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自称勇者 第九部 第一章

 あれからも優斗は随分と穂佳(ほのか)に仲間にするように言われてるようだが、颯真も安易に仲間をこれ以上増やすつもりはないらしくて、優斗が良いと言うならと言う上手い断り方をしていた。


 元々颯真は皆とパーティーを組めた時点で満足しているようで、それ以上増やすのはあまり考えているようでは無かった。


 問題は兄の方で、随分と一真の父の副住職から聖女のビデオの件をせっつかれているそうで、おかげで私のまわりをうろうろしていた。


 元々バイトだの言うのも言い訳で言い出しただけで、なるべく早く卒業したいと私は思っているから、あまり関わりたくないのが本音だ。


「ポチの散歩に行ってくるね」


 そう私が父と母に声をかけて家を出た。


 黒柴のポチと言っても、上級悪魔なんだが、すっかり柴犬になり切ってしまっている


 母と父の顔をぺろぺろと舐めるのを見てちょっと固まった事も、今では懐かしい話だ。


 今では普通に私も犬扱いしていた。


 それにしても、困ったことに兄が大学に帰らないで家に居座っていた。


 怪物やらと戦いをしてもビデオに映らないのも分かったので余計に兄は困っていた。


 それなりの映像を撮ろうにも撮れないからだ。


 大体、懺悔させて人が死ぬのを撮影されても困るし、私としたら距離を置くしかない。


 困り果てた兄が、うちのポチをカメラで試しに撮ったところビデオに映っていたから、恐らくは怪物とか言うもう一つの異界の奴だけが問題なんだろうが……。


 それで、うろうろする兄を見て、ポチを連れて気晴らしにと散歩に出かけたら兄がついて来ていた。


 後ろにいる兄が邪魔でしょうがない。


「あのさ。こっちはポチの散歩で心をリフレッシュしようとしているのに、邪魔しないでくれる? 」


「いや、俺も煮詰まっていてな……」


「普通に別のバイトすればいいじゃん」


「このバイトは時給も契約金も破格なんだ」


「ろくなことしていないくせに? 」


「廃病院の件は大儲けしたって廃病院を買った檀信徒さんからお礼を貰った」


「……結構、その言い方だと謝礼を実は凄く多く貰っているよね。その様子だと……」


「ああ」


「じゃあ、それで、この仕事を辞めたら? 」


「お前がもし金鉱を見つけたとして、採掘をすぐに辞めれるか? 」


「……砂金採りに少し前までは行ってたんだってね」


「頑張っても一日数千円にしかならなかったからなぁ」


 兄の山師の性格に呆れる。


 こういう時間の無駄な事に、それでもと夢を持って行ってしまうのだ。


 ギャンブラーなのもいい加減にしてほしい。


 昔の金山の下流では未だに砂金が採れたりするのを知って、専用の道具を買ってまでして行ったそうな。


 でも、時給にするとプロでも割に合わないそうだから、それを調べて知っているのに、それでも行っちゃう所が兄らしい。


 馬鹿な話である。


 普通に地道にバイトした方が良いのに。


「ふと思ったのだが、それは上級悪魔なんだよな」


「もう黒柴のポチだし」


「どうだろう、やらせで出来ないかな? 」


「黒柴のポチから元の悪魔に戻す自信が無いし、試しに戻したらもう戻らないかもしんないし……」


「やらせが出来れば、それで良いのだが」


「洗脳解いたら、どうなるか分かんないよ。さっきも話した通りにその洗脳が解けるかどうかも分かんないし。一か八かで勢いでやったからね。大体、父さんも母さんも凄くポチを可愛がってんのに……」


「そうだよな」


「上の兄さんがいなくなってから、父さんと母さんの穏やかな顔って見て無かったでしょ。最近はこの黒柴のポチのおかげで穏やかな顔になっているのにそれを無くすのは駄目でしょ……」


 私が我慢できないようになって、少し声を荒げて話す。


 まあ、父と母が可愛がっている黒柴のポチが、実は洗脳した上級魔物である事自体は問題なのだが……。


「むう。となると人面犬か? 」


「は? 」


「いや、そういう情報を得ているんだ」


「またそんなのに行くのか? 」


「まあ、そう言うなよ」


「私がいなくても良いんじゃないの? 怪物退治なら聖女は関係ないでしょ。颯真とか優斗とかだけで充分じゃん。魔法使いの爺さんだっているし。私はそもそも戦闘とかでは無いし……」


「いや……まあ……確かにな……そうだな。それだと聖女のビデオにならんよな……」


「人面犬に懺悔とかしても絵面は最悪じゃないかな? 」


「……だけど、そのネタを持ってきたのが一真君のお父さんの副住職さんなんだ」


「単に檀信徒さんに頼まれて、ヤバい危険な不動産目当ての怪物退治になってないのかな? 」


 そう言いながら、私に喜んで飛びついてきた黒柴のポチを撫でた。


「こないだの檀信徒さんが、破壊した廃病院周りが激安で手に入れたにも関わらず、凄い高値で住宅地として売却して大儲けになりそうなんだってさ。しかも奇麗に整地されてたから、出来ればうちもって言う人が話を持ってきてるのかもしれんな」


「人面犬の話がか? もう聖女のイメージビデオからほど遠くないかな? 殆ど、颯真が倒すだけになるんじゃないの? 別に怪物退治とかでイメージビデオを作るわけでは無いでしょ? 本来は聖女様がこのお寺にはいますって檀信徒さんや新しい信者の人に紹介する話じゃないの? 」


「まあ、だよな。聖女からほど遠いか……この話だと……」


 兄がそうやってため息をついた。


 

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