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自称勇者 第五部 第一章

 とりあえず、ゾンビ問題を解決したはずだった。


 ショタの美少年もお爺さんと暮らせてめでたしめでたしのはず。


 なのに、この現実は何だろうか? 


「あの……ネットで噂の聖女様なんですよね」


「聖女様に相談がありまして……」


 などと目の前に我が校の女性徒が集まって騒ぐ。


 おやおや、本当にネットで爆発か。


 参ったな。


 あれほど、私達を聖女と勇者と馬鹿にして距離を置いておいたクラスメイトがマジで私を聖女だと言う認識に変わりつつある。


 別の意味で浮いてきている。


 それも最悪のコースだ。


 だが、幸い、それに対するやり方はショタの美少年を助ける事で覚えた。


「すいません。私は大聖寺の大聖聖女如来様の御指示でした通りですので……まあ、ぶっちゃけ、寺の住職に頼まれてたバイトなんですよ」


 そう微笑む。


 聖女のバイト……。


 そんなのあるのか? 


 って言われそうだが、知らん。


 バイトって言葉は魔法の言葉である。


 社員じゃないから責任無いもの。


 最近はバイトに社員と同じことをさせようという馬鹿な奴が増えているが、それにはイギリスの三百六十億円分の宝石を盗まれた宝石店を守る警備員さんの言葉を真似したらいい。


「貴方が警報が鳴って様子を見に来た時に宝石店の中に泥棒は入っていたのですが、貴方は何故窓から覗くだけで無く、扉を開けて調べなかったのですか? 」


「ああ、それ以上詳しく調べるほど給料をもらってませんので……」


 私はインタビュアーにそう答える警備員さんの姿に神を見た。


 その通りだ。


 対して給与も貰ってないのに、そこまで忠誠心を見せて働く方がおかしい。


 バイトを社員並みに働かせるのは言語道断である。


「バイトなんですか? 」


「ええ」


 そう微笑んだ。


 一応、バイトは許可を得ないとこの高校は駄目なので、教師に呼ばれたら信仰に対するボランティアです……ちょっと皆に言うのは恥ずかしかったので……と宣っておこう。


 大体、こいつらもおかしい。


 聖女なんているわけ無いだろ? 


 不思議なことに私は聖女呼ばわりするのに、颯真は誰も勇者と呼ばなかった。

 

 そう呼ぶのに抵抗があるのだろう。


 だが、それならば言わしてもらいたい。


 あの男を勇者と呼んで称える者だけが、私を聖女と言えるのだ。


 その勇気が無い奴が私を聖女と呼ぶなと。


 私のおかげで、最近、一真のお寺の大聖寺は大盛況らしい。


 良かったな、儲かって。


 一真から無茶苦茶に忙しいのに、高校生だし家族だからって、こずかいも出ないと愚痴の電話が来たが知らんがな。


 ここに転校してきた時に皆の中に入り込めずに、転校のプロフェッショナルとして何としてもクラスに仲間として入り込もうと動いていたら、颯真と言うイレギュラーの塊に会ったばかり、もはや違う入り込み方である。


 頼むから、廊下から私に祈りを捧げたりしないで欲しい。


 バイトなのだ。


 こんな変化ならいらない。


 バイトですからと説明しても止まらない。


 おかしいだろ。


 しかも、誰かが柏手(かしわで)を始めたとたんに、皆が私に向かって廊下から二礼二拍手一礼をするようになった。


 それ神社や。


 ちなみに、なんで日本の神道は神殿に拍手をするか……それは中国の魏略とかの史書に載っている。


 なんと、倭の国の文化では貴人に会った場合に手を叩いてから頭を下げるのが礼法だったらしい。


 神社にいまだに残っているというこの事実。


 いや、まあ関係ないけど。


 クラスメイトもたまにしてるんで勘弁してほしい。


 私の幸せな高校生活はこんなものでは無かったはずだ。


「良いなぁ……」


 そう羨ましそうに颯真が私のそばに来て愚痴る。


「お前だって、向こうで女神の勇者でちやほやされてたんじゃないのか? 」


「相手を倒すまではちやほやしてくれるが、倒した後は忘れてしまうからな」


「良いじゃないか、私も忘れてもらいたいのだが……」


 何が聖女だ。


 受験生になんてことさせるんだよっ!


 そもそも学年5番って言うから、詳しく聞いたら迷宮の地図とかを把握するために全記憶スキルとか言う訳の分らんスキルを持ってるそうな。


 見ただけで覚えてしまうとか。


 なら、なぜ5番?


 1番で無いとおかしいだろと突っ込んだ。


 そうしたら、問題を捻られたりすると分からないんだそうな。


 やはり馬鹿なのか。


 そして、出来るなら私にもそのスキルが欲しい。


 それで大学受験は楽勝に変わる。


 だが、ステータスオープンをしても、そんな素敵なスキルは無いし、<聖女>には無いんじゃないかとふざけた事を颯真が話す。


 ふざけるなよ。


 私には無しかよ。


 これだけ苦労を掛けさせられて旨味が無いとか、あほすぎる。


 だが、実は教化は使えるのだ。


 私はあれを面接で使う気だ。


 もう、面接は通ったも同然である。


 後がどうなろうが知った事ではない。


 そんな事を考えていた時に女生徒から綺麗に折りたたんだ紙をそっと渡された。


 震えながら渡してきたのでビビる。


 まさか、恋の告白かしら? 


 後で、そっと紙を開いたら放課後に校門で待つとの事。


 ヤバい変なフラグまで動いている。


 モテモテと言うべきなのか?


 絶対におかしいよな。


 そう、私が深く深くため息をついた。


 

 


  

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