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十一話

「痛たた、しにゃにゃいと言っても痛いものは痛いニャ」

 短時間に数回吹き飛ばされた上、地面にぶつかっていたのだが、何事もなかったのかのように立ち上がるシュレ。漫画ならば包帯を巻いて松葉杖をついて登場してきそうな怪我をしていてもおかしくないはずの威力のものを受けていても、平然としている。それどころか、顔についている土を払い、少しばかりヒゲを舐めると、固まっている双方の顔を確認して少女の方へと向かって話しかけた。

「リサ、彼女らは村を襲った奴らとは無関係だにゃ!!」

「・・・?」

 シュレの言葉に首をかしげる少女。そして、ハカネとテスタロッサへと指をさす。

「にゃ?魂の感じが変だにゃって?それ、シュレがいる前で言うかにゃ?にゃ~、確かにあの魔法使いさんとお姉さんは変な感じなのは認めるにゃけど、襲うほどの理由にはならないにゃ」

「・・・」 

 何故か無言のままでいるリサと呼ばれた少女と、何故か人の言葉が通じて喋れるどころか、リサが何を言いたいのか伝わっており意思疎通ができているシュレの一人と一匹の様子に皆が思わず首を傾げてしまう。そんな様子をしばらく見ていると、リサが握っていた斧が何処かへと消えて、リサの使っていたカードが一つの実体を持つデッキとして戻っていき、リサの降参という形でバトルは終了した。

「にゃ~、そっちの皆はさっきぶりにゃね」

「やっぱり、さっきの猫ね」

「そうにゃよ」

 猫である以上、姿の違いがわからない。故に同一個体なのかとこちらの目では判断することができなかった。ただ、本人の口から同一人物と肯定されたためこのシュレが仲裁に入った理由にはおおよそ検討がつけられた。

 ハカネも自分が出しているカオスドラゴンの方へと目をやると、何やら唸り声をあげてカオスドラゴンはカードの姿へとかわりハカネの手元に戻ってきたのをデッキに加えデッキケースへしまった。そして、纏っていた負のオーラしか感じない衣装から、見慣れた少しくたびれた衣装へと変わる。

「で、敵じゃないという理由はなんでなのかしら?こっちは襲われた身なのだけど?」

 敵意がなくなったとはいえ、襲われた身である。向こうが襲ってきた理由を知る権利は十分にあるはずだ。

「それは、単純に誤解なのにゃ。リサは皆をあの村を襲った人間にゃと思ったみたいにゃのだ」

 それを聞いて、こちらの全員は証拠がないものの襲おうとする動機には十分なものであるとわかり、リサがこちらへ攻撃を仕掛けてきたのも理不尽ながら納得がいった。

「それは私達がよそ者だったから?」

「それもあるみたいにゃけど、まずそちらの女の人、魂がないじゃにゃいか?」

 シュレが指を指した先を追う、そして指先はテスタロッサを指していた。

「……え?私?」

 突然自身が指されたことにテスタロッサは思わず驚く。しかし、一行はすぐにその理由に思い当たるものがあることに気がついた。

「あ、テスタロッサさんって」

「そういえばアンドロイド、機械の体だったな」

「人工的に作られたものだから、ゴーレムと同じでしょ?そりゃあ魂ないわね」

「私、生物ではないですからねぇ。人間らしく振る舞ってますけど結局はAIですし」

 この場にいる中で唯一魂がない存在であった。しかし、それは外見から判断できるようなものではなく、仕草も喋りも、反応も人間のようなテスタロッサを機械であると見ただけで判断するのはとても難しいものだった。どうして、そのことに気がつくことができたのかと零は不思議に思いながらも、ハカネにはそれだけで答えにたどり着くことができる十分なものだった。

