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自称勇者 第十部 第三章

「確かに我が皇帝たる兄が悪いのも分かるが、お前たちが、ここまで物分かりが悪いとこちらとしても困るのだがな」


 そのオッドアイの自称皇弟の青年はため息をついた。


「物分かりも何も、こんな地方の中小企業の転勤族の家族にそんな王族を降ろす訳がないだろうが」


「だから、わが兄の皇帝がお前たちが大嫌いでいろいろやったと話しているだろ? 田舎の方に飛ばして三人兄妹になる家がちょうどそこだったんだろう」


「つまり、少子化が悪いと言う事か」


「むう、この国の政策のミスがこんなところに……」


 オッドアイの自称皇弟の青年が納得できることを話すので思わず頷いてしまう。 


「大体、あの女神はお前たちに必死にチョッカイをだしているが、本当は自分に協力させる為に寝返らせたかっただけだぞ。現皇帝たる兄にクオの中では一番敵対していて位置的に皇帝の座に最も近いのがクオの中でクメンを継ぐお前たち兄妹だ」


「いや、クオとクメンとか知らんが、私は女神に聖女として指定されているからな」


 そう私が言い返す。


「いや、指定しただけだ。クオに加護を与えれるものなどあり得ない。クオはあらゆるもの中で最強の精神体だ。よその神ごときにどうのこうのできるものではない。おそらく自覚はあるはずだが、お前のスキルも能力も全部お前自身が選択して創造して作りだして、元々ある自分の本来の力でやっているだけだ」


「「おっ! 」」


 オッドアイの自称皇弟の青年の言葉に私と兄が声に詰まる。


 確かに兄は勝手に職業を変えていた。


 私は変なスキルが多すぎる。


 ゲロにしろ鼻血にしろ下痢にしろ、嫌いな奴に私がやってやりたいことでしかない。


「えええ? 」


 兄がちょっと動揺していた。


 自分の力があまりにも好き勝手に出来たので、心の奥底でおかしいと思っていたのだろう。


「あれれれれ? 女神の件で嫌な事を思い出したぞ? 」


 そう、兄が呟いた。


「ほう、聞きたいものだな? 」


「言いません」


 オッドアイの自称皇弟の青年の疑問に即答だった。


 だが、まずい。


 この場合だと、兄には恐らく、このオッドアイの自称皇弟の青年の話の心当たりがあるのだろう。


 そうでないと、あの即答の返事はしないはず。


 何という事だ。


 私達はこの世界のものでは無かったと言う事か?

 

 しかも、私は王族の一人でそれを統べる王族からの皇帝がいるなら、ポジション的に王の下の王族として公爵家の娘みたいなものか……。


 とすると……。


 私が震えた。


 ま、まさか……。


「ほほう。どうやら妹の方は自分が何者なのか理解したようだな」


 そう勝ち誇ったようにオッドアイの自称皇弟の青年は私を見た。


 普段の私なら、そこでそんなことありませんとか断言して否定するのだが、今日は違った。


 黙ってしまったままである。


「おいおい」


 それで一真達が不安気にこちらを見た。


「私のずっと夢だった……あれになってしまったと言う事か……」


 私が震える。


「夢だった……ってなんだ? 」

 

 オッドアイの自称皇弟の青年はじろりとこちらを見た。


 ちょっと訝し気な雰囲気だ。


「王家から皇家が出来て皇帝が選ばれる。つまり、私は王から選ばれた皇帝が支配する国なら王族だが、皇帝を王としてみて王が統治する国ならば、ポジション的に王族である公爵家とかの娘と言う事になる……」


「だから? 」


 少しイライラした感じでオッドアイの自称皇弟の青年は私を見た。


「私は……悪役令嬢になってしまったぁぁぁ! 」


 私が思いのたけを叫んだ。


 何という驚き。


「そ、それが……ゆ、夢なのか? 」


「悪役令嬢だろ? 」


 一真と優斗がドン引きしている。


「高貴な身分で嫌いな奴を苛め抜く。素晴らしいではないか。中小企業の転勤族で常にいじめられそうな立場を必死に回避していた私からしたら夢の話だ」


「最後、処刑だぞ? 」


「悪役令嬢は追放か処刑だろ? 」


 一真と優斗が冷ややかに突っ込んだ。


「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ、違うな。この場合、私は皇帝からいろいろ邪魔されるほど憎まれている。だから転生した時にいろいろされたのだ。つまり一度は死んだと見ていい。だから今度は聖女として生まれ変わったのだ。そう考えると、『聖女に生まれ変わった悪役令嬢が、今度は上手くやります』こんな感じだな」


「はあ? 」


 私の言葉にオッドアイの自称皇弟の青年は固まっていた。


「じゃあ、俺も『最悪の王だった俺が転生してチート能力で未来を変えます』みたいな感じかな? 」


 兄も輝いた表情で呟いた。

 

「なんだ、それは? 」


「この世界では流行っている奴だ。つまり、私は今世界の中心にいる」


 私が困惑しているオッドアイの自称皇弟の青年にそう胸を張った。


「『聖女に生まれ変わった悪役令嬢は非道を尽くします』では? 」


「『聖女に生まれ変わった悪役令嬢は世界を灰にします』では? 」


 一真と優斗があきれ果てたように突っ込んできた。


「お前、非道しかしてないじゃん」


 魔法使いの爺さんまで酷い突込みだ。


「それはきっと、私に流れるクオとか言う禍々しい悪魔の血がさせているのね」


「うんうん」


 私の言葉に兄が深くうなずいた。


「何? 我らを悪魔などと雑魚のように馬鹿にするのか? クオの血を濃く引く貴様らクメンの者がかっ! 」


 いきなりオッドアイの自称皇弟の青年がブチ切れた。


「侵略して人の身体を奪い、滅ぼしてきているのなら、そりゃ、駄目でしょ」


「貴様もクオのものだろうがっ! クルトルバの民の王族だろうがっ! 」


「いや、知らんがな」


「記憶に無いしな」


「ちっ! やはり厄介なことになった! つまり貴様らは我らが兄の皇帝とクオとクルトルバの全てを敵に回すと言うのだな! 」


 凄まじい殺気をオッドアイの自称皇弟の青年がほとばしらせた。


「「いや、互いに関わらない方向で」」


 私と兄がすんという感じで冷静にハモリながら話す。


「我々を馬鹿にしたではないかっ! 」


「「それはすまん。だけど互いに不可侵で良かろう」」


 私と兄がハモリながら微笑んだ。


「転生してもこれかぁぁぁぁぁ! いらっとするわぁぁぁ! 」


「まあ、落ち着き給え。ちょうど、この我らがすむ島国の日本は我らの領土と言う事でどうかな? 」


 私が仕方なく話す。


「もう、日本は領土なんだ」


「やべぇな。侵略者は否定してない」


 一真と優斗がドン引きした。


「仲良くやろうではないか」


 兄がそう微笑んだ。


 だが、オッドアイの自称皇弟の青年は憎悪を込めた目でこちらを黙って見ていた。



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