自称勇者 第十八部 第四章
「で、女神はどうやったら会えるんだ? 」
私が単刀直入に聞いた。
「まあ、ナヴァール王国の首都に行って、王城の前の大神殿で話せば伝わるはず」
「大神殿まであるのか? 」
「あの女神の? 」
魔法使いの爺さんの言葉に私と大翔兄が衝撃を受ける。
「いや、普通に、この世界の人間の守護神だからな? 」
「あれでか? 」
「本当だ」
言いながらも、ちょっと自分に帰って来てたり。
何しろ、私かもしれない説があるのだし。
「……ぶっちゃけ、似ているって言ってたじゃん。あの女神……。お前なら俺達を助ける? 」
優斗が私のそんな葛藤に気が付いたのか聞いてきた。
「まあ、居留守するな」
「やはり、そうか……」
「あり得るよな……」
私の言葉で優斗と一真が納得する。
いやいや、優斗はともかく、一真は魂の大甥である事だし、割り切れないものを感じていた。
「まあでも、その場合はケツに火をつけてやればいい。どの道、剣聖アウロスは女神の責任だし、早くあれを始末して戻らないと、出入口の神隠しの洞窟が無くなってしまうぞと騒げば、自分にも関わってくるから助けてくれるだろう。居留守とか無視とかは自分に関わってこない場合の方法だしな」
「えぐいな。自分が関係しないと何もしないのか」
「そう言う部分が釈然としないのだが」
「お前ら、もはや、あの糞女神が私の前提で話をしていないか? 」
温厚な私も怒り心頭である。
何で、そんな話になっているのか、理解できない。
「まあ、違うともそうだとも断言はできないが、恐らく我々兄妹に近しいのは間違いあるまい」
などと大翔兄までそんな事を言い出す。
「いやいや、認めてしまうのか? 」
「似ているもの……考え方が。いらっとして殴ったが同族嫌悪だったかなと今では思う」
「うううむ」
そんな事言われると黙るしか無いでは無いか。
「とりあえず、テレポートとかで首都には行けるのか? 」
そう魔法使いの爺さんと颯真に大翔兄が聞いた。
「廃城の外に出れば出来るが、それでも首都の数キロ離れた場所にしか出来ない。ぶっちゃけ、首都とかはいきなり魔物とかテレポートで侵入できないようになっているから。この廃城をでないと無理なのも、テレポートを阻止する防護陣がまだ残っているからだ」
「そんな中で魔物が暮らしているのか? 」
「ちょっと、矛盾じゃね? 」
「いや、廃城は魔物が入れないようにする防護陣は壊れているからな。それに、そんなんのお構いなしで破って入ってくる剛の者もいるさ」
魔法使いの爺さんの言葉に私と大翔兄で突っ込んだら颯真が解説してくれた。
「で、その剛の者が悲鳴を上げて逃げるのがお前なのか」
私がそれにさらに突っ込んだ。
「何でだか知らんがな……」
そう颯真が苦笑した。
「そんなに強いの? 」
倉吉先輩がそう驚いて聞いてきた。
「とりあえず、上級悪魔がビビりまくって震えるのは見たし、それの言う話だとこいつが攻めてくると魔王が部下を捨てて逃げ出すんだそうな」
「考えて見れば恐ろしい奴等だな」
「いや、俺的にはあんたら兄妹のが怖いと思うけど」
などと解せぬことを話す。
「聖女のスキルしか無いのにか? 」
「殆ど、食料配達係なんだがな」
ちょっと声を荒げて、私と大翔兄が言い返した。
「性格的なやばさは変わらないと思う」
「いやいや、無茶苦茶するし」
そう一真と優斗が話す。
「「それは大げさだと思うけどな」」
私と大翔兄が同時に答えた。
「まあ、ここは何度も来たことあるから、ここから入り組んだ廊下を少し歩くと壁が壊れている所があるから、そこから出よう」
颯真が私達の言い合いを見て苦笑した。
「まあ、すぐには来ないだろうが、目的が颯真なら追って来るだろうしな。こんな廃城なんかで戦いになったら、こっちがやばいだろうな。こういう場所での戦いは剣聖アウロスは得意だ」
魔法使いの爺さんも同意した。
倉吉先輩は今聞いた話の特に颯真の話が納得いかないのか、ちょっと不思議そうな感じで聞いていた。
「そう言えば、この廃城に出てきたが、戻る場所もあるのか? 」
大翔兄がそれを魔法使いの爺さんに聞いた。
「多分、ランダムに出てくるだけだろう。その手のコントロールは女神ならできるが、ああいうのは次元に開いた穴みたいなものだ」
そう魔法使いの爺さんが説明する。
「では、追って来ても、廃城に現れると言う事は無いのでは無いか? 」
大翔兄が真っ当な発言をした。
「いや、ここは弄ってるからなぁ。あらゆる魔法使いと女神も触ってたらしいから、あちらからの出口はここになる可能性が高いと思う」
と言う魔法使いの爺さんの答えだった。
「ちょっと、聞いてなかった事を聞いていいかい? 」
大翔兄が神妙に魔法使いの爺さんと颯真に聞いた。
「なんじゃ? 」
「なんだ? 」
魔法使いの爺さんと颯真が怪訝な顔をした。
「その……なんだ……マヨネーズはすでにあるのか? この世界? 」
「あるぞ」
魔法扱いの爺さんが冷ややかに答えた。
「くそっ! 」
なるほど、必殺パターンか。
マヨネーズを売って一儲けと言う事だな。
「ふふふふふ、考えている事は同じか」
「まさかの異世界転移。これを利用しない奴はいるまい」
私の突込みににやりと大翔兄が笑う。
「ならば私から問おう。脚気は認知されているのか? 」
「されてるぞ」
私の質問も脆くも粉砕された。
マヨネーズと脚気治療は定番であるはず。
糞ぅ。
「あほな事考えるよな。これだけ異世界転移してるんだから、普通にあるだろうが」
などと、優斗が貶すが諦められない。
「水を綺麗にする、ろ過装置は? 」
「味噌、醤油は? 」
などと必死に私と大翔兄は聞き続けていた。
何かあるはずなのだが。
だが、魔法使いの爺さんも呆れたように首を振るだけだ。
全部あるのかよっ!




