7.イケメンは好きですか?いいえ、どうでもいいです
唯愛のおかげでマイエンジェルこと宇多津さんとの関わりが増え、数日がたった。午後のホームルームが終わった放課後、俺は何もやりとりがされていないトークルームを眺めていた。相手の名前は「宇多津琉瑠夏」。そう、俺は悩んでいた。連絡先交換したのはいいけど、何話せばいいのか問題に。ん~「今日は月が綺麗ですね?」とかか。いやいやまだ夕方だし!それってもはや告白してるしどっちかというと俺は月じゃなくて太陽で焦がされて死ね!って言われる方の人間だし(被害妄想)!モテ戦士たちは連絡先交換した後、どうやって話すきっかけ作ってるんだよ。
唯一のきっかけである昼の誘いも毎回唯愛が約束を取り付け、俺は昼休みになるといきなり連行されるという流れになっている。しかも、唯愛は連行をするときに俺の両腕が手錠で繋がれたように見せかけながら連れていくんだけど。もはや周りから見たら主人と奴隷みたいな感じだし、この前知らない男子に「そういうプレイか」とか言われてたんですけど。もう軽く飛び降りたいんですけど。…でも、ちゃんと反抗したんだよ?そしたら「おまえはすぐに逃げ出しそうだから」とか的外れなこと言われて逆ギレされたんですけど。俺、連行の仕方に問題あるって言いたかったんだよ?唯愛さん?…でも可愛い子に連行されるの…なんか…ドゥフッ…良い。唯愛でもよいと感じる。君もそう思うでしょ?そうでしょ?ねえ?
「よー、綾瀬」
「なんで良い思わないんだよ!!!!!!」
「えっ、はぁ?」
あっぶねー。いきなり話しかけられるから心の声出そうになったじゃん。てか、誰が俺に話しかけたんだ?全然存在に気付かなかったんだけど。
「びっくりした!いきなりでかい声出すなよなー」
終わった。出てた声。なにが良く思わなかったのかに突っ込まれて、奴隷プレイのこと考えてたのバレたらやばくない?退学した方がいいよねそうだよね…先生、ご相談があるのですが…
そんなことを考えていると前の席に話しかけてきた男が座った。もれなくイケメンである。その刹那、俺のIQ200(嘘)の頭脳がフル回転し、なぜこのような状況になっているのかが早急に判断された。そう、かつあげである。カツアゲしかない。そうとなると…やることは一つ。
「ごめんなさい…どなたかは存じ上げませんが、今日はレンタル彼女で人生最大の幸福を味わい、全財産を失い、天に帰る予定なのでお金はありません…あああああ、哀れな自分をゆるひてくだしゃ」
「なんでカツアゲされると思ったんだよしかも今日で人生終わらせんなよ、それに俺は成瀬だよ」
「なんだ成瀬かイケメンだからびっくりしたわ。驚かせんなよ」
「そんなこと言われる方がびっくりするだろ普通」
このイケメンは成瀬。下の名前は興味ないから知らない。仮で太郎にしとくか。なるせたろうくーん。同じクラスで前からちょくちょく話す仲である。バスケ部に所属しており、そのイケメンさから大人気らしい。ちなみに俺はいつもこのイケメンと話す時は脳死状態であるため、今まで話した内容はほぼ記憶に残っていない。よって、知らない人である。
「まあ、いいや。おまえ最近他クラスで修羅場ったって話題だぞ。なんとそこには宇多津琉瑠夏もいたとか」
「おまえの浮気三昧よりはましだけどな」
「したことねえよ!!!!!それに今彼女いねぇし!」
え、イケメンって知らないうちに浮気してるもんじゃないんですか!意識しないうちにそんな状況になってるんじゃないんですか!日陰者だからわかんなかったなぁ!
「心の声が漏れてる綾瀬!イケメンのことなんだと思ってるんだよ!」
「国宝」
「もうわかんねえ!善か悪かまったくわかんねぇ!」
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「色々あって宇多津さんと仲良くしてるだけだよ」
「おまえそれでも幸せものだよなぁ。あの宇多津琉瑠夏と仲良くしてるなんて。俺もそうなりてぇ」
心の底から羨ましいと言わんばかりに話す成瀬。そうだよな、この前まで知らなかったけど、学年一の美少女と言われてるんだもんな。そりゃ、いくらイケメンの成瀬でもそんな言葉が出てくるわけだ。
「羨ましいだろぉ?」
「うっぜー」
ふと、考えてしまう。宇多津さんは成瀬でも同じ優しさを向けるのだろうか。成瀬はイケメンでバスケ部でめっちゃモテてて、それに成績も優秀。こんな自分とは正反対の「おもしろい、人間的に魅力のある」やつ。客観的にみるとこういうやつが宇多津さんの彼氏になると納得できるのだろうか。自分は納得できてしまう気がする。そして、この宇多津さんとの交流は、宇多津さんの目の前に魅力的な人が現れたら雪のように消えてしまうだろう。だから、今を楽しんで良い思い出とするしかない。
「おまえには絶対宇多津さん紹介しねーからな。あっ、唯愛なら全然紹介するぞぜひさせてくださいお願いします!!!」
ふふ、スムーズにいったら俺への暴力が大幅に軽減される!このチャンスを逃すほかない!俺はあのゆるふわ偽ってるくせに握力権力大魔王レベル女から逃げるんだ!!!!!すまんな成瀬!!!!お前が餌食だ!!許せ、ガッハッハ!!!!
「いやいや…同じクラスだから全然知ってるんだけど、友達だし」
「成瀬失礼ー!圭太ー♡一緒に帰ろうねー♡」
はい。いつものやつね。了解。いってえ!!!掴む力痛すぎる!!!!いつもの5倍くらいあるんじゃねぇの!!!命だけは、、命だけはお助けくださいぃぃぃぃぁぁぁぁ