自称勇者 第九部 第七章
「嘘だろぅぅぅ! 」
颯真でなくカタストロフィさんが絶叫をあげた。
まさかのスピードで私が即応したからである。
ウェイトは無いので技の威力は無いが、私の動きは速い。
空手をずっとやっていたせいである。
そして、颯真もカタストロフィさんも身体のダメージから普通の武術をやっている人間の速度に変わっていたから対応できたのだ。
だからスパッと斬れちゃった……洗脳して家で飼おうと思っていた猫ちゃん。
ちょっと三毛猫に似ていた。
君との思い出は忘れないよ。
私は、カタストロフィさんのスピードに合わせて、盾にして持っていた猫さんをぶつけるように投げつけていた。
まだ、猫さん自身がバリアを張っていた為だ。
そのせいで、カマキリの鎌のような独特の剣で猫さんの最後のバリアは砕けて消えた。
カマキリは内側のみだが、それは外側にも刃がついていた。
それで外側は斬れるのだ。
<忘却の剣>で斬ったのだから、大丈夫、カタストロフィさんにもこの事は忘れれるよ。
ありがとう猫さん。
でも、カタストロフィさんも<忘却の剣>を持ってるから忘れれないのかな?
まあ、いいや。
流石、カマキリの鎌のような変則的な剣だとは言え、腐っても<忘却の剣>の一振りである。
猫さんのバリアは砕けて、あっさり猫さんは両断されていた。
「仲間に殺されるとは……」
私がそのシーンを見て悲しい顔で呟いた。
「いやいや、お前ぇぇぇぇぇぇっ! 」
カタストロフィさんが叫んだ。
そうして、それが隙になった。
残念ながら颯真は仲間を間違えて殺してしまった事でショックを受けている敵に配慮するような男ではない。
ボロボロの身体で剣を横から真一文字に切り込んだ。
そういや、カタストロフィさんの身体は生徒会長だったな。
まあ、<忘却の剣>だ。
きっと皆、忘れてしまうだろう。
と私が一瞬で自分で自分を納得させた瞬間に、信じがたい動きをして、その横からの颯真の必殺の攻撃をカマキリの鎌のような剣で受けた。
双剣だから出来た反応だろう。
大したものだ。
そのまま外の体育館の前の駐車場の車に弾き飛ばされて直撃したカタストロフィは倒れた。
だが、動いている。
私は手を合わせた。
彼女の冥福の為にであった。
あの小鬼たちが腹を空かせていたようで、まだ動いているカタストロフィさんを襲った。
猫も貪るように食べていた。
「糞がっ! いつも私もお前たちに餌をやっているだろうがっ! 」
そう叫びながら、なんとカタストロフィさんがカマキリの鎌のような剣で小鬼たちを斬り捨てていた。
カタストロフィさんについていた一部の小鬼も味方して守っているようだ。
「だが、時間の問題だな」
私は驚いて手を合したのをやめてしまった手を再度合わせる。
お手手とお手手を合わせてしあわせ。
な~む~である。
カタストロフィさんが戦い続けているが、小鬼に飲まれていく。
だが、そこを助けたものがいる。
なんと兄であった。
「食うなっ! 」
兄が一喝すると、恐ろしい事に小鬼たちが逃げ出した。
それには正直驚いたが、血まみれのカタストロフィさんを兄が抱いてこちらに来る。
「助けるのか? 」
私が驚いて聞いた。
「まだ利用価値はある」
兄がにやりと笑った。
そういう事ならと私もそれ以上は言わなかった。
「まあ、あんたがそう言うなら構わんぞ」
そうボロボロの颯真が苦笑した。
颯真もやはりこっち側の人間らしい。
「いや、引くわっ! 」
「マジで引くわっ! 」
見たら一真と優斗と魔法使いの爺さんも兄と一緒にいた。
それで、私達の行動と言葉と態度をドン引きしていた。
魔法使いの爺さんは何も言わなかったが、凄い目で私を見ていた。
いやいや、魔法で攻撃したのはお前だろうに。
「それはすまなかったが、ちょっと、引くわ。向こうの聖女の中でも本気で筆頭になりそうな所業だな」
人の心がいつものように読めるので、魔法使いの爺さんに酷い感想を言われた。
「さて、俺は空手家をやめる」
いきなり兄がそう告げた。
「どうしたのだ? 」
「私が不思議そうに聞いた」
「もはや、ここまでやってしまってはどうにもならん。最初の予定通りになるが前倒しで対策をする。俺はブースターになる」
そう兄が断言した。
「空手家からブースターに変わってるぞ? 」
颯真がすぐにフォログラフィみたいなので兄の状況を確認した。
「いいか、こないだ話した通りに、対策をする。前倒しだ。今の日葵の使える教化で最高で最大のものを使え。できればこの市全体までやるつもりでしろ。俺がブースターで増強する」
兄がそう話す。
「わかった」
それは私も兄の言う隠蔽策として予想出来ていたので即座に了解した。
「できる限り届く範囲、出来れば市の全ての人間をお前の信奉者にしろ。お前の言う事を聞くようにするんだ。それと体育館は解体予定で解体されたと一緒に教化で洗脳した後に頭に叩き込ませろ」
私がうなずいた。
「いやいや、そこまでする? 」
「女神の『やっちゃった』もこれで終わりじゃない。もう本格的な隠ぺい策をするべきだ。誰もを仲間にしてしまえば問題など全部消せる。急げ、生徒たちの目も元に戻ってきたみたいだ」
兄がそう優斗の突っ込みを言い返した。
確かに、生徒たちが目をこすりながら見えてきたみたいで騒いでいた。
「仕方ない。どうしょうもないし」
一真がそう、あたりの惨状を見まわして呟いた。
「じゃあ、行くぞ。すべてを信奉者にしていく。できれば市の全部が信奉者になるように限界突破の教化をっ! 」
私が叫んだ。
「その力を俺の力で全力で増幅する! ブースターとしてっ! 」
兄も横で叫んだ。
そのおかげで、一気に市に教化の力が拡がって行く。
その力が行き届いたところで、私がもう一つ叫んだ。
「体育館は解体予定で解体されたぁぁぁぁ! 事故で壊れて倉吉先輩が巻き込まれたぁぁぁ! 」
まあ破壊の後を見れば違うのはわかるのだが、教化の力でそれで押し通すしかない。
もはや、インチキで塗り固めるのだ。
生徒たちの驚きの顔が別に移る。
「倉吉先輩がっ! 」
「解体に巻き込まれるなんて……」
そう生徒たちが騒いでいた。
一真と優斗と魔法使いの爺さんは複雑そうな顔でそれを見ていた。
こうして、表向きは普通だが、殺人すら隠蔽される恐怖の市にここは変わっていくのであった。
「やれやれ」
そう私がため息をつくと魔法使いの爺さんがじっと見ていて呟いた。
「お前、あんまり良い死に方しねぇぞ? 」
余計なお世話である。




