもある。
幸い、古い建物は残ってたおかげで、鎌倉時代から昭和の初期あたりまでこの大聖寺で坊主になる修行をする小僧さんとかが暮らしていた場所の一室を貸していただいている。
正直、私と兄が来るといろいろと拝みに来る人とかいて、落ち着かないから、ここに来ないようにはしていたのだが、父母が心配していると颯真が言ってきたのでこちらに来た。
信徒さんに一真が私と兄が疲れているからと説明して配慮してくれたおかげで、今日は誰も来ない。
兄もこの部屋にいるし、隣の部屋に颯真がいるので、それ狙いか知らんけど、さっき優斗の妹の穂佳が来たが、優斗が引きずるように連れていった。
やっと私達はバタバタしていたのが、ようやく父母に会えたのだ。
まあ、10日くらいいなかったから、そりゃあね。
救援物資を運んで教化する過程で、被災地と言っても物流が止まってるだけで大丈夫な建物もあるし、現地の人に使えそうなホテルとかを貸してもらったりして、そこで暮らしていた。
まあ、父母を巻き込みたくなかったと言うのもある。
もしもの時は優斗と一真から新しい念話と言うスキルで連絡をとれたし、すぐに兄のテレポートで戻ってくるつもりだった。
まあ、父母はテレポートとかは知らないし、それは一真が余計な事を信徒から父母に言われないように気を使ってくれていた。
そう言う意味では一真には本当にお世話になっているのだが……。
「いろいろと飛び回ってると聞いたけど大丈夫なの? 」
「特に、聖女だの女神の御使いだの言われてるようだが? 」
母と父が私と兄に聞いてきた。
多少は知っていたが、一部に熱烈な人達がいて父母にそういう部分を見せたらしい。
一真もそれで気遣いしてくれるようになったが、まあ、自分で教化しといてなんだが、ああいう人って宗教的な純粋さと言うか止まらないからな。
よく考えたら、放置プレーの性格のせいと言うべきか、教化の方も解除が出来ないんだよな。
まさか、ヒーリングで治るわけも無いし。
実際問題として、結構将来的に厄介なことになるかもしれない。
転勤族の父のおかげで転校生のプロフェッショナルだったが、流石にあの人達は転校しましたとか通用せんよな。
ちょっと考えてたら頭が痛くなってきた。
「意外と、暴走してノリでやっちゃったけど、厄介かもしれんな」
などと兄が私の表情から私の心を読んだのか、さらりと救いのない事を再確認するように言うから困る。
「暴走? 」
「厄介? 」
父と母がそこで突っ込んでくる。
どちらも浅野兄妹としたら非常にありがちな呟きを父母が聞いて、凄く焦った顔をしている。
「また、何かやったのか? 」
「いや、やってそうだけど」
この崇拝されている雰囲気を見れば父と母にしたら、余計に焦るのだろう。
さて、どうするか?
私も困って兄をチラリと見た。
兄も父母を見て私と同じように、ちょっと困っているのが長い兄妹としての付き合いから分かる。
まあ、いつものノリで誤魔化すのだろう。
こういう時は兄妹としたら、当然、兄が説明すべき時だろう。
私はそう思い……と言うかそうする為に母が出してくれたお茶をゆっくりとすすった。
それで私が兄に任せたと思ったらしい。
少し困った顔で兄が私を見た後に、ちょっと天井をちらと見てから話しだした。
「兄が……生きているかもしれない」
「ブーーーッ! 」
その兄の言葉を聞いて、私が茶を吹いた。
よりにもよって、その話題はいかんだろうに……。
「何を馬鹿な事を……」
「そうよ……」
父と母が沈痛な顔で呟く。
思いっきり空気が重い。
なにゆえ、こんな話題を? と私が口パクで兄に言う。
兄もちょっとてんぱっていた。
「異世界転生しているかもしれないんだ……」
「ほわぁぁぁぁ? 」
兄の馬鹿な発言に私が震えた。
よりにもよって、異世界転生だと?
馬鹿なのか?
いや、確かにあり得るのかもしれないが……。
「はぁぁぁぁ……。疲れているんだな」
「まあ、気持ちは分かるけれどね。貴方達兄妹は仲が良かったし」
父と母が苦笑した。
よりにもよって、何を言うんだ? いきなりすぎだろ! と私がまたしても口パクで兄に伝える。
しかし、可能性的にはあるだろう?
と兄が口パクをしていた。
「いやいや、ごめんね父さん母さん。ちょっと兄さん疲れているんだ」
仕方ないから私がそう父母に話す。
そうしたら、仕方ないと言う感じで父母が笑った。
それで終わりで良いのに、兄に火が付いた。
私も持っている浅野兄妹特有のつまらない事で意地になると言う奴だ。
「トラックに跳ねられて死んでも生きているんだよ! 異世界転生だと! いや、兄さんは車に跳ねられたからこそ、異世界転生してるんだ! 」
兄がそう宣った。
やべぇな、父と母がちょっと困った顔をしていた。
「兄も異世界転生してる奴と同じように跳ねられたんだ! あり得るんだよ! 」
兄がそう叫ぶ。
いや、女神がらみだとあり得るんだけど、ちょっと父母にはその話はまずいよなと私が焦る。
「いや、きっと! 兄は異世界転生してチートな能力が目覚めているはずなんだ! 」
兄が絶叫した。
空気が重い。
父母の目が疲れた我が子を労わる様な目になっていた。
これはたまらん。
「ん? 誰か来たかな? 」
などと、この重い空気を何とかするために、仕方ないので誤魔化すように廊下への襖を開けた。
そこには食事を持ってきてくれた優斗と一真がいて、こちらを異端者でも見るような凄い目でこちらを見ていた。
一真も優斗も固まったまま無言だった。
兄も父母も私も無言だった。
空気が重すぎる