「シュレとリサだっけ?私からしても、貴方達の魂って変なのよね。シュレは生者であり亡者って感じがするし、そっちは、私と同類でしょ?だから認識できる」

「そういうことか」

「…」

「そういうことだにゃ、普通じゃない存在が二人いて、力があるように見えたから、村を襲ったんだと思ったみたいだにゃ」

「タイミングが悪い、か」

 襲われた村を見て、そんな村の近くに襲うのには十分すぎる戦力を持っていて、村から離れていくように移動している集団を見れば、そう誤解されても無理はなかった。それでも、誤解された挙げ句、襲われた身でからはたまったものではない。無駄に笑顔なハカネがリサに向けられると、リサは服と顔、髪に土が付いてもお構いなしに地面へと押し付けて土下座をした。

「まぁ、ハカネさん。被害と言える被害は出てないんですから」

 前にハカネに無理矢理反省をさせられたことがあるテスタロッサは嫌な予感がしたため、止めに入った。

「おい、俺のたんこぶはスルーか、おい!?」

「アクアさん、今はお願いします」

 ここでアクアさんの被害を上げると余計に面倒なことになるのが目に見えているため、触れないようにしてもらうことにした。そして、零は話題をそらすために、出会ってからずっと気になっている疑問を聞くことにした。

「ところで、どうしてずっと喋らないんですか?」

 勝負の時は一切喋らず、謝罪のときも一切の言葉を口にしていなかった。ここまで喋らないと、苛立ちを覚える以上に、話がしにくく喋れるなら早く喋ってもらいたいと思えてしまう。しかし、それはすぐに否定された。

「リサは喋れないのにゃ。リサは昔に力の代償で喋る力を持っていかれたのにゃ、おまけに文字がわからないから、その、意思疎通は難しいにゃ」

「あ~、それを盗られたのね」

 一切喋ることができない理由をわかると、ハカネはまるで興味を失くしたかのように、喋らないことに関してはどうでもいいと感じさせる表情へとなった。そして、他のメンバーも喋ることができない相手に無理矢理喋らせることは強要せず、リサの言いたいことが何故か解り伝達できるシュレを介して話を進める。

「それで、俺等が襲われた理由は一体何だ?敵討ちか?」

 当の本人が喋れない以上、ここまで結局自分達が襲われた理由を知ることができないでいた。これが分からなければ、リサを信用するのは到底無理な話であった。

「にゃ~、リサにも色々と事情があるのにゃ。まず、あの村のど真ん中にゃかでにゃ~を助けるために大爆発をしたじゃにゃいか」

「あ~確かに」

「あれ、結構遠くまで聞こえていたでしょうね」

 シュレが言う通り、少し前のシュレを助ける為にハカネが小規模ながらも、積もっていた瓦礫を思いっきり吹き飛ばす程の爆発を起こした。当然、その爆発音は遠くまで響き渡り、離れた場所にいたリサの耳にも届いていた。そして、ハカネを除く零達が一斉にハカネの方へと顔を向けた。

「……いや、私のせいじゃないいよね!?ね!?」

 いくらハカネであっても、自分の使った魔法が原因となり襲撃にあうなどとは思っていなかった。人目につきやすい都心部で施設を破壊したのならばまだしも、こんな田舎で人が近くにいるとは思えない場所でそうなるとは考えが行かない。

「それに、そちらのお嬢さん、テスタロッサだったかにゃ?確かアンドロイドと言ったかにゃ。それは生き物じゃないってことにゃのよね?」

「そうね。テスタロッサは生物ではないけど、それが?」

 テスタロッサが襲われた理由に関わっている。魂がない以外に何か考えられるだろうかと思考を巡らせていると。

「最近この辺りで人の形はしていにゃいけえど、魂のない珍妙な道具と言うべきにゃのかな、絡繰りと言うべきにゃのかな、そんなものがこの辺りで暗躍しとるにゃ、そいつらが現れたところを中心としてっ生命力が妙に弱くなっているのにゃ」

