自称勇者 第二十二部 第一章
「テレポートしてきたけど熱いな」
大翔兄が愚痴った。
「そら殆ど砂漠の丘だもんな」
「廃城の方が森があるんじゃないか? 」
「なんか燃えてるけどな」
私の突っ込みに、優斗と一真が廃城の方を眺めた。
ガソリンの爆発がド派手で黒煙を上げている。
丘はちょうど王城と廃城の間くらいにあった。
「まあ、隠れる場所無いからな」
「本当に来るのか? こんな姿を隠れれない状態で? 」
「来る! 」
などと颯真が断言した。
ううむ、そこまで強気で言われると、頷くしかないのだが。
なぜ強気になれる?
「いや、来るのは、旗を立てるからじゃろ。早く立てないと、ここを無視して剣聖アウロスが王城に行ってしまうぞ」
などと魔法使いの爺さんが私の心をまたしても読んで旗を立てだした。
「いや、しかし、こんなバレバレの手って引っかかるの? 」
「怒らせて攻撃させるとか、ちょっと無茶では」
「大丈夫! 」
颯真が旗を立てながら、断言した。
これまた、唯一の弟子に言われると否定ができない。
私と一真達は顔を見合わせた。
実際、こないだちょっと派手にやりあっただけで、弟子などをやらされていた颯真に言われたら、しょうがない。
そういう奴だと思うしかないな。
リヤカーの下の方から、散々、剣聖アウロスを罵しる旗が出てきた。
「お前の母ちゃんデベソだと? 」
「こんなの罵りになるの? 」
「なる! 」
旗の中からとんでもない「お前の母ちゃんデベソ」と書かれた旗が出てきて、一真と優斗がドン引きしたが、今度は魔法使いの爺さんが断言した。
「いやいや、これはちょっと、どうなんだ? 」
大翔兄があまりの書かれた言葉に突っ込んだ。
「昭和30年とかの世代なら定番の罵りだから」
魔法使いの爺さんのドヤ顔が出る。
「デベソが? 」
「単純に下手な医者が出産でへその緒をデベソに切ってしまっただけの話なんでは? 」
「いや、剣聖アウロスは母親にいろいろとトラウマがあるらしい」
などと颯真に断言されては否定できない。
そういうものなのかと思うしかない。
「いや、わしも一応剣聖アウロスとは付き合いあったんだが……」
「弟子として憎しみあってる奴と、ちょっと付き合っていた爺さんでは、やはり情報の濃度が違うだろ」
「わし、それ言って、殺されかけたし」
「「「こんなことで? 」」」
一真達が一斉に声を上げた。
皆の顔が驚愕していた。
だが、私は逆に魔法使いの爺さんは120歳近いはずで、まさか昭和三十年代の話だと40歳から50歳代のはず。
そんな年齢の奴がまた若かった剣聖アウロスに「お前の母ちゃんデベソ」とか言っちゃうナチュラルな危なさの方が気になる。
こっちの方が闇が深いのではと……。
「やかましいわ! わしもこんな事で怒るなと説得したら、お前も言ったなって言われて襲われたんだ」
などと魔法使いの爺さんが言った。
ちょっと嘘が入ってるか?
「なんでじゃ? 」
「あんたは、そんな立派な奴に見えない」
「いや、それで剣聖アウロスが異世界転生した冒険者数名を再起不能にしてるんだ。言うだろ」
「マジか」
「そんな馬鹿なことで? 」
私と一真達が驚いた。
「怖いだろう? 何を考えてんだか訳がわかんなくて怖いんだよ……。どんどんあいつは孤立していくしさ。それを本人とそれ以外が喜んでいるからしゃーないよな」
「ヤバい系なんだ」
「だから最初から言ってるだろ? でも異様に強いし、魔族との戦いで戦果が凄いから誰も文句言えないんだ。生きるために金がいるから、そういう場合は積極的に大戦果を挙げて帰ってくるしな」
「人格がちょっとおかしいんだ。過去にあったトラウマで壊れているというか……」
「え? お前が言うのか? 」
私が魔法使いの爺さんの説明に続いた颯真の言葉に驚いて呟いた。
「いや、俺は普通だぞ。徹底的に追い詰めるタイプなだけだ」
「それもトラウマなのか? 」
「いや、ちゃんときっちり後かたずけとかしなさいとか両親から言われてたら、そういう性格になった」
「「「「「「闇が深い」」」」」」」
「なんで? 」
一斉に皆で呟いたので、颯真が珍しく突っ込んできた。
「ちゃんときっちりやるのと、全部始末するのは違うのではないかと思うんだけど」
優斗がそう突っ込んだ。
「いや、そうしないと後で襲ってくるからな。剣聖アウロスみたいにしつこくないけど、魔族ってのはそういうものだから」
「それは、俺達は魔族を詳しく知らないから、良くわからんな」
「そうないうものなのか? 」
優斗と一真が聞いたら魔法使いの爺さんが頷いた。
まあ、そんな馬鹿な話をしている間に丘の頂上を中心に半径500メートルくらいで旗を円に並べ終わった。
周辺は丘があまりない場所なんで、目立つのは間違いない。
「いや、あのさ。剣聖アウロスもテレポートできるんじゃないの? 」
「できない」
「できないよ」
大翔兄の疑問は即座に颯真と魔法使いの爺さんが否定した。
「じゃあ、外の魔物とか皇弟とかはできるだろう? 」
「いや、そんなの仲間とか信じないから」
「一緒にテレポートしたら、テレポート先で仲間に襲われると思うタイプだ」
「人を全く信じないのか? 」
「何もかも信じてなくて、自分の剣の腕とか、そういうものだけ信じているタイプ」
颯真がそう断言した。
「それなら、別に颯真なんか目の敵にしなくてもいいのでは? 」
私が疑問に思って聞いた。
「いや、自分より強いかもって奴は許せない上に、弟子が自分を超えるのも許せないタイプだ」
颯真の断言を聞いて、余計に女神にドン引きした。
最初から、それを知っていて、颯真と剣聖アウロスをぶつけるために颯真を弟子入りさせたとしか思えない展開だからだ。
「酷いな、日葵」
「本当だ」
「だから、あの糞女神は私じゃないというのにっ! 」
それで私が叫んだ。




