表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/167

自称勇者 第十九部 第六章

 この世知辛さ、どこも同じなのかもしれない。


 日本の一部政党には、日本人が幸せになると党員が減ると言う世知辛い政党もあるとかて、マジでその政党の偉いさんが内々の会議でそういう発言をしたとか変な噂が流れていたが……。


 女神にしても信仰の為に心が向くのは、どうしても人々の不幸など助けて欲しいと言う気持ちが必要なのだ。


 だから、ひょっとして魔物と神殿は共存出来たのではないかと思ったり。


 意外と実は世界の対立なんてプロレスで、日本の政治も実は対立している政党同士の政治家は仲が良かったりってある。


「いやいや、そう言うところまで進んでしまうのがお前じゃな」


「なんとなく、何を考えたのか分かるのが怖い」


「付き合いが続くとこういう風に考えが理解できるようになるのが悲しい」


 魔法使いの爺さんの言葉に何故か一真と優斗が頷いていた。


「我々も昨今の環境から、いささか信者の数も減り、魔物が減り過ぎてしまった為に新機軸が必要なのですよ」


 なとど大神官が私にぶっちゃけるのはどうかと思う。


 そもそも、私の心を読んでいるのは魔法使いの爺さんだけなのだが、まさか、この大神官もどうやら私の考えに近い所をついているようだ。


「お待ちください、新機軸とは? そもそも、女神の加護の元でこれだけ魔物を倒し続けてきたからこそ、魔物が減って世界の平安が保たれているのです。それは喜ばしい話のはずなのに、なぜ新機軸などと言うものが必要なのですか? 」


「いや、信徒の減少は我が女神の教えを守るものとして大事なものなのです」


 聖女アイリスが我慢ならずに大神官を問いただすので、大神官も苦しい胸の内にを吐いた。


「それは、より親しみのある教団としてアピールして、人々の女神に対しての尊崇の念を深くしたらいいのではないのですか? 」


 などと聖女アイリスが教科書通りのような話をした。


「つまり、子供時から情操教育をする場として幼児の神学校みたいなのを作り、女神のありがたさと信仰を子供の心に埋め込むと言う事か」


 私がそう続けた。


 こんな事言わないでも、日本でもキリスト教とか仏教とかで経営する幼稚園とかでやっている事で、先んじて教育して洗脳してしまうと言うのはすでに私達の世界では、とっくにやっている事だ。


「素晴らしい! 」


 パチリと大神官が指を鳴らした。


 どうやら、そこまでは、まだ考えとして至っていないようだ。


「はあ? 」


 あまりにも軽い大神官を見て聖女アイリスが驚いている。


 どうやら、こういうのが本来の大神官の姿らしい。


「あくまで親が働きに行く間、子供たちの面倒を見てあげると言うスタンスで子供を預かる神学校を行い、勿論最低限の預かり時の食事代などは請求するけれどもなるべく安く行う。それで預かった子供を女神の信徒として徹底的に教育する。これこそ布教の要にしたらいい」


「またしても、素晴らしい。その通りです。子供の時からの洗脳は大切ですから」


 大神官がパチンパチンと指を鳴らして感心している。


 この爺さん軽いな。


 しかも、洗脳って言っちゃってるし。


「いや、確かにそう言う地道な事は大切ですが、聖女アイリス様の御実家の寄付をいただいて、何とかやって言っている状態で新規の事業など……」


 そう神官の一人がノリノリの大神官に突っ込んだ。


「つまり、信仰の差別化を進めればよいのでは? 」


 キラリと銭ゲバの血が騒いだのか、大翔兄が参加してきた。


「差別化? 」


「つまり、寄付の額によって、その貴族や王族を特別待遇にしているのを下の平民にも進めると言うのはいかがか? そうすれば裕福な商家などは、その待遇を欲して寄付とかを増やしてくれるのではありませんか? 資金を出してくだされば、篤志家として誉めそやして大切に扱って普通の人と区別した待遇にすれば良いのですよ」


「なるほど、貴族、王族に対する待遇に準ずる待遇を寄付によって裕福な商家などからも取ると言う事ですか……」


 大神官がそれで微笑んで指を鳴らした。


 よく見たら、指の切り方が弾指だったので、これ、魔除けかよとか思う。


「ああ、あれは魔除けだ。お金の話をしたりする時に変なものが寄ってこないようにああするんだ」


 魔法使いの爺さんがそう説明してくれた。


 汚れた話をする時にはするんだそうな。


「仏教のパクリかな? 」


「分からんが、まあ、密教から始まった作法だな。不浄を払う方法としてするから、爪弾きの言葉の元になった奴だ」


 私の呟きに、あの弾指には本職なんで気が付いてたらしくて一真が答えた。


「何でも持ち込んでいるんだな」


 恐らくは女神が持ち込んだと見て、優斗も苦笑していた。


「それにしても、お前らの長兄のうちの爺ちゃんの、誰にでも平等にリーズナブルに信仰できると言う考え方と比べると、正反対だな。本当に常識的な兄に比べて弟妹が駄目とか……」


 自分の祖父と違う方向の話をされたので、ちょっと一真がむっとしていた。


 金儲けとしての宗教は気に食わないらしい。


 そう言うとこは兄譲りで立派だ。


「平民に貴族に準じる待遇とは! 王族や貴族に対して無礼であろう! そもそも、そなたは女神様に暴行をしたとか言う御神託があった男では無いかっ! 」


 特権階級に口を挟んだように見たのか、聖女アイリスがキレた。


 悪い御神託があった大翔兄がそれを言ったのも許せなかったのだろう。


 困ったもんである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