「つまり、私はそれの関係者だと疑われたと」

「そういうことにゃ」

 ハカネの魔法、この辺りで暗躍している機械と類似しているテスタロッサ、状況証拠としては十分すぎるものが揃っていた。故にリサは実力行使に出てきただけであった。

「確かに、ここに来るまでの間に妙に弱っていた植物たちが多く在ったが、そういうことか?」

「そういうことにゃね」

「なるほどねぇ」

 形状が違えど、機械の何かがこの辺りで暗躍していることに思い当たる節がある一行であったが、今そのことを口にしてしまえば、絶対にそれに関して根掘り葉掘り聞かれてしまい面倒なことになってしまうのは目に見えるため、全員口に出さずとも喋らないことが決まった。

「こっちの事情に巻き込んでしまってごめんなさいにゃ」

「本当に、余計な怪我までしてしまよ、まぁ、今回の一件は不問にしてあげるから、この一連のことに私達は関わらないから。いいわね?」

 元よりこの一件には無関係な身である。攻撃をされた以上もう無関係とは言い切れなくなってしまった。それでも、この地からすぐに離れるために自分たちから関わりを断ち切ることにした。

「ん?お前のことだからてっきり首を突っ込むと思っていたが」

 ハカネの答えに思わず意外そうな表情を隠さずにアクアは素で驚聞こえだしてしまった、そしてアクアの反応に続いてテスタロッサと零もうんうんと頷く。

「あなた達、私のことを一体なんだと思っているのよ」

「自称おばさんの面倒事にとにかく首を突っ込もうとする面倒くさい魔女」

「以下同文」

「上に同じく」

「おい」

 ハカネとの付き合いが一番長いアクアですらこの認識であるため、内心ショックになりつつも、自身のデッキから何枚かのカードを引き抜く、引き抜いたカードはサイドデッキに入れて、残されたカードはメインデッキケースへと入れて袖の中へとしまった。

 これ以上この場に留まる理由もなくなった一行は、再び歩き出す準備を始め、ハカネとアクアは吹き飛ばされた際に生じだ小さな切り傷に消毒を施し、たんこぶにも応急処置を施した。

 そんな彼女らの隣で、シュレとリサは器用に意思疎通を図りながら、お互いに情報交換を敷いていた。

「そうかにゃ、そっちはそんな感じにゃのか」

「……」(困)

 リサが指を頬に当ててぽりぽりとかきがながら、何やら少し目をそらした。

「にゃにか、あったみたいにゃね」

「……」(苦笑)

「それは、大変だったにゃね……、悪魔を嫌うのとじゃにゃ」

 手振りも加えて何かを説明すると、シュレも心労を察したような声で同情をした。

「にゃ~の方は、大した情報は手に入れられなかったのにゃ、強いて言えばこの村がどこの奴らに襲われたのかがわかったくらいにゃのだ」

「…?」

「どこの奴らが、なんのためにかにゃって?リサの知っている通り、この辺りも酷い不作だったのにゃ、蓄えもろくにないのに状態での不作。冬を越せるかどうかってレベルだったのにゃ。そして、もう一箇所近くに不作だった村があったみたいなのにゃ」

「…!!」

 リサは少し考え込み、答えにたどり着いた。不作な村が取る行動などすぐに分かってしまう、実際にその行動を起こすのだろうかと考えるが、現に起きてしまったのだ。

「そういうことにゃ、他の村から食料を奪おうとする。今回のこれもそういうことだったのにゃ」

 作物の育ちが悪い不作、その年はそれまでに取ることができた食料で次の収穫時期まで耐えなければいけない。それすらままならない状態になって、自分達がどうにかして食いつないでいくためにどうすればいいのか、最終的に行き着く先はいつの時代も変わらない。

「これはにゃ~の考えであるから、事実ではにゃいけど、不作の原因と森の生命力が弱くなっている原因は多分同じにゃ、あの絡繰り達が現れている場所は新たな植物たちが育たなくなっているにゃ」

「…?」

「理由はわからないにゃ」

「…」(困)

