自称勇者 第十七部 第一章
中村警部補と佐々木警部補と海老原巡査長は黄昏ていた。
自分達が死んでいると言う現実とゾンビになったと言う状況がそうさせているようだ。
もう暗いのに寺の縁側で座っていて、ぼんやりしている。
それを陰から遠巻きに眺めている私達、大翔兄と一真と優斗と魔法使いの爺さん。
「やはり、死んでいたと言う結論はショックなのかな? 」
私が魔法使いの爺さんに聞いた。
「そりゃ、ショックだろう。生きている間に死んだらゾンビになりたいとか言ってたらともかくも。特に、嫁さんとか子供さんとかいるなら余計に嫌では無いか? 」
「でも、変わらずに付き合って暮らしていた人がいたんだろ? 」
「あれは特殊な例だろ。そこまで愛していたからな。結局、死者は死者だから、普通に葛藤するだろ」
「やっぱりゾンビ化しない方が良かったのかな……」
私達の話を聞いて一真がそう呟いた。
「いや、一真は反省しているけど、ヤクザさんの時は良かったんじゃないの? どうなのよ? 」
「あれは納得して貰ってしていたから」
一真がそう申し訳なさそうに呟く。
「だが、協力はいるんだろ? 」
「剣聖アウロス撃退するなら必要だ。一番厄介なのは間違いないし」
魔法使いの爺さんがそう断言した。
ただ、それはこちらの都合だしなぁ。
「いや、お前も同意しといて、そんな事言うか? 」
「いや、問題は協力を頼めそうに無いよな。私もちょっと反省している。ゾンビでも生きていて良かったってならないんだ」
「だから、そう言うところがお前がズレている所なんだよ」
優斗が偉そうに言う。
「生きていて喋れて、普段と変わらないのなら、別にいいやってなんないんだなぁ」
大翔兄も同じ考えのようだ。
「あまり関係ないのかと思ったよ」
私も同感だ。
「いや、やっぱり嫌だろ? 」
「普通に嫌だろ? 」
「いやいや、そんな風に私に言われても。そうしないとまずいって。魔法使いの爺さんが力説するからさぁ」
「そうそう」
優斗と一真がそう詰め寄るように言うから、正直な話をしてしまうと大翔兄も同意した。
「お前ら手のひら返しとか」
魔法使いの爺さんがマジでムッとした顔をしていた。
「私が最終的に判断したんだから、私が話をしてくるよ」
いつの間にか住職の志人兄がいて、話しかけてきたんでビビる。
「よろしくお願いします」
大翔兄はいつもの事なんで、そう頭を下げていた。
結局、転生しても志人兄は損な立ち回りと言うのがせつない。
「いや、お前……」
魔法使いの爺さんが心を読んだのか、凄い顔して突っ込んできた。
いつも、そうなんで、逆に慣れてしまっている自分に困る。
これが普通に思っていると言う現実だ。
「何、思っているか、なんとなく分かるわ」
「あんたの兄の魂だけど、今は俺の爺ちゃんなんだしさぁ」
「つまり、大甥って事か」
「そうなるな」
一真の愚痴を、私と大翔兄であっさり切り捨てた。
それで一真の顔が歪んだ。
「生まれ変わってもケツを拭いてもらうと言うのはいかがなものか」
優斗が突っ込んできたのが的確でビビった。
「それは否定できないな」
「確かに」
私と大翔兄が唸る。
全然、私達がやってることが、昔と変わって無いので申し訳ないのは確かだ。
「というか、他にハイグレードゾンビとか意外に無かったのか? 」
「デス・ソードマンとかあるけどヤバそうで……」
私の突込みに一真が呻く。
「ああ、あれは宜しくないな」
そう魔法使いの爺さんが答えた。
「宜しくないのか? 」
「攻撃を強くするために、身体も変化するから、この世界だと異様で街を歩けない」
私の突込みに魔法使いの爺さんが答える。
「そんな、凄いゾンビがいたのか」
「やばそうだから避けてよかったんだな」
「強さで言うなら、それでよかったのでは? 」
「そんな風になった自分を見たらどう思う? その場合はそうした俺達を恨むだろ? 」
一真が凄く正しい言葉を告げた。
「ううむ、確かに」
「それはあるだろうな」
私と大翔兄が唸る。
「その想像力の貧困さと言うか適当なの何とかならないの? 」
「いや、本当だよ」
「絶対に、考え方がおかしい」
などと皆に文句を言われた。
その間に、住職の志人兄が中村警部補や佐々木警部補や海老原巡査長に深く頭を下げていた。
本当に申し訳なさそうにしている。
懐かしい姿だな。
昔からああやって私達のやらかしを謝って貰ったっけ。
などと私と大翔兄がいろいろと思い出してほっこりしていた。
「駄目だ、こいつら」
魔法使いの爺さんがそう顔を伏せた。
それで察したのか優斗と一真も顔をしかめていた。
「まだ、揉めているんだ」
などと颯真が来た。
「まあ、ちょっと、剣聖アウロスを倒すためとはいえ、やり過ぎたかと……」
「でも、倒すなら、早くやった方が良いがな。厄介だぞ」
颯真はそれでも倒さないとって感じは変わらなかった。
まあ、弟子だけにいろいろと嫌なものを見ているんだろう。
「で、今日はどうなの? 」
「今の感じでは、誰も仕掛けてきそうにないな。敵がいるわけでもない」
颯真が大翔兄に答える。
何だか知らんが、一番、敵に対しての察知能力が高いので、結局、索敵は本来やるべき魔法使いの爺さんでは無くて、颯真がしていた。
それから、私達は住職の志人兄の方を見たが、なかなかすぐに中村警部補も佐々木警部補も海老原巡査長も納得と言うわけには行かないようだ。
深刻そうに話は続いていた。
「いや、他人事だな」
「私達が参加すると、大体、いつも向こうが激怒するからな」
「そうなんだよ。困ったことに」
魔法使いの爺さんが心を読んで突っ込んできたので、私と大翔兄はそう返したが、皆が呆れ切った顔をしていた。




