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十六話

 私の国は大国というには小さいが、小国と言うには大きい国である。それでも、この大陸においては一、二を争うほどの影響力を持つ国である。ちなみに、他に一、二を争っている国は魔法に長けている国と、この大陸の物流を牛耳り他大陸とも多くの資源をやり取りしている貿易大国である。

 なぜそれほどの影響力を持つのか、それはこの大陸では科学力の分野において最先端におり、その技術力を存分に使った兵器を有している。そして、多くの土地を開拓し、より技術を発展させるための資源を集めている。しかし、そんな国でも悩みがなくなることは無い。今、私の国は大きな問題に直面している。

 国のトップ、この国方針はほぼ私の独断で決定することができる、いわゆる独裁政権と呼ばれる体制である。一応、最終決定権が私にあるだけで、部下や民衆の声を聞きそれに基づいた政治を行う、所謂私利私欲に溺れた独裁者ではない。そんな私は今、目の前に大量に積み上げられた書類に目を通し、判子を押している。

「国王さま、例の人型自立思考戦闘兵器の件ですが」

「手短にして、こっちもこっちで手一杯なんだから」

 私に声をかけてきたのは、側近のアビスだった。彼とは幼少のころからの付き合いで、幼馴染の関係である。そんな彼は、ただでさえ書類で手一杯の私に新たな問題を持ってきた。

「研究所を脱走後、追跡していた戦闘機を全機破壊し逃亡を続けています。さらに、逃亡の手助けをしたものが、四名。こちらです」

 目の前に並べられる四枚の写真。一人は大きな帽子と大きな杖を持つ、見るからに魔法使いらしい女、一人は錬金術に見られる錬成陣と手に爆弾を持っている者、一人は隣国でも見慣れない珍しい格好をした年行かない少年、一人は他の戦闘機に斧を突き刺している者が写されていた。

「成り行きという形でしょうが、結果的にこの四名は逃亡を手助けしています。また、この少年以外は、我らの警備用戦闘機を破壊している者達です」

「うぇ、まじ?」

「まじです」

 ただでさえ、国全体が不作に襲われて食糧危機に直面しているにも関わらず、余計な事案が舞い込んでくることに、私の胃が痛む。

「現在そのうちの三人と共に、我らの国に隣接している無主地へと向かっているようです」

「・・・無主地ねぇ」

 無主地、何処の国もその土地に対して領有権を主張していない、何処の国にも属していない土地の事を指す。こうした土地は何かしらの問題を抱えていることがあり、何処の国も欲しがらない土地である。現にこの土地にも問題があるため、隣国も私の国も欲しいとは思わない土地であった。

「まぁ、その土地の範囲内なら私達が勝手にしても大丈夫、かな」

「そうですね」

「とりあえず、現状維持。可能なら捕縛して、難しいなら破壊。あれだけの技術を諸外国に漏らすのは危険よ」

「承知しております、直ちに周知してきます」

 自立稼働戦闘機、ある程度の決められた範囲ならば自身が判断して戦闘を行ってくれる戦闘機たちであり、この程度の物ならば、私の国以外にもある程度科学力が優れている国でも見ることはできる。魔法大国ではゴーレムと呼ばれる魔法兵器で似たようなものも存在していて、珍しいものではない。しかし、今私達が問題しているのは、それの発展型が逃げ出してしまったことである。こちらが事前に決めておいたこと以外の状況下で自己判断を行い、より高い戦闘能力を誇る兵器として期待していたのだが、開発者の意向が含まれた設計により、感情を持った戦闘機は脱走をしてしまった。これは技術の結晶でもあるものであり、それが諸外国に漏れてしまっては、この国のアドバンテージを大きく失ってしまうことに繋がる。故に絶対に戦闘機を国外に出してはいけなかった。

「あと、他国への交渉はどうなっているの?」

「・・・芳しい物とは言えませんね」

「そう」

「例にない広範囲による大規模な不作、それに伴い辺境の農村部から飢饉が発生しています。食糧がない村同士で食糧の奪い合いが発生しており、中心部であるここに来るのも時間の問題です。そして、隣国に対して食糧援助の要請は、受理されませんでした」

「・・・」

 国が飢饉に備えてある程度食糧を備蓄するようにしているが、それでも保管場所は食料の保存期間と備蓄能力により、蓄えておけるだけの数には限界がある。仮に蓄えを際限なく放出してしまっては一週間も持ちはしないだろう。だからこそ、弱みを晒してでも他国から食料を調達する必要性があった。それなのに、その要請が受理されなかった。つまり、他国はこの国に食糧援助を行うつもりはない意志の表れだった。

「例の国からはどうなの?あそこなら」

「・・・」

 私の問い抱えにアビスは、顔を逸らした。それで私は顔に手を当てた。

「食糧の援助を受けられませんでした。相場よりも高く提示しても、でした」

 貿易大国、あの国に恩を売られるのは癪であるものの背に腹は代えられない状態。それ故に向こうに援助を求めたが、結果はこの通り。貿易大国の食糧の余裕、さらに他国から食料を集めやすいはず、それなのに受けられなかった。

「・・・食糧の備蓄はあとどれくらい?」

「災害時用の食糧で中央都市だけならば、持って二か月ですかね」

「もう、手段も選んでられないか」

 そろそろ私は心を鬼にしなければいけないのかもしれない。

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