九話
変則的がゲーム開始に困りつつも、カードの力を開放してすぐの初期手札がテスタロッサを助けられるカードだったことを幸運だと思いつつ、残された手札を確認する。
ターン二
零 ライフ十 手札四枚 マナ五 山札三十四枚
少女 ライフ十 手札五枚 マナ六 山札三十五枚
少女は声を発することなく、自分のデッキに手を伸ばして新たなカードを一枚ドローして、引き入れたカードと初期手札の五枚のカードを確認し、少し思案すると手札の一枚のカードを手に取って零にも見えるようにした。
見せられたカードのイラストには禍々しい、見るからに悪役や禁忌に関わっている感じがする一本の斧が描かれている。装備カードはテスタロッサの関係上使用頻度が高く、その性質に慣れている。
「装備、カード?」
少女のフィールドに装備できるモンスターが一体もいない、それなのに装備カードを提示してきた。その行動に一瞬疑問を覚えたが、すぐに二つの答えが浮かんだ。装備対象を必要とせずフィールドに出せるカード、あるいは、プレイヤーに直接装備できるカードだと。そう思いつくとほぼ同時に、少女は召喚による処理によって少女のデッキと手札の全てのカードが表側になって公開された。
「は!?情報のアド損じゃ」
零が叫んだ直後、少女のデッキに採用されている装備カード、最初に公開した斧の装備カードと同じデッキに眠る装備カード二枚が闇に包まれて、ポロポロと崩れ落ちゲームから除外された。そして、公開されていたカードはすべて裏側になり、デッキはシャフルされた。
「!!召喚コストの処理か」
「え?」
「デッキと手札から特定のカードを除外することで召喚コストを満たせるってことです、同名カードをすべて除外するか、装備カードすべてを除外するかのどちらかだとは思います。ですが、デッキのカードを全て見せる上、広範囲で自分のカードを犠牲にすると考えると、専用構築以外では使えないカード、かなり厄介な専用カードです」
専用カード、特定のテーマ又は特定のカードが採用せれているカードでしか採用が現実的ではないカードを指す言葉である。そうしたカードたちは、種族や名称サポートと言ったものが代表例として挙げられるが、中には扱うための条件が純粋に難しいため、そのカードのためだけに専用構築にしなけなければいけないものもある。
そして、少女が使ったカードはそのカードのために専用構築へしたものだと思われる。証拠として、先程の召喚処理で彼女のデッキをすべて確認することができた。カードバトルにおいて情報のアドバンテージはとても大きい、環境デッキを握る場合、相手にはデッキの内容がほぼ割れているため、デッキを構築する際にメタカードを入れられることがよくある。そうしたメタカードとメタをすり抜けるためのカードとの戦いでデッキ構築での戦いになるが、それでも実際に相手のカードをすべて確認できることが大きい。一方で、カジュアル戦においては、環境外のデッキと戦うことが多く、相手のデッキの内容は一切わからないことがある。だからこそ、相手も、自分も意識外からの一手がとても通りやすい。どのデッキでも全てのカードを見せてしまっては情報によるアドバンテージを全て捨ててしまうことになる。それすらもコストに含んだカードがちゃんとした強さを持っているのであれば、とても強力なカードである。
カードから禍々しいオーラが現れると、少女が握っている斧に纏わりつき、より一層禍々しさを放つ斧へと変わる。そして、少女が提示していたカードは支援エリアへと置かれて、プレイヤーに直接装備された。
「モンスターがいないからやっぱりとは思ってましたけど、プレイヤー装備ですか」
「気をつけて、プレイヤー装備はプレイヤー自身がブロックできるようになる。装備パワー以下の攻撃は一回確実に防がれるようになるし、装備カードだからモンスター対象の効果じゃ対象に取れない。
「大丈夫です、このデッキにそういうカードないですから」
「私が言うのもあれだけど、大丈夫なの私のデッキって」
「正直、至急デッキ構築を直したいのが本音です」
