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自称勇者 第九部 第六章

 カタストロフィさんが倉吉先輩の姿のままで剣を出した。


 双剣だ。


 だが、それはカマキリの鎌のように見える異様な刃だった。


 カマキリと違うのは前側も刃になっていた。


 そして、黒光りで異様なのは颯真の剣と変わらない。


 3つのサッカーボールの重ねた上でそういう事をできるという事は達人なのだろうが、何でサッカーボールを重ねて乗っているのか? 


 その理由が良く訳が分からない。


「お前が戦うと言うのか? 」


 そうカタストロフィさんが薄笑いを浮かべた。


 普通なら怖いのだろうが、厨二だと分かってしまったので、異様な変態を見ている気にさせられる。


 だが、それよりも早く颯真が動いた。


 神速だった。


 凄い金属音がする。


 サッカーボールを崩さずにそれをカタストロフィさんが自分の<忘却の剣>で受け止めていた。


「待て待て、倉吉先輩がぁぁぁ! 」


「諦めろ! 殺気が本気だ! 」


「やっと、敵となれたな! 待っていたんだ! 」


 そう叫ぶとゆらりとカタストロフィさんが動く。


 それは人間の動きではない。


 異様な歪みを感じさせる動きだ。


 颯真が何か信じがたい動きを私の前で始めた。

 

 最初は何かわからなかったが、体育館の壁が切り裂かれて、バレーボールのゴールが落下する。


 どうやら、私に対して致死レベルの攻撃をカタストロフィさんがしているのを颯真が防いでるらしい。


 それの余波で体育館が切り刻まれていた。


「なんだ、今の音は? 」


「凄い音がしたぞ? 」


 などと体育館の外から声が聞こえる。


 さっき一か所だけ開いていた扉を閉めたので、中で何が起こっているのかわからないようだ。


「お前っ! 次の勇者の部隊じゃないのか? 」


 私が叫ぶ。


「裏切りものはいらんよ」


 そう何かが体育館のステージの上で答えた。


 見たら体育館のステージに猫がいた。


 その猫が喋っていた。


「何で? 猫っ? 」


 私が叫ぶ。


「向こうの世界から戻ってくるときに、元の身体に戻れない場合は位相が違うので、本来の我々に心が戻るのだ」


「猫に? 」


「だから! 猫に転移したんだってばっ! 元は人間としての身体に異界から顕現したのだがな。正確に言うと赤ちゃんの時に人間の肉体を奪うわけだ」


 そう猫が説明してくれる。


「親切だな……」


「話さないと理解できないからだろうが……我らの王族を始末するのだ。礼儀は尽くすものだろう」


「また、それか? 」


 私が顔を歪ませた。


「テレパシーでお前たちの状況を聞いていたが、あの女神め! 無茶苦茶しやがる! 」


「いや、まあ、適当に転移させたんだろうな、今回も」


「いや、そちらではない。我らの王族を我らを殺すために加護を与えて洗脳するとは……」


「知らんがな」


 私がその話はどうでもいいので突っ込んだ。


「お前らの元の世界への転移を適当にやって、結果として位相がずれて『やっちゃった』って焦って俺たちの夢枕に現れたんだろうな」


「そっちの話はしてないんだがな」


 颯真の話に猫がそう呆れたように首を傾げた。


「ううううむ。猫も可愛いな」


「いや、前で凄まじい戦いが起こっているのに、全然動揺しないのだな。流石は王族だ」


 などと言うから、わざと見ないようにしていた颯真とカタストロフィさんの戦いを見た。


 二人の戦いの余波で壁がグサグサになって壊れかかっている。


「ああ……」


 私が呆然とした。


「まあ、あちらでも勇者として最高クラスの技量であり、我らの最強と呼ばれた戦士のうちの二人が戦っているのだ。当たり前だ。流石にその強さは動揺するか? 」


 私の困惑した顔で猫が勝ち誇ったように話す。


「いや、これ体育館の弁償なのかな? 誤魔化しが効かないじゃん」


 私が絶望的な顔で呟いた。


 壁は剣の威力で付き抜かれて一部崩壊して、その向こうで生徒たちが何が起こっているのかと見ていた。


 もう、これを誤魔化せるラインをあっさりと越えてしまっていた。


「いや、そっちかよ」


 猫が呟いた。


「猫がしゃべってる! 」


「勇者が剣を振るってるぞ! 」


 崩れた壁の向こうで見ていた生徒が呟いた。


 駄目だ。


 仕方あるまい。


「猫も家で飼うか」


 私が呟きながら、クラスの上昇によってさらにレベルが上がった教化を使う。


 限界突破教化などと、スキル名は多分、あの女神が考えているんだろうなと思うくらいダサかったが……。


「いや、無理だろうな」


 そう猫が言うと、何かの盾のようなものを次々と並べて自分を守るように自分の目の前に生み出していた。


「教化をそんなもので守れるという事か? 」


「違うよ。あの馬鹿は攻撃力は高いが詠唱が長すぎるのだ。もっとコンパクトに最適な攻撃を繰り返す方が戦いには向いているのにな」


 そう猫が苦笑した。


 それで即座に理解した。


 そう、あの魔法使いの爺さんが間違いなく、この猫を狙って魔法を放とうとしているのだ。


 その猫の興味が外にいるらしい魔法使いの爺さんに移った瞬間に私はジャンプすることで、その猫の背後に移動した。


 つまり、猫が作った並べた盾の中に入ったのだ。


「なっ! 」


 猫が驚くと同時に、真っ白な閃光が走る。


 あの魔法使いの爺さんらしい、全く躊躇しない一撃が体育館の中にいる猫に与えられる。


 猫を守る盾が次々と破壊されてるのを見て、とっさに私は再度動いていた。


 爆発の閃光で真っ白にあたりがなった。


 それが終わると、体育館がほぼ消えていた。


 見事にたくさんの盾は魔法使いの爺さんの渾身の攻撃で砕かれていた。


 危なかった。


 まずいと思って、とっさに私は猫をさらに盾にしたのだ。


 あの猫の口ぶりで自分に対する最悪の時の防御を考えていないわけがない。


 私の勘は当たった。


「猫の盾だ」


 そう私が胸を張った。

 

 猫はボロボロになって、やはり生きていた。


 この猫の盾が無ければ私も危なかっただろう。


 グッジョブ、私。

  

 そして、どうせ馬鹿火力で魔法使いの爺さんが何か打ち込んでくるのを察した私は目を閉じていたのだ。


 だから、目を開けるだけで動けた。


 外から、それを見ていた生徒たちは目をやられたようで目を抑えてうずくまっていた。

 

 それで、ボロボロになった猫を今のうちに捨てれば、この鬼畜の所業は見られずに済むのだ。


 などと思っていたら、まさかの私への攻撃があった。


 なんと、颯真とカタストロフィさんは魔法使いの爺さんの攻撃を受けながら戦っいたらしい。


 信じられない頑強さだ。


 だが、さすがに双方ともボロボロの血まみれで速度は落ちていた。

 

 そして、その一撃は颯真よりもこちらに来た。


 猫を盾にしたのを怒ったのか、それとも私が掴んでいる猫を助けようとしたのかはわからない。


 ボロボロのせいか、その動きは見えないわけでなく、どちらも普通の武道家の人間並みの動きになっていた。


 まあ、身体が一部削れてるから、それで前のように見えない速さで動けるわけないのだ。

 

 そのカタストロフィさんの必殺の一撃が私を襲う。


 ごめんなさい猫ちゃん。


 家で飼いたかったな。

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