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2.付き合う妄想するまでがテンプレート

 自分ではどうしようもない気分になる日。努力しても報われない勉強、些細なことからねじれる友人関係…原因は人それぞれ。


 綾瀬圭太は刺激のない日常に悩んでいた。朝起きて何もない学校生活を過ごし、帰って一人時間をつぶし…いつもは何気なくこの時間を過ごしているのに時々、不安が襲う。自分はこのままでいいのだろうか、周りの人みたいに「青春」を過ごすようにならなくていいのだろうか。たぶん自分がこんなだから。面白くないから、面白くない日々で暗い気分になるんだ。存在意義を見失ってしまうんだ。


「あ、あの!良かったら、こ、これ、飲んでください」


 その声が聞こえた瞬間、この悪循環な思考が澄み渡るように消えていった。

 声が聞こえたに目を向けると、そこには女の子が心配げな顔をして自分を見つめていた。


*******************************************


「それでさ、その子とどうなりたいの?付き合いたいわけ?」


 ある日の昼休憩、唯愛は俺の机に頬杖をしながら聞いてきた。というかゆるふわな見た目でけだるそうに聞くなよなんかイメージ崩れるだろ。そこは「圭太くんはその子と付き合っちゃうの?きゅるるん」みたいな少し泣きそうな顔で聞いてくる感じじゃねえの。ったくこれだからゆるふわ(仮)は。失礼しちゃうぜ。


「今心の中で私に対してめちゃくちゃ失礼なこと考えてるのはわかるもしかしたら今飲んでる牛乳が手を滑って圭太の頭の上に…」


「お、おていちゅいて!そ、そんなこと考えてないんだからね!」


 焦って言葉遣いがツンデレでもなくただ気持ち悪くなってしまった。牛乳を頭の上からかぶったらそれこそ、その子に近づけなくなってしまうじゃないか。クラスでもあだ名が牛乳マンになってしまうぞ。ダサいとかよりあだ名のセンスなさすぎだろ。


「付き合いたいかどうかかー。まあ、そりゃ、うん、ちゅ、付き合い、、たいはまた考えるとして、お近づき?には、なりた」


「あんた今すごいキモイ顔してるしそんなだったら振られるどころか通報されるよ?」


「やさしい顔でそんなこと言わないで…」


 所詮陰キャは陰キャのまま。俺みたいなやつが簡単に青春始めれるわけないですよねー。誰か教育してください。

 でもよかった自分がそんな顔してるのなんか気付かなかった。唯愛は優しいな。あ、あと言い方だけはマイルドにしてくれたら、完璧だったのになあ。惜しいなあ。

また自分に対して評価されていると勘づいた唯愛はこちらに優しい視線を向けていた。こんな優しいまなざしに少しの殺意が見えるのはなぜだろうか…。これ以上はやめておこう。


「そいやさ、その子とはどこで出会ったの?」


「んー。通りすがりの道のカフェの前。その時に俺にドリンクくれてさあ」


 本当にあの瞬間に出会えてラッキーだったな。たまには人生にはいいことがあるものだ。あの子からもらったカフェラテ、美味しかったなー。こんな話だけでもその時の思い出が蘇ってしまう。


「も、もしかしてカフェの店員とか…?」


 唯愛は少し顔を引きずりながら聞いてきた。なんで困っているんだ。


「うん、そうだけど?」


「そっか…あ、カフェでもチェーン店の喫茶店とか?」


「全然ちがう。チラッと見たらめっちゃイ○スタ映えしそうなとこだったかな」


 その子からドリンクをもらったあとに少しカフェを見ていると座席の数は少なく、ドライフラワーやそれぞれ違うデザインのインテリアが並んでいた。机の高さを座席ごとに変えるだけでもなんかおしゃれに感じた。


「それは俗にいうおしゃカフェ…ってことね」


「そうそう!服も清楚でおしゃれだったなあ…淡色系?っていうんだっけ…そんな感じだった…へへ」


 どんどん顔が曇っていく唯愛。とても深刻な雰囲気になっていく。何俺余命宣告でもされるの?明日○ぬ感じ?最後にママのハンバーグ食べたかったな…。

 そんなことを考えていると、急に唯愛が朗らかな優しい顔になった。え、どうした?急に世界線変わったのか。唯愛は食べ途中のご飯を置き、椅子を俺の隣に動かしてきて「よしよし」と頭をなで始めた。これが包容力…ああ、、唯愛ママん…

 そして、唯愛ママんはゆっくりと口を開いた。


「圭太くん、たぶん付き合えないよ」


「ぎゃあああああああああああああ」


 人生史上最音速で出た悲鳴だった。


「ちょっと!落ち着いて、わかったから落ち着いてってば!!!」


*******************************************


「ね!私がなんかあったら相談のるから!ね?とりあえずそのカフェにいってみればいいじゃん!まだ知り合いでもないんだし!」


「ぐずっ、どうせ僕みたいな陰キャ惨めエロゲモブには無理ですよ…」


「そこまで言ってないからさあ、、元気出してよ、、」


 え、そこまでってことはちょっとは重なってるってこと?え、自分は全然そんな奴じゃないって思って言ったんだけど心に刺さるじゃん!?唯愛さん!?


「でも久々にちゃんと圭太の楽しそうな顔見れた気がするかな」


 少し嬉しそうに唯愛は言った。確かにそうかもしれない。心のもやがとれた心情で話す時が久々に訪れているかもしれない。でも、唯愛をはじめとしたこんな俺に話かけてくれる人には明るく接したり、俺は明るさがあるやつで暗くなんかないんだぞって見せつけたかったかもしれない。でも、ちがう。それをやるばかりでは自分の心はなくなってしまう。だから、自分に嫌な気持ちがわいてくるんだ。今のこの晴れた気持ちはあの子のおかげであるのか、それとも…


「まあ、そうかもしれないな」


 少し視界が曇ったような気がした。












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