こちらの会話を無視して少女は新たなカードを切る。それに合わせて彼女のデッキが再び現れるが、今度はこちらには見えない裏側の状態で少女はすべてのカードから一枚を手に取り、こちらに見せる。見せられたカードは戦場「積み上げられた骸」であり、少女の手札へと加わる。そして、デッキは再び一つに戻り、シャッフルされた。直後、零のデッキからカードが勝手に一枚ドローされた。
(サーチ効果の代償として、相手に手札を一枚与えるか。喋ってくれないからカードの効果がわかりにくい)
相手が一切喋ってくれない、カードの種類を目視するのがやっとな距離、おまけにカードが実体化することにより、盤面にカードが残らない。現実のように相手のカードを確認させてもらうことができない。ただでさえカードを知らず、初見なカードばかりあるにも関わらず、命が関わる勝負でこれはとてもきついものだった。苦虫をすり潰すような思いをしつつも、いつでも相手の動きに対応できるよう考えた。
少女は加えたばかりの戦場「積み上げられた骸」を支援エリアに配置した。それにより、周囲の風景が一変する。愛用する戦場「孤独な戦場」のような辺り一帯に武器があるのとは違い、字の如く、周囲には大量の骸が積み上げられていた。中には彼岸花が生えており、頭蓋骨も目の部分から彼岸花が生えているものすらあった。その気味の悪い雰囲気への変化に眉間にシワへと寄せる零に対して、警戒を強めるテスタロッサ。パワーが一万があるテスタロッサ相手では並大抵のカードでは突破できない。それは少女もわかっているようで、無理に突破しようとはせず、足場を固めようとする。次に切られたカードは零も使っている戦術「犠牲の上に」により、手札からモンスターカードを一枚破棄して二枚ドローした。零が知っている効果ならばここで効果の処理が終わる。
「!!」
少女がデッキから二枚どろーした瞬間、突如として周囲の骸たちが動き出した。その恐怖演出に思わずビクッと零は体を震わせる。そして、動いていた骸の一つをよくよく見てみると、カードが一枚握られていた。確かに、戦術「犠牲の上に」の効果処理は終わった。けれど、それによって発動条件を満たしたカードの処理は別となる。握られていたカードを確認すると、先程破棄されたモンスターカードが握られており、それが骸によって握りつぶされ砕かれた。
(トラッシュに落としたカードの破壊、となればゲームから除外か!!)
効果の予想をしていると、零が持っているカードがカタカタと震えだし零の手を離れた。
「な!!」
離れた手札は少女にも見えるようになり、そのうちの一枚を少女は選び破棄した。
(ピーキングにハンデス効果!!しかも起動条件は名前から考えるにモンスターカードがトラッシュに送られること、でもそれ以上に)
「零、今の効果で破壊されたのって」
「はい、あなたのカード「戦姫テスタロッサ」です」
ただでさえモンスターを展開できないデッキの貴重なダメージソース。それをトラッシュに送られてしまった。貴重なダメージソースをピン積みなバカみたいな構築であるため、回収手段は存在しているものの、今の手札ではそれができない。また、あの戦場が配置されている状態で回収しても、もう一度トラッシュに落とされるだけ、先にあの戦場をどうにかしなければ勝つのは難しい。
(思ってたより厳しい勝負になりそう)
そんなことを考えていると、今度は少女の持つすべての手札を公開した。
「・・・」
わずかに顔を動かし、こちらに何かをするようにと伝えてきた。
「「??」」
手札の公開は何かしらの効果の処理であることは明白、しかし、一切の説明をしてもらえなければ何をすればいいのかわからない。けれど、相手はただ手札を見せるだけの効果ではない、そのことはなんとなくわかった。とりあえず、その中のカードを一枚選ぶと、そのカードも破棄されてトラッシュに送られた。
「・・・」
残された手札を確認し、残されたカードのうち二枚を見せ、フィールドに向かって投げる、カードからは一つ目のコウモリのようなモンスターが二体出現し、耳障りな音が立てている。そして、少女が斧を零に向けると、それを合図として二体のコウモリが零目掛けて飛び出す。
「両方テスタロッサでブロック!!」
零の宣言と同時にテスタロッサも走り出し、コウモリの攻撃をかわりに受け止める。牙で喰らいつこうとしていたのは、盾を喰らってしまい歯が折れる。そのまま絶命してしまうコウモリだが、タダでは死なず、少女の手札が二枚増えた。(手札二→四 デッキ二十九→二十七)
