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自称勇者 第二十三部 第三章

 などと手をこまねいている間に、バラバラと廃城の森から兵士が逃げてくる。


 剣聖アウロスを煽る旗をまだ立てたままだから、こちらへも怖がって近寄らずに大回りで王城に向かって逃げていた。


「せっかく話せることだし」


 などとしなくてもいいのに優斗が逃げている兵士になぜ逃げているのかを話をしに丘を降りて近づくと、皆が悲鳴をあげて逃げる始末。


「何で逃げるんだ? 颯真がいるからか? 」


「剣聖アウロスがいると思ってるんじゃないか。どう見ても旗で煽ってるし。颯真は強さを恐れられているけど剣聖アウロスほど怖がられていないし、そもそもいつものぼろ装備と違って金ぴかの鎧だから分んないだろ。遠目では……」


 大翔兄の疑問に魔法使いの爺さんが答える。


 確かに剣聖アウロスを煽る旗はつけたままだ。


 面倒くさいからそのままだし。


「いや、ぼろいとか言うけど、使い慣れているし、あれはあれでちゃんと防御する場所はミスリルが一部で使われてたりして良いんだぞ? 」


 などと颯真が子供みたいな話をする。


 ちょっと、そう言われるのを気にしているようだ。


「しかし、剣聖アウロスは倒したって言えばいいのに……」


「それが声が届かない距離で逃げてるだろ? そもそもあの剣聖アウロスって何度かああいう風に死んだって情報流して、油断して近づいたところを襲ったりっているからな。そりゃ、そういう話が広まっているから誰も関わってこない。そもそも剣聖アウロス自体が直接相手の前に行って戦うような男では無いし」


「不意打ちとだまし討ちの天才だからな」


「困ったもんだな」


 結局、優斗は仕方なく途方に暮れた顔で帰ってきた。


「あの鷹はどのくらいかかるんだ? 」


「まあ、一時間はかかるんじゃないか? 返事が決まらないと半日とかもあったし」

 

 段々廃城の方から逃げてくる兵士がさらに増えて来た。


「このまま減ると、戦う為の兵士が残らなくなるんじゃないか? 」


 颯真がそう突っ込んできた。


「いや、だが、何か女神が手を考えていたり、策士だから偽りの敗走とかやってたら、作戦を潰してしまう」


「そういや、詳しい作戦とか聞いてなかったな」


「どうしょうも無いじゃん」


 静かに俯いて考え込んでいた大翔兄が顔を上げた。


「王城へ帰る? 」


「おいっ! 」


「だって、暑いし」


「兄妹で暑いの駄目だな! 」


「熱中症になってしまう。恐ろしい事に熱中症で脳が茹るともう戻らないらしいしな」


「何の話? 」


「私もそろそろ涼しいところで休みたい。神殿も涼しかったよな」


「構造的にそうしているのと魔法で風が吹くようにして、快適に過ごせるようにしているからな……そういえばそういうのに一番熱心なの女神だったな」


 そう魔法使いが呻く。


「私が暑いのどうのと騒ぐのは同一人物だからと言いたいのか? 」


 私がムッとした。


「いや、つまんない話を続けるくらいなら戦闘に参加した方が良いんじゃないのか? 」


 颯真がさらに突っ込んできた。


「ぶっちゃけ、返事が来ないとどうしょうも無かろう」


 私もぶっちゃける。


「いや、それはそうかもしれんが……」


「大体だが颯真は指揮官として戦闘経験あるのか? 魔法使いの爺さんも……だが。どうも、そんな感じに見えない。もちろん、私も大翔兄も優斗も一真も戦闘指揮経験なんて無いから、あちらが本格的な戦闘なら手が出せないだろう? とりあえず、相手を倒してほしいとかそういう話なら別だが……」


「無いな」


「冒険者までだな」


「じゃあ無理だろ? 」


 私が呆れた顔をした。

 

 指揮官と戦闘員とはまた違うしな。


 大翔兄のなんちゃって軍師は指揮経験ないから、中途半端な知識でやりそうで怖いし。


「ああ、俺はやんないよ」


 有無を言わさない感じで大翔兄が答えた。


「へぇぇ? 」


 ちょっと驚いた。


 こっちの考えを先回りしたのは間違いないが。


「だって、実際の戦闘で下手な指揮して負けたら、どうしょうも無いじゃん。もしもの事があれば責任取れないし」


「酷く正しい答えだな」


「いくら俺でも、そのくらい理解してるよ」


 大翔兄がそう苦笑した。


 その時だ、王城の方から大量の冒険者が廃城に向けて向かってきていた。


「援軍か? 二千人はいるな……」


「いや、甲冑がバラバラだ。冒険者で追加の部隊を作ったのか? 」


 などと魔法使いの爺さんがじっと見ていた。


 そうしたら、こちらに向かってくる。


 旗を見てぎょっとしたものの、逃げない。


「神様! 神様! 剣聖アウロスは? 」


 そのうちの一人が大翔兄を見て叫ぶ。


「ああ、倒したよ」


 一応、トドメに関係しているから、倒したと言えるか……ちょっと、颯真とかにしたら、たまらんだろうけど……大翔兄が頷いた。


 その瞬間、どよめきがその冒険者達から拡がる。


「さすが、神様だ! 」


「よし、最後の戦いだ! 」


「神様、ジパングに行くために、あいつらを倒すのを手伝うよ! 」


「その通りだ! 」


「ジパングだ! 黄金の国だぁぁぁ! 」


 そう冒険者たちが叫んだ。


 全員で冷ややかに大翔兄を見た。


 でたらめ演説のせいで、こんなに沢山の兵士が。


「まだまだ、後続も来るからぁ! 」


 そう代表らしいベテランのおっさんの冒険者ががっちりと大翔兄に肩を回して、引きずって廃城に連れて行こうとする。


 すでにつかみやすい羽根は皆に掴まれている。


「行くぞ! ジパングぅぅ! 」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 」


 その叫びに呼応して絶叫が始まる。


 私達はただ廃城に連れていかれる大翔兄を呆然と見ているだけだった。



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