十四話
連絡
タイトルが「異界記カードバトル」から「物理と魔法とカード」になりました。
鬼咲「事実だから、何も言えねぇ」
藤野「物理組がね、ハハ」
「ッチ」
私は思らず舌打ちを漏らしてしまう。先ほどから戦闘機は搭載されている機銃を使わず、同時に装備されていたブレードで近接戦に持ち込まれていた。それに対して、私が扱う魔法の大部分は小回りが利くような魔法をほとんど持っていない。そのため、接近戦に持ち込まれることはとても嫌なことであった。
「だぁ!!さっさと吹き飛びなさい!!」
自他共に吹き飛ばす威力の低い風魔法。この魔法は接近されたときに無理矢理距離を作るために編み出した魔法だった。
どうして私がこんな形で戦うことになったのか、それは私がこの村に到着してほんの少し経った頃だった。少し村人の方々、主に男の大人の方々に話していると何故か命乞いをされてしまう物理的なお話をしていると、どこからか現れた戦闘機達が村を荒らし始めた。そして、たまたま村に居合わせていた私に対しても襲い掛かってきたので、私は正当防衛で戦闘機が撃ってきた弾丸を防いだのだが、跳弾が戦闘機に当たってしまった。そのためなのか、執拗に戦闘機達は私に対して攻撃を仕掛けてきたのだ。おまけに、私に狙いを定まらせないようにするために、複数の戦闘機が同時に多方面から攻撃を仕掛けてきた。
(カードの力を使おうにも、初期手札はランダム、使えるカードを引っ張ってくるために何十手もやらないといけない。大魔法をセットする暇も、カオスドラゴンを出すための魔法カードを墓地に貯める暇はないか)
私のデッキは一ターンで何度も効果を使ってデッキを掘っていくデッキである。ターン数的に見れば速攻よりかもしれないが、現実で経過する時間はとても長い。そんなデッキでは本物の銃と剣と攻撃をしてくる相手には、手札を全て確認しデッキに残されているカードを考えながらでは、とてもではないがまともに回している余裕はない。
「だったら」
新たに魔法陣を広げ、その中を通り抜けると私の纏う衣装は新たなものに変わる。衣装が変わること自体にはなんの意味はない、けれど、私の心の持ちようは変わる。気持ちが変わるだけであるものの、精神状態も戦闘には大きく関わるので案外馬鹿にできない要素でもある。
「さぁ、暴れましょうか!!」
紅と朱、真っ赤に染まる衣装で身を包む。暑苦しさすら覚える衣装へと変え、持っている杖を真上に放り投げると、袖の中に手を入れ、小さな杖を取り出し振るう。直後、杖先からは真っ赤な炎が現れ、周囲を焼き尽くす勢いで炎は燃えていく。
「耐火性能はどれほどかな!!」
間近に居た戦闘機へ炎を一点集中で放つ。最初は焚き火程度だったが、瞬く間に炎の色は青く変わり、周囲の空気が熱くなっていく。その熱気を感じ取りながら魔法の有効性を確認し、過剰すぎず、不足過ぎない火力で戦闘機を焼き溶かしていく。途中、家に火が燃え移り、全焼しているが後で水だけはかけておこう。
私はうぬぼれではないにしても、カードに力が封じられている状態でもそれなりに力がある方である。恐らく、私は個人でカードとして封じられている力の種類は相当多い方であるが、例え力が封じられていてもこの程度の戦闘機相手ならば今の状態でも十分応戦することができる。
「・・・ちょっと、服焦げたかも」
飛び交う弾丸も炎で焼き溶かし、再稼働を決してできないよう溶かしきった。遊びなしで戦うのは性に合わない。大きく息を吐きだし、小さな杖を袖の中に仕舞い、地面に突き刺さっている杖に手をかけようとした瞬間、視界の隅で何かが光った。
「!!」
杖を取るのを止め、すぐに姿勢を低くして後ろに跳ぶ。直後、思わず耳をふさぎたくなる爆音が響き、ハカネが立っていた場所に音を置き去りにするほどの速度で弾丸が通過し、射線上にあった建物の壁に当たった。壁は小さな弾丸であったにも関わらず、壁全体に亀裂が走り家は倒壊した。
「何ミリ弾よ」
倒壊した建物とは反対の方向へと顔を向けると、そこには自分があっさり倒した戦闘機とは形状は異なり、大口径で長いバレルを持つ戦闘機が居た。そして、その銃口は自身へと向けられている。一度無理な回避動作を取った直後、続けて回避動作へと移るのには時間が足りない。手足が持っていかれるのは覚悟のうえで、頭と胸、致命傷部位を重点的に守るように魔法陣を広げた。
再び響き渡る耳を塞ぎたくなる銃声、それは確実に私を捉えたうえで放たれた一発だった。
「狙いが良すぎるのも考え物ね」
放たれた弾丸は私の致命傷部位を捉えていた故に、展開していた魔法陣が弾丸へと直撃し、軌道を大きく変えてハカネの横を通り過ぎて行った。
(若干魔法陣を斜めにして弾丸を逸らしたからどうにかなったけど、真正面から受け止めたら魔法陣砕けて私死んでたかも、怖)
自殺志望はあっても、まだ死ぬ気は無い。次弾が撃たれる前に姿勢を立て直し、すぐ近くにあった遮蔽物へと身を隠した。
(家ぶっ壊すくらいだから、これ位簡単に壊されるだろうから、すぐに動かないとね)
袖から自身のデッキを取り出し、サイドデッキから何枚かカードを取りメインデッキと入れ替える。
