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自称勇者 第四部 第三章

「で、本題に入るが……」


 祖父がいなくなった後に、いきなり座布団に正座して一真が話し始める。


「いや、女神の話が本題じゃないのか? 」


「困った話が持ち上がってな。祖父は知らんらしいが親父から持ち込まれた」


「私は相談所じゃないが? 」


「いやいや、お前にも責任がある話だ? 」


「何だと? 」


「このお堂の裏の親父とか祖父の祈祷の籠り部屋があってな」


「いや、何で私のせいなんだ? 」


「お前の提案じゃん、ゾンビ化」


「はああああ? 」


 私が激高して叫ぶ。


「おお、ソロソロ良いか? 」


 そう言って金髪パーマの優斗が奥から出てきた。


 お爺さんを連れて……。


「何、そのお爺さん? 」


「檀家のお爺さんでな。……そのゾンビなんだ……」


「はああ? なんで? 」


「実はお孫さんと二人暮らしでな。こないだ病院で急死なさったのだが」


「いや、ゾンビ招集で全部集めたのでは? 」


「いや、お孫さんが親戚で引き取り手が無くてな、それで心配でゾンビ招集に逆らって、お孫さんの元に戻った。うちで葬式する予定だったから分かったんだが」


「わ、わしはどうなるんじゃろうな……」


 檀家のゾンビになった爺さんが困り果てた顔で聞いた。


「お孫さんは? 」


「お爺さんが亡くなった後に泣き続けてて、それが帰ってきたので喜びすぎて疲れ果てて奥で寝てる」


 優斗が優しい顔で話す。


 意外とこいつは良い人間だ。


 まあ、ヤンキーっぽい格好してるけど優しい奴も多いし、意外と真面目だったりするからな。


「いや、俺は別にヤンキーじゃないから。空手をやってて、ちょっとガラが悪く見えるだけだから」


 そう私の視線に気が付いたのか優斗が反論する。


「なら金髪を辞めろよ」


「いや、クォーターなんだ」


「はああああああ? 」


 何という驚きの事実。


 全然顔がクォーターじゃないのだが。


「顔が純日本風になっちゃってな。髪だけ自毛で金髪なんだよ」


「日本人の遺伝子が強かったんだな」


 しみじみと私が呟いた。


「クォーターなのに不細工って事かよ」


 イラッとした顔で優斗が睨んできた。


「いや、純和風って事だ」


 全然ごまかしにならない事を私が答えた。


「こいつ、妹は無茶苦茶可愛いんだぞ? 」


 しみじみと一真が話す。


 切ない話だな。


「お爺ちゃん? お爺ちゃんはどこなの? 」


 そう奥からショタっぽい可愛い少年が出てきた。


 なるほど、これは確かに死ねないな。


 非常に可愛い。


「ご両親が事故で無くなって、その時に親戚同士でたらい回しにされていて誰も面倒を見ると言わないので、独り身で先々は不安だが、それならとお爺さん手をあげて面倒を見る事にしたそうだ。だが、そのお爺さんが心臓発作で死んでしまってな……」


 ううむ。


 この美少年ショタなら、いくらでも引き受け手は居そうだが……。


「お爺さんは生きてるよ! 」


 ショタの少年が叫ぶ。


 必死だ。


 祖父が大好きなのもあるだろう。


「どうしたら良いと思う? 」


 そう困り果てた顔で一真が私を見た。


「これは……ゾンビは突然亡くなったりするの? 」


 私が颯真に聞いた。


「いや、別に問題ない」


「なら、それで」


「良いのか? そんなあっさりで? 」


「しかし、死んだ身体じゃ。腐りはしないかの? 」


 ゾンビのお爺さんが心配そうだ。


「どうなの? 」


「ネクロマンシーが術をかけたままなら、勇者の剣で刺されでもされない限りは問題ない」


「じゃあ、それで」


「軽いな! お前! 」


「本当に考えてんのか? 」


 一真と優斗が怒った。


「いや、別に心もそのままだし、腐り落ちもしないんだったら、生きているのも同じだろ」


「考え方が簡単すぎる。心臓が止まってんだぞ? 」


「人口心臓と言う事でも良いし、そもそも心臓なんて病院にでも行かない限りは心音なんて普通は聞くか? 」


「いや、良いのかな? 」


「そうなんだろうか? 」


 私の言葉で流石にチョロい二人はそう考えだした。


「しかし、臭いとか言われたりしたらどうします? 」


 爺さんが心配そうに聞いてきた。


「腐り落ちる事はないのだから問題ないでしょう」


「まあ、あちらの世界のネクロマンシーで亡くなった恋人をゾンビにして暮らしている人がいて、その人は聖女の小浄化を定期的に受けてたな」


 私の言葉に颯真が続ける。


「小浄化? 」


「ああ、浄化の一番低い奴だ」


「成仏しちゃわないの? 」


「逆にゾンビの気配に変なのが寄って来るらしくて、それで定期的に月一くらいで受けてたぞ。そもそも、浄化にも十段階くらいあって、自分のステータスを開いたら載っているはず。ステータスオープンと言って見ろ」


「ほほう。ステータスオープンとな?  」


 颯真にそういわれて出してみたら、私の前に現れた黒い画面のようなものに、スキルの欄で懺悔の三段階と浄化の五段階と教化の五段階があった。


「ほほう、レベル2でそんなにスキルがあるのか。凄いな」


 颯真が感心している。


 こないだ懺悔を使ったせいか、私のレベルは2になっていた。


 私にとっては碌な話ではないが……。


「小浄化は<聖女>に必須だからな。自分の清めに使うんだ。やはり長い旅とかで臭い匂いを身体からさせていると<聖女>として沽券にかかわるからな。昔の大聖女が必須のスキルとして編み出したとか言う話だ」


「つまり、風呂に入らんでも良いという事か? 」


 私が少し嬉しそうに話す。


「いや、やめて……」


「女の子に対する夢が消えちゃう」


「そんな夢は捨ててしまえ」


 風呂に入らない話で一真と優斗が動揺しているので、私が断言する。


 所詮人間である。


 そんな夢みたいな理想は捨ててしまえ。


 汗もかくしトイレにも行くのだ。


「じゃ、じゃあ。お爺ちゃんと一緒に居ても良いの? 」


「良いんじゃないの」


 そう私が答える。


「軽っ! 」


「軽すぎるんだよなぁぁぁ! 」


 一真と優斗は凄く私を貶すが、ショタの美少年は大泣きして喜んでいた。


 

 

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