「・・・」
テスタロッサが二回防御したことが予想外だったのか、少女は少し驚いたような表情をしているが、すぐに斧を構え駆け出した。
「一万だぞ、テスタロッサもう一度ブロック!!」
「ええ!!」
再び盾を構えて攻撃を防ごうとするが、接近した少女が振り上げた斧はテスタロッサの盾を真上にかち上げた。その際、斧は折れてしまったが、少女の手はテスタロッサの首を掴み地面に叩きつけた。
「がぁ!!」
破壊されたことにより、テスタロッサが纏っていた武装が解除される。それを確認すると、少女はそのまま零目掛けて走り出した。
「ちょ、攻撃可能なのはもう、って!?なんで装備が」
少女の手には先程折れたはずの斧が万全の状態で戻っていた。そして、一緒に再びデッキと手札がすべて公開されていることから、破壊されたはずの装備がもう一度召喚されていると予想できた。
「つ~!!ライフで!!」
(ライフ十→八)
零の宣言と同時に出現した障壁が少女の斧による攻撃を守ってくれたが、一振りで二枚障壁が破壊されてしまった。障壁が破壊された衝撃で零は吹き飛ばされてしまうが、ハカネとの練習で受け身を取り慣れており、すぐに立ち上がった。
「二回攻撃、いや、再召喚で攻撃権が復活したのか。おまけに一回でライフを二つ持っていくか」
少女は後ろに跳び、零に手を向ける。その意図を悟り、零は自身のデッキに手をかける。
ターン三
零 ライフ六 手札四枚 マナ六 山札三十三枚
少女 ライフ十 手札四枚 マナ六 山札二十七枚
「ドロー!!」
新たなカードを引き手札に加えるが、加えたカードを見ても零の頭は悩まされた。「鉄壁武装テスタロッサ」のパワーは一万、しつこく言うが、並大抵のモンスターでは突破できないはずのパワーラインである。それにも関わらず少女は破壊してみせた。厳密には「鉄壁武装テスタロッサ」と同時に破壊されているため、装備のパワーは同値である相打ちであった。よって、あの装備がパワー一万である強力な装備カードであった。そして、零のデッキには一万もあるパワーを超えられるカードは採用されていない。どんなモンスターを出しても確実に破壊されるのは目に見えた。
「どうにかなりそう?」
「・・・デッキ相性が悪いです」
(パワーで勝てないなら手数で勝つべきだけど、「戦姫テスタロッサ」はトラッシュに落とされた。おまけに回収したとしても、リーサルするまでに必要なカードを揃えられるか)
どうあがいてもパワーが足りない。そのために手数で上回ろうにも、必要なカードは戦場「孤独な戦場」とトラッシュに落ちた「戦姫テスタロッサ」を回収するカード、そして打点を増やす装備カードを揃えなければいけない。しかし、零の手札には途中まで行えても、少女のハンデス効果で落とされてしまう可能性が高く、下手に動けない状態だった。
(必要なカードを揃えるまで耐えるしかない、か)
「「制圧武装テスタロッサ」を前衛に召喚」(手札四)
「また新しいのをね」
テスタロッサの両手には二門のガトリング砲が握られており、体には巻きつけられた大量の弾丸がキラリと光っている。
「「制圧武装テスタロッサ」の効果、このカードのパワー以下のカードは召喚できず、効果を発揮できません」
《制圧武装テスタロッサ》
金
機人
パワー8000
手札のこのカードは自分のフィールドの「テスタロッサ」を含むカードと入れ替えられる。
このカードがフィールドに存在する間、自分のフィールドにモンスターは召喚できず、モンスターはすべて破壊される。この効果で破壊されたカードは効果を発揮できない。
このカードがフィールドに居る間、相手はこのモンスターのパワー以下のモンスターを召喚できず、効果を無効にされる。
攻撃/防御時 このカードのパワー以下のモンスターをすべて破壊する。この効果で破壊されたモンスターは効果を発揮できない。
(本来なら魔法や戦略で突破されやすいけど、その分強力制圧モンスター、八千のパワーラインはそう簡単には突破されないから、次のターン相手はほぼモンスターは出せないけど)
少女の扱う斧のパワーは一万、次の戦闘どうあがいても破壊されてしまう。しかし、今攻めても返り討ちにあってしまい、元も子もない。
