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自称勇者 第八部 第十章

 その次の日、兄と私は一真に呼ばれて、大聖寺にいた。


 正直、兄の話なんで、私は関係ないって突っ張ったのだが、お前もバイト料をもらっているだろうと言われて仕方なしになった。


 あのお金は私の大学進学とか就職や結婚の必要な時に使うとかで、父母が大切に貯金しているとか。


 そういう父母の気持ちが無ければお金は叩き返してもいいのだが。


 大体、面倒ごとが嫌いな私としては、これ以上大聖寺なんかに行ったら、ますますいろいろと巻き込まれるので勘弁してほしいのだが、兄に押し切られた結果、例の大聖聖女如来のお堂に私は兄とともにいた。


 すでに、魔法使いの爺さんと一真と颯真は座って待っていた。


 本来は兄だけ呼ばれてたらしいが、優斗も来ていた。

 

 段々、これがいつもの面子とか言われると辛いものがあるのだが……。


「で、結果として、何がどうなったのかな? 」


 私の懺悔の力のおかげで美談になったので、一真のお爺さんの住職さんは派手にやり過ぎたのはちょっとと一真を注意したが、女神の話していた敵と戦っていたのでそれ以外はスルーだったそうだ


 だが、一真の父の副住職は違った。


「あれだけ、派手な事をしたのに、ビデオが満足に撮れてない」


「いや、それは撮ってたとしても、無理でしょ。怪物が映ってますし」


 そう、私が突っ込んだ。


 あんなものが出てきたら、そりゃ世間様はドン引きするだろうし。


「いや、映ってなかったんだ」


「は? 」


 兄の言葉に驚いた。


「そ、それは霊現象で良くあると一真が説明してたカメラの異常現象とかで? 」


「いや、戦ってるこちらは映っているけど、向こうのは映ってないんだ」


 一真がそう説明した。


「多分、位相が違うんじゃろうな。本当に別の異界から来てるって事だ」


 そう魔法使いの爺さんが答える。


「じゃあ、あれは夢みたいなものって事か? 」


「いや、戦ったからそれは無いと思うが……」


 珍しく颯真が明確に否定した。


 確かに、颯真があれほど激しく戦っていたのは初めて見たからな。


 何しろ、笑っちゃうくらい一撃で相手を倒して終わらせてしまう男だし。


「チェーンとかも映ってないのか? 」


「こんな感じだ」


 そう一真が用意したモニターで見る。


 颯真が激しくジャンプしたりして剣戟を何もないところに食らわせていた。


 そして、あの怪物が使っていた細いチェーンも見えない。


 ただ、打ち下ろされた剣が激しく何かに弾かれたりしてるのが見えた。


「……こうなると撮影は無理だから、今後は何もしなくてもいいのかな? 」


「それは俺もちらっと思った」


 私の正直な感想に、兄も同意した。


「いやいや、なんでそうなる? 」


「多分、俺の剣が弾かれてるから、相手の攻撃自体はちゃんとあると思うが……」


 魔法使いの爺さんと颯真がそう感想を言う。


「珍しいな。そんな風に颯真が発言するのって……」


「多分、怪物の方が本気を出して無いと言うよりは本気を出せないようになってるんじゃないかと思う」


「あれでか? 」


「あれでだ。身体がまともに動いてなかった。多分、身体がこちらの人間の身体になってから、なじむのに時間がかかる状態だったのだと思う。だからこそ映って無かったと言える」


「だろうな。そして、恐らくだが、うっかり人間型に真似て、その姿になったばかりに窮地に陥ったのではないかと思う」


 颯真と魔法使いの爺さんの意見が一致した。


「となると、しゃべり方を突っ込んだ俺はナイスアシストだった訳か……」


 そう兄が呟いた。


 誰もそんな話をしてないが……。


「まあ、向こうはこちらと話をしたかったんだろうがな」


「あんな与太話を信じてるのか? 」


「いや、師匠に言われてたんだ。お前は人間の出せる魔力量を遥かに超えてると……」


「まあ、そういう奴ってたまにいるから」


「……なら良いんだけどな」


 魔法使いの爺さんがちょっと考え込んだような表情をした。


「……? 何の話だ? 」


「いや、その戦った化け物が俺達も全員同種だって言いやがったので、爺さんとかが真に受けてるだけで……」


 一真の父の副住職が首を傾げて聞いたら兄がそう話した。


「言っちゃうんだ」


 優斗が驚いた顔で兄を見た。


「良くある心理戦だろ。まあ、あり得ないわ」


「そうだろうな。そうやって、敵の心にヒビを入れるんだろ」


 兄と私が爽やかに否定した。


「いや、凄いな断言できるのが……」


 一真が苦笑した。


「あり得ないだろ。何で異界の怪物の王族がしがないサラリーマンの息子なんだ? そもそも、それなら兄は死んで無いだろうし」


「まあな」


「王族? 」


「この二人が彼らの王族だそうな」


「どういう事だ? 」


 一真の説明に父である副住職が訝し気な顔をした。


「女神が次に彼ら異界の怪物たちが、自分の世界に来るのを知って。その前に撃退しようとして、あいつらの仲間に女神が加護を与えると自分の傘下になるのを知ったそうな。それでこの二人は異界へ連れていかれて女神の加護を受け、こっちはこちらのまま女神の加護を与えて聖女にしたとかしないとか」


「……それは本当の話なのか? 」


「だから、そう言って惑わせただけでしょ。王族が転勤族とか……無いでしょ。異界が侵略するなら、もっと政治的にも力のある人物とかに転移させるだろうし」


「上の兄が捜査に絡んだかどうかは別として、あんな風に事故で死んだりしないでしょうね」


 ちょっと心配そうに兄の話を聞いていた一真の父の副住職に、即座に呆れたように私と兄はその話を否定した。


「そもそも、そんな凄いのがサポート役の時給で5円10円で粘らないでしょ」


 私がさらに言うと、確かにって感じで一真の父親の副住職が笑った。


「まあ、どこまでが本当かどうかは分かんないが、今回は向こうが本気出せなかったから良かっただけだから」


 そう颯真が珍しく反省のように呟いた。


「それと、菅原のお爺ちゃんが浄化してくれって言うから、浄化した時に、多分懺悔の浄化を使ったせいで、まあ、世間がコントロールされて火柱の件が美談になったのも良かったかな」


 魔法使いの爺さんがそう纏めた。


 「だが、何も撮れてない以上、本来はサポート料の時間給は出せないのだが、今回は檀家さんが奇麗に廃病院周辺が整地出来たし取り壊し料もいらなかったと喜んでいるから、しょうがない。ただ、次回はちゃんと撮ってほしい」


「え? まだやるの? 」


 私が一真の父親の副住職に驚いた。


「当たり前でしょう。ここは勝負時」


「正直、妹の教化だけで行けると思いますが、やはりやりますか」


 そう一真の父親の副住職と兄が目を見合わせて、お金になった目で笑っていた。


 そこまで、欲しいのかサポート料。


 流石にそれで呆れた。


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