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自称勇者 第十部 第一章

 大聖寺のいつもの大聖聖女如来の御堂でカタストロフィさんを急いで敷いた布団に寝かせた。


 カチンコチンである。


「どうしょうもないな」


 一真が呻く。


「こんな魔法は聞いたことが無いんだがな……」


 などと魔法使いの爺さんが呟いた。


 コーン! コーン! 


「凄いな。矢を跳ね返したから、もしやと思えば、金づちで強くたたいても壊れない」


 兄が感心しながら、金づちで本気でたたき続けていた。


「いやいや、それはどうなの? 」


「普通、まず、皆に先に叩いてみようかって確認して言うよね? いきなり金づちで叩いたりしないよね? 」


「まあ、最初に矢の盾にしてたからな……」


 一真と優斗と魔法使いの爺さんがドン引きしていた。


「釘なら刺さるんじゃない? 」


 大聖聖女如来の御堂から大工道具の箱を引っ張り出してきた兄に私が五寸釘を見つけて、兄に渡してみた。


「なるほどな」


 などと兄が釘をカタストロフィさんに金づちで叩いて入れようとしたら、一真と優斗が止めた。


「いくらなんでも! これは試しじゃないじゃないですかっ! 単なる実験ですよっ! 」


「いや、普通、釘を持ってくるか? 」


 一真の叫びの後に、優斗が私を見て睨む。


「矢を跳ね返すんだから、釘くらい跳ね返すだろう」


「いや、分かってんだったら、やらんでいいじゃろに」


 魔法使いの爺さんもさらに突っ込んできた。


「なんでも実験と検証は必要だろ。多分そうだではいけないんだ」


 そう兄が真顔で皆を見回した。


「……確かに」


「まあ、そうかもしれないけど」


コーン! コーン!


「いやいや、大翔さんっ! 」


「本当にやりますか? 」


 一真と優斗が叫んだ。


 兄は何を今さらと言う感じだ。


「確かにな。日本には実験と検証を繰り返したことによる技術がある。例えば家電とかすぐにマネできてしまう軽電という分野に対して、発電機とか製造機械とか重電という分野は非常に研究と検証の蓄積と金がかかる。実はこの重電というのが日本の凄さで……。この技術はアメリカと日本とドイツくらいしかない。かってフランスの原発メーカーの中核の中身の大半が日本製である事を知った当時のフランスの大統領のサルコジが全部フランス製にしろと命令したら、フランスの原発メーカーの重役は『ならば、20年の歳月と差し当たり200兆円のお金をください。そして、それでも先行してる日本は抜けないでしょうけど』と言って当時のサルコジ大統領を黙らせたという逸話がある」


 そう私が説明した。


 兄はコクコクと頷いていたが、これはこの話を知らなかったなと見てて思った。


「敵を助けたいとか言って助けたのはいいが、拘束をかけたら固まったから、それがどれくらいかカチコチなのか金づちで叩いたり釘を刺そうとしたりして調べるのが、お前の技術の実験と検証の話と何の関係があるのだ? すでに矢を跳ね返しているだろ? 」


 魔法使いの爺さんがもはや、説教に近いレベルで話す。


「いろんな検証を繰り返してこその、自らのスキルに対しての理解になる」


「いやいや、お前、凄い変なスキル持ってたよな。幻覚とか下痢とか鼻血とか」


「ゲロもあるんだ、これが……」


 私がそう答えて俯いた。


 流石に少し恥ずかしい。


「聖女にゲロって……」


「やばい系の聖女みたいじゃないか」


 一真と優斗が呆れる。


「女神がおかしいんだろうな」


「いや、おかしいのは間違いないが、全部お前のせいじゃないのか? 」


 魔法使いの爺さんが凄く嫌味ったらしい。


 それで私がムッとして睨んだ。


「ずっと黙っているんだな? どうした? 」


 兄がいきなり横でずっと黙っている颯真に聞いた。


「いや、妙な気配だ。遠くから見ている。ただ、この気配に覚えがあるような気はするのだが……」


 颯真がまた質の悪い話を始めた。


「おいおい、魔法使いさんがそういうのは最初に感じるんじゃないのか? 」


 私がさっきの嫌味のかわりに嫌味を魔法使いの爺さんに言い返した。


「大聖寺に来る前から気配はあるよ。どうも、見張られている感じだな」


「いや、なら言えよ! 」


「本当だ! 家がばれてしまうじゃないかっ! 」


 私と一真が叫んだ。


「ばれてるよ。女神の変な夢の前から寺の周囲に異様な気配はある。ずっと見ている。ただ、こちらから使い魔に追跡させてもどこにもいないんだ。刺激したくないから深追いさせないがな」


 魔法使いの爺さんがそう答える。


「使い魔? 使い魔なんているのか? 」


「契約のような形でするから、向こうでは下級のモンスターとしていたがな。こっちではこれだ」


 などと衣服からハツカネズミを出した。


 実験用でなく、家にいて駆除される灰色の方だった。


「いやいや、猫とかにしたらよかったのでは? 」


「勝手によその家とか入れんだろ、猫だと。こっちのが都合がいいんだ」


 実はネズミは壁を登れるし、数センチの建物の外気口などの隙間があれば入ることが出来る。


「ネズミが契約してくれるのか。するとネズミとかいろいろと操れるのか? 」


「まあ、やろうと思えばな……」


「ほほう」


「あ、ネズミの駆除に使おうとか思ってるな? 」


「わかるか」


「結局、金かよ」


 魔法使いの爺さんが呆れたように突っ込んだ。


「金は大事だろ。結局、金が無いと何もできないからな」


 兄がガンとして言い張った。


「まあ、なんだかんだで先立つものが金だし」


 私が仕方なく兄のフォローをした。


「そんなに金が無くて困ってるのか? 」


「いや、ただ何となく、そういうのを見つけるのが面白くて……」


「なんじゃ、そりゃ」


 魔法使いの爺さんが突っ込んだ。


「ああ、なんとなく分かる。結果が問題と言うより過程が楽しかったり、そういうのを夢想するのが面白いって奴だな。事業欲みたいなもんか」


「まあ、実際にやったら失敗するだろうけどな」


「現実は厳しいからな」


 私が兄の言葉に納得した。


「兄妹で何の話なんだか」


「まだ若いのに、何か夢がおかしいな」

 

 魔法使いの爺さんが偉そうに話す。


「いや、若いんだから、可能性だけはあるから。というか、それしか無いけどな」


「現実は可能性があるだけだがな」


「なんなんだ? この兄妹」


 魔法使いの爺さんが呆れた顔で突っ込んだ。


「何を今さら」


 一真と優斗が突っ込んだ。


 その瞬間に颯真が凄い顔で大聖聖女如来の御堂の入り口を見た。


 私と兄も気が付いた。


 誰かいるのだ。



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