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自称勇者 第十部 第二章

「やあ。そろそろ挨拶くらいはした方がいいかなと思ってね」


 大聖寺の大聖聖女如来の御堂の入り口に立っている青年が笑った。


 銀髪に緑と碧い目のオッドアイの男だ。


 非常に美男子である。


 しかも、身長も185センチくらいある。


 白人系の顔だが、日本語をネイティブ並みに話していた。


 それで冷ややかに笑っている。


 だが、ここは日本のお寺である。


 ちょっと場違いに感じるのは勘違いではないはずだ。


「すいません。今日はここは公開していないんですよ」


 そう一真がすまなさそうに頭を下げた。

 

 ナイス勘違い。


 観光寺でもあるから、拝観に来たお客さんだと思ってるらしい。


 どうやら、魔法使いの爺さんあたりは気が付いているようだが、この異様な迫力が分からないとは。


 それは優斗も同じようだ。


 こいつら、まさかの雑魚なのか? 


 そういや、最初から仲間じゃなくて私が強引にパーティーメンバーにしただけだったな。


 だが、ここで、兄が動いた。


「今日はここは関係者だけなので」

 

 そう言うと、頭を下げながら先に御堂の扉をぴしゃりと閉めた。


 素晴らしい。


 一真の真面目なボケに同調して一気に相手の気持ちを断ちに行くとは。


 流石、空手の爺ちゃん先生が警察だけでなくヤクザとも関係が深かっただけはある。


 ヤクザの交渉術、掛けあいである。


 つまんないことだけは学んでくる兄だけはある。


 例えば、実際にあった話だそうだが、抗争になりそうな組同士の話し合いに向こうのそれなりの地位のものに会いに行く。


 そして、最初にしたのがつまんない地元の名産のお菓子を手土産として渡すのである。


 相手としたら受け取るしかない。


 そして、そこで待つわけだ。


 相手が手土産を同じように出すのを。


 そして出さなかった場合には罵る。


「あ? 会うんなら普通に最初に手土産くらいは持ってくるだろう? あんた舐めてんの? 礼儀とか常識を知らんのな? 」


 これで少し負い目などが向こうに出来る。

 

 そうでなくても、相手に対して一つ上手に出れる材料ができる。


 つまんない事だが相手が手土産を用意してて、こちらが出せないと言うのはくだらないと思いつつも筋を大事にするやくざとしては心に引っかかる話である。


 そんなつまんないことから、相手の心理を突いていくわけである。


「いや……そんなの意味あんのか? そもそも、この流れだと会って話するのでは? 」


 などと心が読める魔法使いの爺さんが苦言を私と兄に呈してきた。


「いや、あいつは多分……」


 颯真も同意見らしくて、何か言いたそうに話しかけてきた。


「いや、そこは断る」


「その通り」


 私の強い断言に、兄が同意した。


 面倒事はごめんだ。


 その強い意志がとれた。


 そして、外から微妙に押し殺した気配がする。


 殺気だ。


 少しキレているようだ。


「まさか! 挨拶に来て、人の寺の御堂の扉を破壊して入ってきたりはしないだろうな! 挨拶だもんなぁぁ! 」


 兄がそう畳みかけるように叫んだ。


 さっきのヤクザの掛けあいの応用だ。


 異世界の異様な怪物には訳が分からないだろうが、相手の心に牽制の意味はある。


「流石だ! 」


 私が親指を立てると兄もニッと笑って親指を立てた。


「え? 何かまずい奴なの? 」


「え? 」


 一真と優斗だけが遅れたタイミングで焦っていた。


 残念、やはり雑魚決定である。


 私と兄と颯真と魔法使いの爺さんは相当ヤバい奴と理解していたのに。


「いや、待てやっ! 」


 そう結局扉を破壊して、その青年は入ってきた。


 一陣の風とともに入ってきた。

 

 どうやら、風を操るようだ。


「貴様っ! 挨拶でこんな無礼を働く気か? こちらは何もしてないんだぞ? 」


 そう兄が怒鳴る。


 掛けあいは続いているのだ。


「いや、そこに私の部下がいるだろう? 」


 そう布団に横たわったカチコチに固まったカタストロフィさんを指さした。


「いや、最初に攻撃を受けたのはこちらだぞ?  」


 私がそう声を荒げた。


「謝罪と賠償を要求する」


 兄が必殺のセリフを吐く。


 なぜこれが必殺のセリフなのか私にはいまだに良く分からないが。


「充分お前らだって無茶苦茶しただろう。こちらの部下の魔法使いは死んでるんだ! 」


 冷静にオッドアイの青年は切り返してきた。


「いや、斬ったのこいつだから」


 私がカタストロフィさんを指差してて微笑んだ。


「相変わらず性格が変わらぬな」


 するとオッドアイの青年は私と兄を見て深い深いため息をついた。


「何が? 」


「会った事はないはずだぞ? 」


 私と兄がそう答える。


「我らはクルトルバの民である。精神体としてあらゆる世界に出入りして、異界の肉体を奪い乗っ取る民族である。7つの王家からなり、その中で中心となるべき皇帝が選ばれて他の王家はそれに従う。お前らはその7王家と呼ばれるクオのものである」


 などといきなり、オッドアイの青年が凄い事を話し始める。


 電波ゆんゆんだ。


 こいつは危ない奴だ。


 そう兄が口パクで知らせてきた。


 いや、見ればわかるのだが。


「なるほど、厨二の親分なだけはあるわけだな」


 私がそう答えると颯真がはっとしたように深く頷いて納得した。


 カタストロフィさんも厨二だった。


「いやいや、わざわざ王族の7家たるクオのものだから皇弟である私が教えに来てやったのだが……」


「「はいはい」」


 私と兄が同時に微笑みながら頷いた。


「本気でむかつくわぁ! 皇帝になろうと兄妹で画策するだけならともかく、ろくでもない事ばかりしやがって! お前らクオの一族の一つ最悪と呼ばれるクメンの兄妹だけは始末に負えない! 皇帝である兄があまりに邪魔に思って、此度のクルトルバの旅に記憶が残らぬように余計なことをしたばかりにもっと訳が分からなくなってしまったわ! 」


 そうオッドアイの青年が地団駄を踏むように憤った。


「本当にこいつら王族なのか? 」


「貴様も皇帝直属のクタマ使いなのだがな! そして、そこなる戦士は皇帝直属のヒガバリの最強の戦士だ! 」


 魔法使いの爺さんの恐る恐ると聞いたら、そうオッドアイの自称皇弟の青年は叫んだ。


 勿論、クタマ使いは魔法使いの爺さんでヒガバリの最強の戦士は颯真の事らしい。


「いやいや、それなら、俺たちは? 」


「まさか、俺たちも? 」


 一真と優斗がちょっとドキドキした感じであらぬ希望をもってる感じで聞いた。


「ヒガバリの隅っこにいた奴だろ。よく知らんが……」


 凄い適当に言われたので、一真と優斗が落ち込んだ。


 雑魚決定と言うところか。


 切ない。


 「まあ、厨二のたわごとだが」


 そう私が失笑した。


 そしたら、兄も苦笑して頷いていた。


 そしたら、オッドアイの自称皇弟の青年がイライラとした目でこちらを睨んでいた。


 短気な奴め。

 

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