(ここは耐えて、次のターンで返そう)
「リバースを三枚伏せてターンエンド」
ターン四
零 ライフ六 手札一枚 マナ六 山札三十二枚
少女 ライフ十 手札四枚 マナ六 山札二十七枚
少女へと手番が移り、新たなカードをドローする。
「・・・」
加えた手札を確認すると、少しの間考え込んだ。その間に零も考える。
(デッキのカードを確認したときに、魔法カードと戦略カードが混在しているのは確認できた。伏せカードとして配置した戦略「折られた杖」で魔法カードの発動は無効にすることはできるけど、戦略は止められないうえ、デッキタイプはおそらく装備で戦うデッキ。制圧武装の制圧効果、意味ないよなぁ)
少女は考えを纏めると、手札を一枚見せた。それは戦略カード、一体どんな効果と零とテスタロッサは身構えるが、少女が握る斧を真上に投げ、周囲にあった骸骨たちは砕け散る。(手札四枚)明らかなディスアドバンテージな処理に疑問を覚えるが、効果の本命はすぐに現れる。
「え?」
落ちてきた斧はテスタロッサが持つガトリングに当たり破壊した。同時に斧も砕け散り、バラバラと地面に落ちる。武装を破壊されたテスタロッサはそのまま後ろへと跳び、零の横に移動する。
「ごめんなさい、破壊された」
「想定のうち、ただディスアドが大きすぎるからまだなにかあると思う。わざわざパワー一万の装備をそう簡単に手放すわけがない」
単純にテスタロッサだけを破壊するのならば、ワパーが上回っている装備で攻撃すればいい。それなのに、強力な武器を捨ててまで破壊してきたのだから、大きなリターンになる何かがある。
「その武器、破壊された瞬間に再召喚できる能力持ちか」
再びデッキと手札を公開し、その手には先程壊れたはずの斧がもう一度握り直されていた。そして、公開された手札には魔法も戦略も残されていない、残されているのはモンスターカードだけだった。
(手札的にモンスターを展開するためにも、「制圧武装テスタロッサ」をどけなければいけなかったか、なんで寄りにもよって除去できるカードも一緒に引いてるんだよ、防御の伏せはあっても、展開妨害はできるかどうか)
わざわざどかしてきたとなれば展開してくる、現に少女の手にはカードが二枚あり、それをフィールドに向けて投げた。現れるのは二匹の隻眼の狼、遠吠えをして唸り声を上げる。そして、二匹の狼はこちらめがけて走り出した。
「両方ライフだ!!」
二匹の狼は噛みつこうと飛びかかるが、現れた障壁によって防がれる。それでも傷跡は残そうと噛みつき、障壁を破壊する。
(零ライフ八→七→六)
そして、残された少女が握っている斧による攻撃。このまま攻撃を受けてしまっては後のターンに大きく響く、だが、零の扱うデッキはモンスターカードが少ないデッキであり、その分防御札を少なからず採用していた。
「相手の攻撃時リバース発動!!「臨戦体制」」
リバース宣言により、少女は思わず足を止める。一方零は少ししてやったりとした顔をしつつ、残された手札に手をかけた。
「リバース効果で手札からモンスターを一体召喚する。ただし、この効果で召喚したモンスターの召喚時効果は発揮されない。テスタロッサさん、もう一度お願いします」
「ええ」
「「迎撃武装テスタロッサ」を召喚!!」
両手に沿った剣、刀のような剣を二振り握り、纏う鎧からは炎が溢れ出す。その炎にその場にいた狼二匹は思わず後退るが、少女は再び地面を蹴り、斧を振り上げる。
「テスタロッサでブロック!!」
振り上げられた斧に対し、テスタロッサは地面に剣先を向け、勢いよく振り上げろ。火花を散らしながらぶつかり合う。二振りの刀では応戦しきれないと思ったテスタロッサは片方の剣を片方の狼に目掛けて投げた。
「「迎撃武装テスタッロサ」の防御時効果、相手フィールドのカードを一枚破壊する。それで狼を一体破壊する」
投げられた刀は隻眼の狼に突き刺さり、刀から溢れ出した炎によって焼き消えた。そのことに少女は驚きつつも、テスタロッサの残されたもう一振りの刀をかちあげると、胴体目掛けて斧を振るおうとするが、テスタロッサは素早く横に跳び、投げた方の刀を掴み取り構えた。
「相手のターンの間、「迎撃武装テスタロッサ」は相手の効果を受けず、戦闘破壊されません」
