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自称勇者 第七部 第一章

 浅野大翔(あさのはると)はその日、大学は休みで空手の大会が終わった為に家でゆっくり寛いでいた。


 そんな日に母親からスマホに連絡が入る。


 やれやれ、明日には帰るって言ってたのに……。


 そう思いながら、スマホを取った。


「もしもし、予定通り明日には帰るよ? 」


 そうぞんざいに大翔が答える。


「大変なの! 大変なことになっちゃった! 」


「は? 」


 大翔がいきなりの母親の発言に驚く。


「日葵がっ! 日葵がグレたのっ! 」


「え? そうかぁ。まあ、ヤンキーと戦っても負けないくらい空手も強いし、性格が強いからそう言う事もあるよね」


 そう大翔が冷静に答えた。


 そういう冷静なところは妹の日葵に似ている大翔であった。


「違うのよっ! 聖女なの! 」


「え? 」


 大翔が固まった。


「聖女になっちゃったの! どうしょう! お父さんに日葵が聖女になったって言えないしっ! 」


「は? 」


 大翔はしばらく固まったままだった。


 何故こんな息子と娘に育ったのかわからないが、父親と母親は心配性で子供は全員が豪胆だった。


 なので、母親が慌てて騒ぐ事は良くあった。


 実際に日葵の事で兄弟まで慌てたのは小学生低学年の時に、上級生の男の子の数人に友達が囲まれていじめられた時に、上級生の背後から日葵が落ちてたレンガの塊で次々と頭を一撃して倒していったくらいである。


 相手は血まみれになって悲鳴を上げて逃げた。


 いじめがかなり陰湿で酷かったのと、日葵が可愛くて泣きながら震えるフリをして友達を助けたかったのと宣ったおかげで、それは書類送検まで行かなかったが……。


 父親と母親は必死になって医療費を全部支払い詫びて回ってたが。


 ただ、当時は生きていた上の兄が日葵が自分の可愛さを利用して戦っているのを見て、これはいけないと思ったのか、空手を教えるようになった。


 本人曰く、レンガで殴るよりは手で殴る方がいいという、のちに警察官になるような人間が考える事ではない事を言っていたが……。


「その聖女って新しいヤンキーとか半グレの流れなの? 」


「違うのよ。大聖寺ってお寺があって、そこの大聖聖女如来の女神さまの聖女になったの」


「いや、如来に性別無いけど……。それと天部の神様ならともかく、女神って准胝観音と多羅観音や葉衣観音くらいしか仏様の女性っていないはずだけど……」


「……なんでそんなに仏教とかにあんたたち兄弟は詳しいの? 」


「いや、兄さんが亡くなった時にあの住職さんがいろいろと教えてくれたからさ」


「私たちには法話くらいしかしなかったのに……」


「いろんな事を知りたがるのはうちの兄弟の癖だし」


「ま、まあいいわ。それで大聖聖女如来と言う女神の聖女に選ばれたとかで、大聖寺の信徒さんが、最近家の前に来て手を合わせて帰るの」


「はあ? 」


「聖地の一つになったとかいうのよ」


「いやいや、住んでる借家に手を合わせてもしょうがないでしょ」


「あの子も転校のプロフェッショナルとか自称するだけあって、そういうのに会うのを避けるのが上手いから……」


「まだ、そんなのに拘り持ってたんだ、日葵は……」


 大翔が呆れた顔をした。


 浅野兄妹は下に行くほど変わっていると言われる所以である。


 訳が分からんと言う人もいる。


「とりあえず、大聖寺とやらに文句を言えば? 」


「それが、こないだ、バイト料ですとか言ってお父さんくらいの年齢の住職さんが来て、100万円くらい入った封筒を持ってきたの。まさか、いかがわしい事をしてるんじゃないかって心配になって……」


 そう母親が泣きだす。


 母親はパパ活とかを想像していたが、大翔は恐喝とか脅迫とか詐欺を考えていた。


「とうとう、やっちまったか……」


 その大翔の呟きで母親が泣きだした。


「とにかく、日葵と話をして欲しいの……」


 消え入るような声で母親が呟いた。


「わかった。ちょっと早めに帰って話をするよ」


 そう言って大翔がスマホを切った。

 

 やばいな……。


 大翔は日葵が身体をどうのとは一切考えてなかった。


 逆に平気で一線を越えるところは持っていたので、とうとう犯罪を始めたかと呻いていた。


 上の兄は自分の運命を覚悟していたのか、遺書らしきものを残していた。


 そして、大翔には何度も何度も日葵が犯罪組織に加わったり、本人が自ら始めたりしないように見張れとしつこく書かれていた。


 兄弟の中で、人間としての一線を平気で越えれるとしたら、それは日葵しかいない。


 それは共通の認識だった。


「にしても、大聖寺か……」


 そう大翔がスマホで大聖寺をググりだした。


 そしたらいろんなサイトが出てくる出てくる、しかも、中心は聖女の話だ。


 サイトに載っている写真に目に隠しが入っている聖女とされる女性が、明らかに妹だった。


「とうとう、宗教が一番稼げると気が付いてしまったか……。そうは考えても普通はしないのにな……。上の兄が心配してた通り、あっさりと人としての一線を越えてしまったか……」


 大翔が呻く。


 だが、その妹の聖女を遠回しで拝んだり祈ったりしている信徒らしきものの写真を見て、これ、いけるんじゃね? と思ってたのもこの兄弟の血であると言えた。


「宗教法人ってどうやって申請するんだっけ? 」


 などと斜め上の言葉を呟きながら、手早く服を着替えて、日葵に会うことにした。


 それが自分も巻き込まれるきっかけになると知らずに……。

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