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自称勇者 第十一部 第七章

本日から17時更新にします。

 颯真がじりじりと私達に寄ってくる。


 <忘却の剣>は出したままだ。


 目は私達を敵のように睨んでいた。


 私達を殺す気かもしれない。


「お前は一緒に戦っていた仲間と皇帝とやらとどちらを信じるんだ? 」


「自分の見たものだけだ」


「うん、正しい」


 兄が颯真の返事に感心していた。


「馬鹿ですかぁぁぁ? 」


「馬鹿じゃないのぉぉぉ! 」


 一真と優斗が兄に叫ぶ。


「悪逆非道なこの兄妹を見たらお前が敵だと思うのは間違っていないが、よく考えるんだ! 次々と侵略を繰り返す魔物と異界のクルトルバの奴らとどちらが悪と言えるのか……ええええと」


 そこまで叫んで魔法使いの爺さんが戸惑った。


 どうやら、私達兄妹の方がタチが悪いと見たようだ。


「まあ、落ち着け。あいつらの口ぶりだとお前もクルトルバの侵略の民だぞ? 」


 私がそう颯真に告げる。


「俺は違う。この産まれてきた国や異界でも弱い人間達の為に戦ってきたのだ」


「ならば、それで良かろう。別に侵略するとか私も発言してるが、奴らに侵略されない為だしな。まさか、綺麗ごとで全部助かるとは思ってないだろう。だからこそ、お前はいつだって問答無用で戦ってきたわけだし」


 そう私が淡々と話し続ける。


「私は父が転勤族で転校のエキスパートだ。その私が自分から戦争とか仕掛けたことは無いのは転校してから一緒にいたお前が一番知っているはずだ。常に私は攻撃受けたら倍返ししてるだけだしな」


「まあ、それは俺も変わらんな」


 私の言葉に兄が同意する。


「いや、貴方はお金の為にいろいろとやってましたよね」


「そうそう」


 兄の言葉に一真と優斗が突っ込んだ。


「「いや、お金は大事だよ」」


 それに私と兄がハモって答える。


「えええと……」


「別に身体を乗っ取ったりしてるわけでも無いし、少なくとも産まれてからずっと私も兄も変わらん。こんなクルクルパーとか言う話をいきなり言われても話半分だ。お前もそうだろう。だから、別に私はこの世界の人間に悪い事をしようとしてる訳でもない」


「だが、皇帝とやらとかに、向こうでお前たちの事を無茶苦茶酷く言われたぞ。そもそも、こないだもお前が暴言を吐いた結果だろう」


「そんなのいつもの私では無いか」


「……ああ、そうか……」


 颯真が腑に落ちたように深くうなずいた。


「いやいや、それで納得しちゃうんだ」


「まあ、いつものって言われたら、いつものだからなぁ」


 魔法使いの爺さんの驚きに一真に言われて黙る。


「わかった。とりあえず、理解した」


 そう颯真が殺意を収めた。


「えええええ? やらないんだ? なんだ、ちょっと残念だなぁ。僕はそれが見たかったのに……」


 東南アジアみたいな縦長ののっぺりとした仮面をつけた男……業が残念そうだ。


「いやいや、工面と唯一話ができるって言ってたのに、こちらの味方みたいなフリして、なんだ? こちらをだまし討ちするつもりだったのか? 」


「くくくく、話はできるけど、仲が良い訳じゃないしな」


 東南アジアみたいな縦長ののっぺりとした仮面をつけた男……業がクスクスと笑った。


「拘束」


「ブースター」


 私がそう淡々と容赦なくスキルの<拘束>を使用したら、兄もむかっとしたのか即座にブースターをかけた。


「ちょっと、えええええ? 」


 と東南アジアみたいな縦長ののっぺりとした仮面をつけた男……業は叫んだまま次々と膨大な輪のような光に包まれて……<拘束>の力を受けて固まっていく。

 

「仲が良い訳じゃないんだろ。じゃあ、しょうがないな。颯真をけしかけた時点で黄信号で、その言葉で赤信号で敵認定だ」


 私が爽やかに笑った。


「待って待って話し合いがあるんだ! 皇帝から話があるんだよ! 」


「知らん。かってモンゴルの侵攻を受けた執権北条時宗はモンゴルからの使者を片っ端から話も聞かずに斬ったと言う。最初は日本に対しての降伏勧告で途中から話し合いや和平の使者に変わっていたのに、とにかく話を一切聞かずに来た使者を片っ端から延々と斬り続けたそうな。その結果、クビライの命令に逆らうと殺されるのにも関わらずモンゴルの使者が行きたくないと言ってクビライに斬られたものもいる。そういう徹底的にやる日本人の血が私達には流れているのだ」


 私が優しく微笑んだ。


「なんじゃ、そりゃあぁぁぁ! 」


 東南アジアみたいな縦長ののっぺりとした仮面をつけた男……業が叫んだままカチンコチンに固まった。


「いやいや、良いのか? 話し合いは? 」


「聞く前に<拘束>をかけたから聞いてないと言う事で良いんじゃないか? 」


 慌てまくる魔法使いの爺さんに兄が平然と答えた。


「まあ、そうなるよね」


 一真とかはこちらの性格が分かったらしくて、置いてかれたコチンコチンに転がったカタストロフィさんをじっと見た。


「どちらにしろ、皇帝ですら<拘束>を解けなかったらしいのだ。ならば別に問題なかろう。面倒くさくなったら海にでも捨ててしまえばいい。深海なら、そう簡単に取りに行けないだろうし」


 私も平然と答える。


「容赦ねぇな」


 そう優斗も唖然としていた。


 それをじっと颯真が見ていた。


 それに私達が気が付いた。


「まあ、お帰り」


「お疲れさん」


 私と兄が颯真に微笑んだ。


「まあ、なんだ……」


「いろいろと気にするなんてらしくないぞ。まあ、たしかに、いろいろ工面だのクオカードなど言われたら私でも気になる事もあるから、お前のあの程度の敵意は親しい友人同士にもあるじゃれ合いの喧嘩みたいなものだ」


 私が颯真が私達に敵意を向けた事を少し気にしているらしくて、ちょっと困ったような顔をしているので、それで笑って答えた。


「お前でも気にすることあるんだ」


「マジかよ」


 それを聞いた一真と優斗が颯真でなくて私に突っ込んできた。


 なぜ、私の方の話を気にする?


 解せぬ。


「当たり前だろ? 私だって心はある。死んだはずの兄が生きているとしたら……」


「確かに兄の登場がどうなるのか気になるよな」


「そっちかい! 」


 魔法使いの爺さんが叫んだ。


 <拘束>が東南アジアみたいな縦長ののっぺりとした仮面をつけた男……業に完全にかかったのか、倒れていた信徒や市民の皆さんが起きた。


 いきなり信徒や市民の皆さんは気絶したので、倒れた時にけがをした人がいて、またヒーリングをかける手間がかかったので、むかついたから<拘束>をかけた東南アジアみたいな縦長ののっぺりとした仮面をつけた男……業を蹴りながら大聖聖女如来の御堂に放り込んだ。

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