例えパワーが低くても、「迎撃武装テスタロッサ」の戦闘破壊されない効果により、バトルの処理でどちらのカードもトラッシュへと送られなかった。
テスタロッサを破壊できなかったことに少女はあまり芳しくない表情をするが、すでにアタックできるカードはいなくなってしまった。一旦距離を取るために後ろへと飛びターンを渡した。
ターン五
零 ライフ六 手札零枚 マナ六 山札三十二枚
少女 ライフ十 手札四枚 マナ六 山札二十七枚
どうにかターンを返してもらえたものの、状況はあまり芳しくなかった。手札零枚でこの状況を打破できる方法はない。それはデッキ構築を把握しているからこそ嫌でもわかってしまう。アニメや漫画の主人公ならば最後まで諦めずに、デッキトップのカードを引き、そのカードでこの状況を打破するなんてことをする。しかし、このデッキはメタカードを入れつつコンボを行うデッキ。たった一枚のカードでは状況を解決できない。半ば諦めているときだった。
「もう!!どんだけ飛ばすのよ」
森の中から帽子に葉っぱをつけた状態のままハカネが戻ってきた。無傷では済まなそうな攻撃を受けておいて、なんともなさそうな状態に驚く零とやっぱりだと思うテスタロッサ。そして、思わず舌打ちを漏らした少女だった。
「状況は、うわぁ、あんまり良くなさそうね」
手札が零、フィールドにも「迎撃武装テスタロッサ」しかおらず、それに対してモンスター一体に、装備を一つ、手札が二枚の状況を見て零が押されていることはなんとなくわかった。
「勝てそう?」
「正直勝率が残っていれば良い方です」
「そう、諦める?」
「まさか、ですよ。最後までやれるだけやります」
「そ、じゃ負けたら私がカバーするよ」
「お願いします、ドロー!!」
ハカネは零の後ろへと周り、ハカネに被害が回らないことを確認した上で零は新たなカードを引く。
「・・・最後までやってやりますよ」
引いたカードを相手に見せる。そのカードはこの状況ではある意味では最高なカードで博打なカード。戦術「費用捻出」だった。
「デッキからカードを二十五枚除外し、五枚除外するごとに一枚ドローする。よって、カードを五枚ドロー!!」
零のデッキが一瞬にして消え、カードが五枚手札に加わる。新たに加わったカードを見て零は少し考え込み、ハカネに質問する。
「あの狼、属性ってわかります?」
「ん?「隻眼の狼」のこと?闇属性だけど」
それを聞き、動き方を決めると手札の一枚を手に取り少女に見せる。
「戦略「負傷兵救助」、トラッシュにあるモンスターを一体手札に加える。この効果で「戦姫 テスタロッサ」を手札に加える」(手札五)
トラッシュに落ちてしまった「戦姫 テスタロッサ」を手札に戻した。続けて新たな手札を使い、自分のフィールドを作っていく。
「戦場「孤独な戦場」を配置し、フィールドの「迎撃武装テスタロッサ」と手札の「戦姫テスタロッサ」を入れ替える」(手札四)
森が焦げ臭くなり、テスタロッサの武装が身軽になり、見慣れた剣を片手に、もう片方の手にリボルバーを構える。
「戦略「犠牲の上に」を発動、効果で手札の「迎撃武装テスタロッサ」を破棄してデッキから二枚ドロー」(手札三 デッキ零)
二枚ドローできる効果であっても、デッキに残されているカードは一枚だけ。最後の一枚を引き、零のデッキは零枚になってしまう。それでも、零は構わずカードを使う。
「手札から、装備「月光の盾」と装備「高周波振動剣」、そして装備「白銀の弾丸」を「戦姫テスタロッサ」に装備させる」(手札零)
身軽な格好をしていたテスタロッサの腰には元から持っていた剣が一振り、手には装備カードによって得た一振りの剣に一丁のリボルバー、そして月の光のような色を持つ丸い小さな盾を腕に装備している。そして、零はついに手札を全て使い切ってしまった。しかし、土壇場で零のデッキとしてはコンセプト通りの盤面へと持ち込むことができた。
「零、あんた運持ってる?」
「あるかないかと問われたら、ない方だと思います。さっきピーキングしたときに防御できそうなカードがなかったので特攻できますけど、誰かさんはこの状況でも防御札で返しますよね。戦場「孤独な戦場」の効果で自分フィールドのモンスターが一体だけならば、そのモンスターの攻撃力を五百アップさせる」
