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十三話

 村から移動を初めて数時間、ハカネは移動の疲れを一切見せずに目的の村へと辿り着いていた。ただ、直ぐには村へと入らず、少し離れた丘の上で様子を見ていた。シュレが言っていた通り、この村も不作が起きている。その為、村の田畑の作物は遠目からでもわかるほどに酷いものだった。この状態ならば、他の村を襲ってでも食料を奪いたくなるのは無理もないだろう。しかし、ハカネにとってそんなことは関係ない、今はどうやってこの村を効率的に攻めるか、それしか考えていない。

「とりあえず、俺らはこのあたりで待機してるからな」

「できれば焚き火炊いてほしくないんだけど」

「知るか」

 こんな所で焚き火を炊けば、煙が目立つ。しかし、アクアはそんなこと知ったことかと、火を起こし、枝を追加していく。そして、焚き火の上には鍋が吊るされていて、食事の支度すら始めている。

「まぁ、どうせ正面突破なんだろ?」

「そうねぇ、そっちのほうが手っ取り早いかな」

 ハカネは杖を付きながら一人村へと歩いていった。

「あの、一人で行かせて大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ、どうせ」

 アクアが言い切る前に村の方から火柱が上がった。

「「ああ」」

 すでにハカネが暴れているのは確認しに行かなくてもわかる状態だった。こうなってしまっては死者が出ていないことをただ祈るしかできなかった。それに対して、アクアは気にすることなく、鍋に食材を入れ始めた。

「まぁ、なんとかなるだろう。お前ら二人をハカネと一緒に連れて行ったら、片方は気絶、片方はハカネと揉めて収集が付かなくなるのは目に見えている、大人しく俺等はここでのんびり待つぞ」

 アクアが鍋にソーセージを入れて肉に火を入れようとした瞬間、アクアは手に持っていたソーセージを袋に入れ直し、袖の中から投げナイフを取り出して投げた。

「誰だ!!」

 投げられたナイフは背後にあった木に突き刺さり木を揺らす。それに続き、テスタロッサもリボルバーを取り出し撃鉄を降ろす。零は姿勢を低くし、頭を覆い隠し災害時の姿勢を取る。

 ナイフが突き刺さった木の裏から見覚えのあるそれが出てきた。

「早すぎるだろ」

「追手!?」

 自分たちが初めて会った時に戦ったものとは形が違うが、戦闘機が木の裏から現れた一段とテスタロッサの警戒心が高まり、リボルバーを握る手の力が強くなった。

「結構な速度で移動していたつもりだが、これはたまたまなのかどっちなのか」

 戦闘機からはガトリング砲らしきものが装着されており、銃口はこちらに向けられている。アクアはすぐに攻撃は行わず、地面を強く踏み足元から錬成陣を広げる。そして、地面を操作して大きな土壁を作り出し射線を切る。

「テスタロッサ!!餓鬼を安全なところに!!」

「!!了解」

 非戦闘の零がこの場に居ては思うように戦闘できない。それに遅れて気がついたテスタロッサはまだ姿勢を低くしている零を持ち上げて走り出した。それと同時に戦闘機のガトリングから無数の弾丸が撃ち出され初め、思わず耳を塞ぎたくなる大きな銃声が周囲に響き渡る。

「ッツ!!」

 撃ち出された弾丸は土壁を穴だらけにしていく、数秒もかからずに崩壊させた。しかし、土壁を貫通した弾丸はアクアの元に届く前に、アクアが展開した錬成陣により受け止められていた。

「あぶなっかしいなぁ、おい!!」

 錬成陣を維持するために伸ばしている腕とは別の方の腕を下に向け、袖の中に仕込んでいる道具を一つ落とし、タイミングよく掴むと、それをそのまま機械めがけて放り投げた。

「大人しくそれでも喰らってな」

 閃光爆弾、又の名をスタングレネード。それが強い光によって一瞬にして互いの視界を奪う。視界を奪われてしまっては普通ならばまともには動けなくなる、ましてや銃器など相手の位置を把握できなくてはまともに使えない武器を使っていれば、狙いは大きくそれて明後日の方向へと向かっていく。そして、事前に使うことがわかっているアクアは視界を失った影響を受けずにそのまま戦闘機へと近づきつつ、武器を取り出しガトリングの回転機構に突き刺し武器を使えなくさせる。

「装填と雷管はもう叩けねぇぞ」

 武器の無力化をし、続けて蹴りを入れる。蹴りの勢いで半回転し、足元に錬成陣を広げてそのまま地面を競り上がらせて戦闘機をかち上げる。空中で無防備になり、地面とぶつかった衝撃で、内部機構を守る装甲に歪みが生じ僅かばかしの隙間が生まれる。そこに針を器用に投げ通した。

「チェックメイト」

 針からバチバチと音を立てながら電流が発生し、戦闘機の内部回路に過電流をかける。回路からは過電流の影響で火花が起き、回路は焼け火が起きる。こうなってしまえば機械である戦闘機はもうどうにもならない。内部の回路は壊れ戦闘機の動きは止まった。

「はぁ、他は・・・いないようだな」

 周囲を見渡し、破壊した戦闘機以外の戦闘機が存在しないことを確認すると、戦闘機が再稼働しないようにするために、戦闘機が転がっている地面に錬成陣を広げ、土を槍として戦闘機を貫かせた。

「とりあえず、これで大丈夫だな」

 危なげなく戦いを終えると、零を安全圏まで運んで戻ってきたテスタロッサが目に入った。

「あれ!?もう、終わりました?」

「ああ、どうも単騎だけだったからな。どうにかなった」

 そこら中に飛び散ってしまった飛び道具の回収を始めるアクアを見て、テスタロッサは本当に自分が急いで戻ってくる必要があったのかと疑問に思っていると、ハカネが向かっている村の方から騒ぎが聞こえてきた。ハカネが暴れた結果、一瞬そう考えたが、聞こえてくる悲鳴に交じる雑音、その雑音はハカネが暴れたことによるものではないと気がついた。

「「・・・」」

 互いに顔を見合わせると、直ぐに飛び道具をすべて回収して村へと向かって走り出した。


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