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自称勇者 第五部 第二章

「ええええと」


 私が上手い事に颯真をまいて門まで来ると、あの女生徒と一緒に優斗がいた。


 金髪パーマなんで思いっきり目立っていた。


「ああ、すまん。俺が紹介したんだ」


 そう優斗が私に手紙を渡した女生徒を見ながら話す。


 私のクラスメイトの藤井加奈だそうな。


 いやいや、優斗の関係だと知り合いにはなりたく無いなぁ。


「また、厄介ごとだな? 」


「いや、そうだけど……」


「あまり、関わりたくないな……」


 そうしたら、藤井加奈が泣きそうな顔になった。


「ええと……」


 私が困惑する。


 クラスメイトの恨みを買うとか転校生のプロフェッショナルの私が絶対にしてはいけない事だ。

 

 しかし、それにしても、そういう土地柄なのか、普通は高校とかで別の学校に行くと友人関係が途絶える所が多いのにな。


 地縁が深いのかもしれないが……。


「とりあえず、ここだと目立つから、いつもの場所に行くか」


「また、あそこかよ」


 私が頭を抱える。


 あのぼろマンションばかりだな。


 いっぱい死んでるからあまり行きたくないんだが。


 あれか?


 殺人現場に犯人は戻りたがると言う奴か? 


「何を考えているかは何となくわかるが、俺はそう言うのは無いからな。そもそも、直接やってないし」


「いや、弓を射たろ? 」


「あれは違うから」


「弓? 」


 不思議そうに加奈が怯えながらも聞いてきた。


 とりあえず、私も優斗も答えなかった。


 言える話でも無いし。


「では行くか? 」


「さらっと仲間に混ざってくんな! 」


 そういきなり背後に現れて声をかけてきた颯真に突っ込んだ。


****************************************


「この事は俺しか知らないし内緒にして欲しい」


 そう優斗が皆を見回した。


「別に言って回るような趣味は無いし」


「ここにいるしか、友達はいないしな」


 颯真がぽつりと呟いた言葉が重い。


「実は……こんなものが送られてきて……」


 そう加奈が震えてスマホを見せた。


 そこには加奈のあられもない姿が映っていた。


 どうやら、強引にって感じだ。


 襲われたっぽい。


「私、こんな事された覚えがないのに……」


 そう加奈が泣き出した。


「まあ、偽造かもしれんしな……」


 優斗がそう庇った。


「で、これの持ち主がばら撒かれたくなかったら、ここに来いって……」


「場所指定かよ」


「あまりタチの良くないとこだ。ぶっちゃけ、あの某先輩とかのたまり場所」


 優斗が答える。


 それで事情が全てわかった。

 

 あの矢に刺されてゾンビになって塵にされた連中がやっていたんだろう。


 おそらくは加奈さんを襲って、全部それをスマホで撮って脅していたのか。


 で、忘却の剣で消えたから、絡んでるとことかは全部消えて、服が脱がされて撮られた一人で映っているスマホのデータだけ残ったってとこだな。


 本当に全部データとか消えるんだな。


 そして、あいつら、魔物に近いと殺されるだけはあったという事か。


「全く、全く覚えが無いのっ! 」


 そう加奈が身を震わせて泣いた。


 そら、無いだろうな。

 

 やった相手は完全にいなかったことになっているし。


「で? 」


「でじゃねぇだろ? 」


「私のような非力に何をしろと」


「だから、俺達で行くしかないじゃないか」


「……彼女なのか? 」


「だから、幼馴染だ! 俺に彼女なんているはずがないだろうが! 」


 何という魂の叫び。


 流石に納得せざるを得ない。


「心配するな。俺もだ」


 そう颯真がピッと親指を立てた。


 く、空気が……。


 まあ、スルーするけどさ。


「しょうがない。じゃあ、スマホの場所とか写真が入ってるメールを私のスマホに転送させて、後でちゃんと消すから。それで全部が終わって、まだ気になるならスマホを電話番号からアドレスから全部を変えた方がいいかも。それ以外はこっちでやるから」


 私が仕方なく答えた。


 どの道、この先にこんな話が一杯あるんだろう。


 奴等がデータ込みで消えても、まだ何らかの形で残っている部分があるという事だ。


 仕方あるまい。


 警察官の大きい兄がいたせいか悪は嫌いだ。


「やっと魔物退治かっ! 」


 颯真が咆哮を上げる。


 たまってたんだなぁ。


 こいつ、ヤバ過ぎだろ。


「聖女様」


 そう手を組んで私に跪く加奈さん。


 いやいや、勘弁してくれよ。


「いや、バイトだから」


 必死の彼女の祈りに、そう答えるのがやっとだった。


「今回限りだからね」


「いや、今後も後始末はしないと」


「だから、お前らじゃん」


「だけど、あんたがいないと……」


「だから、私を当てにするなと」


「いや、それなら、俺と一真と颯真でする事になるぞ? 」


 その優斗の一声でぞっとする。


 なんとなく、この都市の人口が半分に減ってもおかしくない面子だ。


 やっぱり、ヤバすぎるな。


「だれか、俺達をコントロールする人間がいないとな……」


 颯真の一言でイラッとした。


 こいつを導くものとやらが現れたら、とっとと聖女をやめて卒業するのに……。


「しょうがない」


 段々諦めと言うものが私を支配していく。


「あ、あの……大丈夫なのですか……聖女様……」


 加奈が私が一緒に話し合いに行くと思って心配してくれた。


「心配しなくていいよ。この人、荒事のプロフェッショナルだから」

 

 そう無責任な事を優斗が話す。


 颯真が頷いたのでさらにイラッとした。


 だが、やらざるを得ない。

 

 私が矢を射ろとは言わなかったものの、それ以外の事は知恵を貸しているし。


 この犯罪にどっぷり浸かる感が半端ない。


 困ったもんである。

 

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