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いざ勝負

 再会の会話もそこそこに、二人は揃って学校へ向かった。夏休み中は誰でも校庭を使えるので、かつては毎日のように通っていた。時間は決まって午前中。誰もいない広い校庭で二人はサシの対決をしていた。校舎から離れた一角に防球ネットが設置されてあり、そこが勝負場所だ。あの頃はプールも賑やかだったが、今はもう災害用の水が貯まっているだけである。

「いつも通り俺から行くぜ」

「もちろんですよ。必ず抑えますから」

お互い軽くストレッチをして体をほぐしていく。少し動いただけでも汗が噴き出るほどの陽射しの中で、黙々と準備をしていく。岡は部活引退後も体を動かしていたので、現役時とさほど変わらぬ状態だ。投げる方には自信があるが、問題は打つ方だ。とりあえず今は投げる方に集中する。

 アップも終わり、岡はマウンドへ向かう。久しぶりに相対する二条はあの頃と変わらぬ構えだった。力感のないフォームはかつて三冠王を3度獲得した大打者を思わせる。この隙のない柔軟な構えの前に、岡はよくやられていた。あれから5年。少しは成長した所を見せたいものだ。

 岡は初球のカーブを低めに決めた。際どいコースだったが二条はストライクだなと言った。二人しかいないため、ジャッジは基本的に両者の合意で決まる。ボールでもおかしくないコースがストライクになることも、逆もまた然り。それにしても、初めて投げるカーブに二条は驚いた様子を見せなかった。

 2球目はカット気味の速球をインコースに投げ込んだ。左打ちの二条対策で覚えた一夜漬けの球種だったが、狙い通りファールにできた。追い込んだ。岡はそう思った。

 二条はそんな表情を浮かべる岡を見て、懐かしくなった。いつもすぐ顔に出るのがコイツの特徴だ。あの頃と何も変わってない。早めに勝負した後の3球目は交わしてくる。間違いなく。

 3球目は二条の予想通り、ボールでokの高めのストレートだった。ストレートで釣って外に落とすのがこいつの十八番だ。かつての組み立てから逆算すると、次はボールになる変化球だ。二条はそう確信したが、予想に反して外角にストレートが入ってきた。完全に裏をかかれた二条は中途半端なスイングで空振りに終わった。あの頃と違い強気な配球を見せる岡に、二条は嬉しくなる。なんとか打ち取ったマウンドの岡は小走りで水分補給をしに行った。二条はゆっくりとグローブをはめ、アップを始めた。攻守交替だ。

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