『あかつきのきつねとうさぎ』
15.おかえりなさい!
それからしばらく、きつねさんはひとりでたびをつづけていました。
金色にかがやくペンダントをにぎりしめ、野原をよこぎり、川をわたり、ときには山をこえて、ひたすらうさぎさんをおいかけます。
とても、とてもたいへんなたびでしたが、きつねさんはあきらめません。
だって、うさぎさんはきっと、もっとたいへんなのだから。
それを思うと、きつねさんはいくらでもがんばれるのです。
そうして、ひとつきほどたったころ。
きつねさんはついに、うさぎさんに追いつきました。
どうぶつのくにをぐるっとひとまわりして、たどりついたのは……
なんと、きつねさんとうさぎさんの山小屋でした。
どうして、ここなのか。きつねさんはすぐに、そのわけに気がつきました。
きつねさんのむねが、じわっとあたたかくなります。
もうなにも、こわくありません。
山小屋のかげにかくれるようにしている、大きな大きな、きずだらけのかげに、きつねさんは迷うことなく手をさしのべます。
そしてやさしく、いいました。
「おかえりなさい、うさぎさん。
そして、いらっしゃい、うさぎさんのなかの、お友だちさん。
もうだいじょうぶだよ。だれにもふたりを、いじめさせたりしないから。
さあ、とりあえずは、そこにすわって。
まずはやかんを火にかけなくっちゃ。おゆがわくまでのあいだに、けがの手当てをしちゃおうね」
「……うん」
大きなかげは、すなおにうなずくと、ふわり。
ちいさく光って、もとのかわいい、うさぎさんのすがたに戻ったのでした。
16.かみさまの山はおおにぎわい!
うさぎさんにとりついたまものは、そんなつもりじゃなかったそうです。
ふたりしてころんでころがって、気がついたら合体していました。
このままだと、ふたりいっしょにたいじされちゃうかもしれません。
それはふたりともいやだったので、きつねさんのところに帰って、もとにもどれる、まほうのお茶をつくってもらおうとしていたのでした。
けれど、どうぶつたちにおいかけられたり、道にまよったりして、やっとたどりついたというわけです。
きつねさんはもちろん、ぱぱっとまほうのお茶をつくってあげました。
お茶をのんで、うさぎさんから出てきたまものは、なんどもお礼を言って、お空のうえにかえっていきました。
うさぎさんも体をなおしたあとは、かみさまの山にもどることができました。
もちろんそのときには、きつねさんもいっしょです。
きつねさんも実力をみとめられ、うさぎさんの『あいぼう』として、いっしょにかみさまを守るお役目につくことになったのです。
のんびりやのきつねさんに、まものたいじなんて、できるのかって?
だいじょうぶ。きつねさんは、旅のあいだにとってもつよくなっていたのです。
だから今日もきつねさんは、うさぎさんといっしょにだいかつやく!
そしてまものたいじがおわれば、とくいのお茶をふるまいます。
なかまたちはもちろん、こうさんしたまものたちにもです。
そうすれば、みんなしあわせきぶん。
みんなえがおで、なかよしです。
そのうちに、まもののかみさまも、きつねさんのお茶がのみたくなって、やってきました。
そうしてなんと、どうぶつのかみさまと『いきとうごう』。
ふたりで手合わせをしては、お茶をのむほど、なかよくなりました。
そうなればもちろん、まものがせめてくることも、なくなって……
きびしく、さびしいところだったかみさまの山は、すっかりたのしいお山になりました。
きつねさんのお茶がのみたくてあそびに来る、まものたちとどうぶつたちで、きょうも大にぎわい。
みんなたのしくなかよく、おいしいお茶をいただくのでした。
17.『あかつきのきつねとうさぎ』
山すそのまちにやってくるキャラバンは、ふたりのかつやくをえがいた『かみしばい』をもってくるようになりました。
まちのみんなは、いつもそれを楽しみにしています。
いつしか山すそのまちでは、ふたりをかたどったかわいいぬいぐるみや、おいしいおまんじゅうが売られるようになりました。
もちろん、きつねさんがつくったきれいなペンダントや、おいしいお茶もです。
それがひょうばんになり、よそのまちからも、おきゃくさんがやってくるようになりました。
いまではすっかりにぎやかになったひろばには、きつねさんとうさぎさんの像が、なかよくならんで立っています。
おそろいの青い目と、金色のペンダントを下げたきつねさんとうさぎさんの像は、朝日をあびるととくにきれいです。
だからみんなは、ふたりの像を『あかつきのきつねとうさぎ』と、よぶようになったのでした。
にぎやかな山すそのまち『ノルン』。
そのひろばにたつ、『あかつきのきつねとうさぎ』の像のおはなしは、これでおしまいです。
おしまい




