自称勇者 第九部 第三章
「で、話を元に戻すが、それからどうなったんだ? 」
そう、私が一真に聞いた。
「あ、皆に恋愛相手がいない話か? 」
「いや、違う違う。人面犬がいるとか言う不動産の魔物か怪物を始末したんだろ?
誰かが……」
「あ、ああ。言われた後に一度大翔さんと下見に行ったんだ。元は墓地とか言う大きな廃屋のある不動産で、昔殺人事件があったとかで」
「元墓地に不動産を建てるのか? 」
「いや意外とあるらしい。なんでも安いかららしいんだが、結構、元墓地とか実は江戸時代に処刑場だったとか、そういうのが公共の例えば小学校を建てる土地になってるとかはあるらしいんだ」
「いや、そういうのって与太が多いとは言うけどな。学校の七不思議とかに関係してたりするだろ? 」
などと兄がまた良く分からない知見を一真に話す。
本人が昔の転校した時にいた中学校とやらの元処刑地でって話に興味を持って調べた話を自慢げに話していた。
空手の爺ちゃん先生の友人の郷土史家の爺さんに聞いた結果らしい。
兄は結構、底が浅いのだ。
「まあ、でも、多分、ここは本当だと思いますよ。実際に前にうちの寺の記録にそこの土地の墓地を移動して潰した後の供養した記録がありますし」
「いやいや、待て待て、それならお前んとこの寺の供養不足なんじゃないのか? 」
「それはどうかな? それで地区自治会館を建てて何も起こらなかったらしいから。それで、殺人事件が起きてからだよ。まあ、噂話だと小型犬を連れた女性が刺されて殺されて、その連れていた小型犬が行方不明で、殺された女性の犯人を捜してうろついているとかいう話で……」
「……それは立派な話ではないか」
「うううむ。飼い犬の誉れだな」
「いや、人面犬で顔はその女性らしいんだが……」
「なんだ、それ? 」
「それで次々と犬みたいなものに襲われて死ぬって言う不審な事件が起きて、地区自治会館も立ち入り禁止になってたんだけど、肝試しとかで使われて不審火で燃えてって話だよ。だから、逆に魔物とか怪物とかの話に関係してそうだからって檀信徒さんの話だったんだ。その人は古い檀信徒さんで、ある程度の女神の話は知ってる人でさ」
「うううむ。確かにちょっと臭いな」
大体、そんなのしか暴れてないし……。
「それで、俺と大翔さんが今日の朝早くに、魔法使いの爺さんも連れて、もう一度下調べに行ったら前にあった変な気配と確かにいた人面犬らしき奴が完全に消えてた。それで魔法使いの爺さんに調べて貰ったんだが、誰かが倒したみたいだって言いだしてな。ついでに、それに絡んで人間らしきものが数名が存在自体が消えているって話をされた」
一真が深刻そうな顔で呟いた。
だが、兄はあまり気にしてなかった。
「それで大事な話なのだが、仕方ないから、その報告を、頼んできた檀信徒さん話したらお礼を貰った」
そう兄が懐からちらっと封筒を出した。
なんと、封筒は横にしたまま立てて立った。
「おおおおおっ、謝礼なのかっ! 」
「ちょ! 話は貴方がするって確かに言ってたけど何を話したんですか? 」
一真が動揺したように話す。
「いや、いなくなりましたよって檀信徒さんに話をしたら黙ってくれた」
「くれたじゃないでしょう? 俺達は何もしてないんだし……」
「だがな。すごく檀信徒さんは喜んでいて、感謝が凄かったのだし。流石になぁ。それで断って返すと言うのも……」
そう兄が横に立っていた封筒をひっくり返した。
それでも謝礼は立っていた。
「札束が数冊入ってるという事か……。これは確かに凄い儲けだな……」
「何もしてないのに貰うのは駄目ですよ」
一真が生真面目に注意する。
「意外と真面目なのだな」
私が感心した。
「まあ、待ってくれ。ぶっちゃけた話。多分、異界から来た次の勇者か何かだと思う。特に<忘却の剣>を颯真君と同じように魔法使いの爺さんの話だと持っているような話だったしな」
「それで? 」
「このままほったらかしにするのはまずいだろ」
「いや、まあ、確かに新しく派遣された奴に、勝手にいろいろとやられるのは困りますよね」
一真もそれには同意した。
「だから、彼に良く倒してくれたと説明してこのお金で仲間になって貰えればと……」
兄がにやりと笑った。
「ああ、なるほど。勧誘と言うかパーティーメンバーに誘うのにそれを使いたいという事ですね」
一真はその話を良く理解できずに、ころっと騙されたようだ。
「いや、そいつも仲間のパーティーにしてしまえば、その金は皆でわけれるという事だと思うぞ」
私がズバリと兄の本音をついた。
まあ、仲間にして、パーティーメンバーにしてしまえば、皆の分け前という事で胸を張ってお金を受け取れると言いたいのだろう。
「まあ確かに黙って自分のものにしていた場合、後で発覚した時に問題になるだろうしな」
「とりあえず、依頼を受けたパーティーで戦えば向こうの世界では依頼料とか謝礼は皆で分けるものだと颯真君も話していた。だから、そいつも受け入れやすいだろうし、そいつも別にお金があって困る様な奴では無いだろう。そして、また次の仕事を受ければまた俺達にお礼が手に入るという事だ」
「何もしてないのに分け前を貰うんですね。そもそも、もはや聖女のビデオの話とかどうでも良いんですね。完全に魔物退治になってきたんですが……」
「いや、ビデオも続けるけど……」
兄はお金に関しては、がめついのだ。
まあ、分け前が入るというのは大きい。
私も分け前をもらえるから嬉しいし、とにかくお金は大事だよって事だ。
「でも、向こうの世界の出身とはいえ、平気でその怪物とか魔物関連で他の人を殺してしまう奴だと言うのは仲間にするのはリスクがありませんか? 」
一真が心配そうに聞いてきた。
「何をいまさら……」
「私達も殺してるし」
「いや、だから……どうなんだろうな! そもそも自分で自分の事をまともとか思ってます? 」
「「まともだよ」」
私と兄がハモって答えると、一真は黙ったままになった。