 傍から見てもリサが落ち込んでいるのは見て取れる。ここまでやれることをやってきたのに、手がかりと言えるものが手に入らなければ、嫌でも気分が落ち込んでしまう。

「リサは悪くないにゃ、むしろ関係がない身でありながらどうにかして解決しようと手を出しているだけでも十分だにゃ」

「…」

「村の被害かにゃ?知ってるとは思うにゃけど、建物数軒は破壊されて、その争いでどっちの村も何人も死んだにゃ、それに…」

 シュレは思わず口を紡ぐ。果たしてそのことを言って良いことなのか、悪いことなのか、少し考えたあと意を決して話し始めた。

「実際に見たわけじゃないけど、にゃーの耳に村の若い人が強姦されている声が聞こえてきたのにゃ」

 女の人、リサもまだ若い女の子である。そんな相手にこの言葉を使っていいかと考えたが、この言葉以上にあの状況を説明することができる適切な言葉はなかった。

「…」

 それを聞いてリサも思わず顔を下に向けてしまう、しかし、すぐに周囲を見渡し始めると、少し離れたところにある倒壊した建物の横へと向かった。そこはシュレが瓦礫に埋もれていた場所のすぐ近くの場所だった。

「にゃ、そこは」

 倒壊している建物を見てみると、

 

 その言葉を聞いてリサも思わず顔を下に向けるが、少し周囲を見渡してある倒壊している建物の方に向かって歩いていった。

「・・・」

「にゃ、そこは」

 倒壊している建物を見てみると、人の足らしきものが瓦礫の間から出ていた。それを見てリサは線香とマッチを取り出し、マッチを擦り、火を付けるとその火を線香に移した。周囲には線香に独特な匂いが周囲に立ち込める。

「・・・」

「にゃーはほとんど身動きが取れなくて声しか聞こえてにゃかったけど、多分その人がそうにゃ。リサにゃらこの程度の残り香でもわかるのかにゃ?」

「・・・」(コク

 匂いの強い線香の煙は周囲の匂いをかき消していく。そして、死しってしまった村人たちを弔う。

「しんみりしているところだけど、ちょっといいかしら」

「にゃ!?」

 雰囲気を読まずにハカネはシュレの首根っこを掴み持ち上げる。

「にゃ、にゃんにゃのにゃ」

「ちょっと、聞き捨てならない言葉が聞こえてね?」

 ハカネの様子が明らかにおかしい。その後ろでは顔に手を当てて天を仰ぐアクアの姿があった。

「色々聞きたいことができたから、私の聞き間違えじゃなければ、今強姦って聞こえたのよねぇ」

 ハカネの表情はとてもいい笑顔であるが、その内側には全く笑っていない。

「た、確かににゃ~がそう言ったけど」

「その話、詳しく聞かせてもらおうかしら」

 話の邪魔に入られては困るのか、ハカネはそのままシュレを連れて近くの建物の中へと入って行ってしまった。

「すまない、あいつはこういった事になるとああなるんだ。こうなると俺でも止められない、少なくとも、強姦した奴らをぶっ飛ばすまでは止められない」

 ため息を漏らしながら言うアクアに、リサは頬を掻きながら苦笑いで返した。

「お前らもすまない、あいつがああなった以上この一件を片付けるまでは目的地に迎えそうにない」

 早く移動したいテスタロッサにとってはとても迷惑な話であるが、女の心を持つ身としても許せないところがあるのも確かである。偽善と言える行動であっても、ハカネがやりたいことがなんとなくわかってしまう。

「はぁ、わかった」

「僕は構いませんよ。というか、ハカネさんとアクアさんがいなくなったら僕生き延びられなさそうですし」

 二人の了解を得られたことによりアクアは少し安心し、お話しているハカネが居る方へと目をやった。

「あの、所で一つ聞きたいことがあるんですけど」

「なんだ?」

「強姦ってなんですか?」

「「「・・・」」」

 純白な十二歳、言葉の意味を知らないがゆえに純粋な質問を女性がいる眼の前で聞いてしまった。

「ああ、単純に言えば双方の合意なくせい「言わせませんよぉ!!」ぐほぉ!!」

 説明しようとするアクアの横顔にテスタロッサは拳を入れ、思いっきり吹き飛ばした。

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