ぼくはウニ、さすらいの旅人
白い砂浜にいるボクは、いつものように旅をする。
この世界はどこまでも広がっていると親戚のじいちゃんが言っていた。
そのじいちゃんとは、遠い昔に別れてから会っていない。
きっとどこかでおいしい草でも食べているはずだ。
ボクはウニ。
この世界のありとあらゆる草を食べ尽くすため、ボクは毎日旅をしている。
そんなボクには相方がいる。
歩くときも、走るときも、いつも応援してくれている。
彼女は生まれたときからボクのとなりにいた。
嵐がきても、どんなに遠くに飛ばされても、いつも一緒だった。
ボクの旅に終わりはない。
いつの日か、楽園にたどり着くと信じて。
ボクは彼女といるとポカポカする。
気づいたときには、ボクたちに家族ができていた。
たくさんたくさん、生まれてきてくれたボクの家族は、ボクの旅路に賛成してくれた。
旅の中で何度も困難に遭遇した。
荒波に飲まれ、家族を失いもした。
けれど、ボクたちは諦めず、旅を続けた。
そうしてたどり着いたのは巨大な壁だった。
登ることもできず、壊すこともできなかった。
この世界には終わりがあったのだろうか。
ここがボクの旅の終着点だったのだろうか。
ボクは絶望した。
家族はボクを恨んだりしないだろう。
ボクの旅はここで終わったのか。
くらい、くらい。
せまい、せまい。
ボクはいつの間にか、どこかに連れて行かれていた。
そこは透明な壁で囲まれた牢獄だった。
こんなの、ボクは知らない。
こんな世界があってたまるか!
ボクは世界を恨んだ。
神様を恨んだ。
どうして、どうしてボクは、ボクたちはここに閉じ込められたの?
自問自答を繰り返していると、空から草が降ってきた。
その草がヒラヒラと舞い降り、偶然ボクの口の中に入ってきた。
甘い!
こんな草、知らない!!
こんな草、はじめて!!!
ボクはたどり着いてしまったのか、草の楽園に。
ボクは、そしてボクたちはきっとここに来るために旅をしていたんだ。
じいちゃん、ボク、ようやくみつけたよ。
ボク、やっとここまで来れたよ。
草の楽園。