戦場の効果はお互いに影響を与える。よって少女のフィールドも、一体しかいない隻眼の狼もまた「孤独な戦場」の効果を受ける。
「戦姫テスタロッサ」パワー 千五百+零+千+千 合計三千五百
「隻眼の狼」 パワー 千+五百 合計千五百
「更に、装備されている装備カードの枚数分攻撃と防御回数を増やす。これにより、テスタロッサは四回攻撃が可能。そして、装備カードの打点はそれぞれ一、これにより一度の攻撃で相手のライフを四つ奪う。テスタロッサアタックです!!」
「了解!!」
テスタロッサはリボルバーを少女へと向けて引き金に指をかける、しかし、少女も攻撃を簡単に通すわけもなく、斧を振るい指示を出す。隻眼の狼が射線上に入り込み弾丸を代わりに受け止めにはいるが、零はニヤリと笑う。
「装備「白銀の弾丸」の効果、闇属性のカードとバトルする際、パワーを五千アップします。そして、相手のモンスターのみを破壊したとき、このモンスターの打点分相手のライフを減らす、貫通四点!!」
少女はすでに防御宣言をしてしまい、手札にはこの状況でどうにかできる手札はない。少女は自分の判断ミスに歯ぎしりをしてしまうが、テスタロッサは躊躇わず引き金を引く。撃ち出された弾丸は隻眼の狼を貫き、後ろにいた少女まで届くも、少女は素早く斧で弾丸を弾く。(ライフ十→六)
「「孤独な戦場」の効果により、テスタロッサの追加攻撃!!」
リボルバーの撃鉄を下げ、再び引き金を引く。新たに撃ち出された弾丸は隻眼の狼を狙ったときとは違い、少女を狙った弾丸は胸めがけて飛んでいくが、少女は先のように弾くのではなく、むしろ走り出して一度大きく横に避けてからテスタロッサに近づく。
「はやい」
互いに斧と剣をぶつけ合い火花を散らす。一撃一撃の重さは少女の方にあり、テスタロッサが握っている剣は次第に壊れていく。
(仮に「白銀の弾丸」の効果でパワーがアップしても、合計八千五百。どうあがいてもパワー一万の装備カードには届かない。でも)
ついにテスタロッサの剣は破壊されてしまった。武器を破壊したことにより、少女はそのまま追撃を入れ、テスタロッサを倒そうと斧に力を込めて腹部を狙って振るった。
「装備「月光の盾」の効果」
腕に装備している盾で少女の攻撃を受け止めた。勢いを殺しきれていなかったのか、受け止めた腕が震えているが、構わず腰に下げているもう一振りの剣を引き抜き反撃する。
「装備しているモンスターは一ターンに一度、相手によって破壊されない。これでブロックは潰しました。テスタロッサの二回目の追加攻撃!!」
少女のライフは残り六、このまま防御されず通ればリーサルである。ただ、零はこの時点で勝利を確信していなかった。たとえ、手札を確認して防御札として使えそうなカードがなくても、そして、その予想は的中する。
「!!」
少女はテスタロッサの攻撃を受け止める、そしてすぐに蹴りを入れて姿勢を崩させる。
「追加防御まで持ってるのね」
「・・・テスタロッサさんすみません!!」
「え?ってことは」
テスタロッサの疑問の答えは、目の前の少女が物理を持って教えてくれた。振り降ろす斧をテスタロッサは受け止めようと盾を構えるが、無惨にも盾は破壊される。衝撃で軌道がズレ、幸いテスタロッサの腕に斧は届かなかった。
「下がりな!!」
ハカネの言葉にすぐにテスタロッサは後ろに跳び、零の真横に移動する。
「・・・ターンエンドです」
わかりやすい破壊でなかったものの、今の戦闘で「戦姫 テスタロッサ」は確実に破壊された。そして、フィールドからアタックできるモンスターがなくなった事により、零はターンエンドをするしかなくなり、力なく宣言した。
「・・・」
そして、少女にターンが移り新たなカードを引くが、そのまま何もせずターンを終える。そして、互いのフィールドにあったカードは消え、元の森に戻り、少女の握る斧からは禍々しさが消えた。
「デッキアウトね」
デッキからカードを引くことができなくなり、零の敗北が確定した。本来ならば少女がそのまま攻撃を仕掛けてきても零の負けであるはずだった。それなのに、攻撃をしなかったのには、彼女の存在があった。
「さて、次は私よ?魔人さん?」
ハカネはサイドデッキからカードを十数枚、メインデッキと入れ替え、自身のデッキを構える。




