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自称勇者 第二十二部 第二章

 じりじりと環境が砂漠に近いせいか熱い。

 

 リヤカーの下に女神が入れてくれた日除けの屋根だけのテントと水などが入ってたので、慌てて皆でテントを張ったが、それでも糞暑い。


 暑すぎる。


「……こんな馬鹿な作戦ってあるのか? 」


 暑さのせいか大翔兄がブチ切れて呟いた。


「いや、今回は正しいと思う。一直線に意外と来る奴だから、ここでこうやって煽るように陣地を作っていると必ず気がつくし、意地になってやってくる」


「まあ、強すぎるから無理が通ってきたような奴だからな。感情のままに動くだろうし」


「単純に、大きな子供って事だよな」


 私が颯真と魔法使いの爺さんの言葉に突っ込んだ。


「いや、俺が弟子入りした時にはすでに、凄く陰湿なくせに短気だったからな」


「ちょっと、高齢になってから狷介にさらになったからな」


「これ、最終対決になるんだろ? 高齢のお爺ちゃんを怒らせて戦うって言うのがどうもなぁ」


「なんか、しまんない戦いだよね」


 颯真と魔法使いの爺さんの話に優斗と一真が突っ込んだ。


「いや、これが最終決戦になるかどうかは分からんけどな。皇弟も強かったし、多分、真正面から本気でやると剣聖アウロスと変わらないレベルだと思う」


「でも、剣聖アウロスは闇討ちが得意な奴だから、こういう場所は苦手だが、それでも感情が上回る困った爺さんだからな。話ができないから、潰すなら確かにこれは良い手だと思う。ここで叩いておくってのが、今後において非常に大事だと言うのも確かだし。と言うか、苦労したんだろうな。実は女神とはこちらの世界にいる最後の方では距離を置いていたから気が付かなかったが、こんな日除けのテントをリヤカーの底に用意しておいてくれたり、喉が渇くと思って水を準備してくれていたり、随分と成長したんだなって思うよ」


「だってよ、日葵」


「良かったじゃん、日葵」


 魔法使いの爺さんが女神を褒めたら、一真と優斗がしきりと私に話を振る。


「いや、あれは人格が違うなら、私では無かろう」


「それは俺も正直同じ思いだ。あそこまでは酷くないだろ、日葵は? 」


 私だけでなく大翔兄まで同意してくれた。


「老獪になると、ああなるって事では? 」


 優斗の突っ込みでちょっと困ったような顔で私を大翔兄が見た。


「いやいや、全部はめ込みでここまで持ってくるような事は、年を食っても私には無理だと思うぞ」


「そのわりには全部計略のはめ込みだったって感じで女神のやった事を全て当てていたがな」


 私の反論に一真も苦笑した。


「いや、思ってもやらんのだが……」


 私が反論した時に颯真がじっと向こうを指さした。


「なんだ、あれは? 」


「魔物の部隊みたいだな」


 颯真が向こうで殺したような魔物の完全武装した軍団が、トカゲのような馬に乗って数キロ先にこちらに来るのが見える。


 遮蔽物が無い上に丘の上からだから、すぐにわかる

 

 それは500くらいの軍隊だ。


 だが、攻めてくると言う感じではなく、恐怖に追い立てられて、こちらに向かってきている感じだ。


「いや、颯真が王城にいるってばれてるんじゃなかった? それで、廃城で女神の軍隊とやり合わせるって言ってたのでは? 」


 私が想定外の話に驚く。


「そう来たか……」


 魔法使いの爺さんが呻く。


「魔物が悲鳴を上げてる感じでこちらに向かってきてるだろ? 相変わらずのやり方だな……」


「王国の方じゃ、あれをやるからあいつには軍隊を持たせないのに、そうか、知らんかったのか……皇弟とやらは……」


「軽いつもりで強いからってんで、魔族の部隊を一つ任せたんだろうな。可哀想に……」


「どういう事だ? 」


 大翔兄が訝し気に呆れた顔で続ける颯真と魔法使いの爺さんに聞いた。


「簡単じゃよ。強いからと思って、剣聖アウロスに魔族の軍の指揮を任せたのだろう。だが、あいつはそういう風に任されると、自分ひとりで督戦隊をやって逃げる奴を片っ端から処刑して進軍させて、指揮下の部隊の全部を自分が戦うための盾に使うからな」


「相変わらず、えげつないな。だが、確かに、あれならこちらを攻めれる。たまたまだろうけど……」


「まあ、多分、王城にそのまま突撃させて、魔物を盾にして俺とやろうと思ってたんだろう。幸いに王城の中なら建物も多いから、魔物達にしても攻め込んだ後で上手くすれば逃げれるし。それで仕方なしの進軍だったんだろうな」


「それなら、勇者颯真はここにいるとか言う旗を見たら逃げるんじゃね? 」


 私がそう苦笑する。


 王城に攻め込んで、何とか剣聖アウロスの督戦を逃げるつもりなのだろうが、魔王が逃げる颯真がそこにいるからな。


「いや、いつもの黒い古びた武装ならな。多分、遠目だし装備がキンキラキンだから誰かわかんないんじゃないか? 冒険者達が近くにいたのに颯真かどうか、すぐに気が付かなかったろ」


 魔法使いの爺さんが私の心を読んで苦笑した。


「いや、だから旗があるじゃん」


「字が読めないと思う。高位の魔王付きくらいでないと字は読めないから」


「うぉ」


 まさか、識字率がここで問題になってくると思わなかった。


 魔王は文字くらい教えておけよ。


 旗が意味ないじゃん。


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