(今使える魔法じゃ防御面と威力が足りない可能性がある、今回は、速攻で)
「フィールドセット、レリーズ」
デッキを光へと変え、カードの力を使える状態へと変えるとデッキへと手を伸ばし初期手札の五枚、先攻ドローのカードをドローする。
「よし、これなら動ける」
手札を確認し、動き方を決めると宙に浮くカードを手に取り駆けだす。
「魔法「魔力の前借」を発動、マナを二増やして三ターンマナチャージ不可、続けて、コスト四マナ魔法「スリードロー」三枚ドロー、魔法「複製魔術」で三枚ドロー」
直前に発動した魔法カードの効果をコピーすることができる魔法を使い、一気に手札を増やす。途中、戦闘機が再びこちらに狙いを定め、新たな弾丸を撃ち出した。
「あぶないな、魔法「ハンドトレード」全捨てからの同じ枚数ドロー、魔法「魔力の前借」続けて、魔法「複製魔術」で四マナ追加、口上省略召喚条件は雑に「ハンドトレード」で満たした「悪魔竜カオスドラゴン」を召喚!!」
普段扱うデッキは、様々なデッキと状況に対応することができるよう、柔軟な動きがデッキをベースに組んでいる。しかし、今回のデッキは速攻寄りの構築に変更している。本来ならば、大量の手札交換カードを利用し、カオスドラゴンの効果を十二分に発揮できるようしているが、今回はとりあえずカオスドラゴンを召喚するための構築へと変わっている。
「カオスドラゴン!!やっちゃいな!!」
見たら思わず吐き気を覚えてしそうな見た目をしているカオスドラゴンは、目の前にいる戦闘機は直ぐにカオスドラゴンへと銃口を向け直し、弾丸を撃ち出し、銃声が鳴り響く。
撃ち出された弾丸はカオスドラゴンの翼腕の根本あたりに直撃し、底よりの先の翼腕はぼとりと音を立てながら落ちる。しかし、カオスドラゴンは何をされたのかを分かっておらず、それどころかまるで効いていないかのようにしている。
「うわぁ」
カオスドラゴンの素のパワーは低いとも高いとも言えないラインである。しかし、召喚条件を満たしている時点で攻撃力は三千上がり、約一万程度のパワーを持つ。そんなカオスドラゴン相手にカードの力を使わずにダメージを与えたことに思わず声を漏らす。
「まぁ、この子あほみたいに硬いけど」
落された翼腕は独りでに動き出し、ミミズのように体を曲げては伸ばすを繰り返し、カオスドラゴンの落された部分へと行った。そして、何事もなかったかのようにくっ付いた。
「破壊はされなかったけど、カオスドラゴンはトラッシュの魔法カードを六枚戻せばフィールドに留まる。どうあがいても逃げられないから」
カオスドラゴンは戦闘機へと噛みつく、弾丸を撃ち出されてそれほど時間が立っていないバレルは熱を帯びており、触れるだけでも焼けどしてしまうほどのものである。しかし、カオスドラゴンはそんなことを気にするどころか、自身の肉が焼けていることに気が付くことすらなく、戦闘機を嚙み砕いていく。
「うわぁ、付き合い長いけど、こいつの事本当に好きになれないわ。強いけど」
デッキに採用したうえ、愛用している私が言うべきセリフではないものの、何度見てもカオスドラゴンは好きにはなれない。こんな気持ち悪い見た目をしているモンスターを好き好んで使う者もそう多くは無いだろう。
「・・・蓋を開いてみれば案外呆気ない物ね」
使ったカード達を手元に戻し、デッキケースへと戻そうとするが、カードの一枚だけが私の手元に戻ってこなかった。一体何のカードかと周囲を見渡そうとするが、原因のカードは目の前にいた。
「ったく、しばらくしたら戻ってきなさい」
カードに戻らないカオスドラゴン、こいつがなぜカードへ戻らずこの場にとどまっているのか、それはおおよその検討が付く。幸い、この場所にはこいつが求めるものが存在するから勝手にさせることにした。
「さて、カオスドラゴンが餌を食べ始めちゃったし、私がここでやることはもうないかな」
手元の三十九枚のカードをデッキケースに入れてから袖の中に仕舞うと、魔法陣を広げて着ていた服を元々着ていた物に戻す。丁度、私が来た方から二人の人影が見えてくる。
「ハカネ何があった!!」
「大丈夫ですかって、カオスドラゴン!?」
走ってきたテスタロッサは家を破壊し、家の中に隠れていた村人たちを無理矢理引きずり出し、口に咥えている様子に思わず声を上げてしまう。そして、周囲に赤い液体が飛び散っているが、その様子に一切コメントを入れず止めに入らないハカネにアクアは大きく息を吐いた。
「結局、やってるじゃねぇか」
「私はやってないわよ?あの子が食べたいって言ったからだし、あと私は手を出してないから。それと、ちょっと戦闘機に襲われたけど、全部破壊したから」
「いやいや!?あれ止めないんですか!?」
「「カオスドラゴンを止めたら面倒なことになるから放置」」
「ええ??」
それが当たり前のように答える二人にテスタロッサは何といえばいいのかわからず、頭を抱えてしまう。しかし、そんなテスタロッサを無視して、あることに気が付いたハカネが質問をした。
「零はどうしたの?」
「「あ」」




