涙色キャンバス
じれったいお題ったーを使いました。
じれったい恋のお題をランダムで3つ出します。気に入ったものを自由に使ってください。名前のところにはキャラのお名前やCP名などをどうぞ。
今日の春香のお題は、『かなわない』『涙出るくらいまで』『こんなにも、触れたい』です。
二年生が主に使う建物。三年生が主に使う建物。それを繋いでいる連絡通路。毎日すれ違っているはずなのに、私には手が届かない。届くわけがない。
先輩。私の先輩じゃない。あの人の先輩なんだ。
美術室で油彩に挑んでいる私。部長はイラストを描いている。他の部員たちも思い思いの作品を描いたり作ったりしている。中にはさぼっている人もいる。美術部の通り名は、実はさぼり部だったりする。
ちらっと横を見る。一個上の部長と目が合う。すると部長はにっこり笑い返してくれる。
部長は良い人だ。面倒見がよくて、学校の成績も優秀で、先生たちから褒められて。絵に描いた優等生って感じ。しかも、すっごくすっごく可愛い。すれ違うとすっごくいい匂いだってする。
隣の教室は音楽室だ。
サックスの音色が美術室まで届いてくる。へたっぴな一年生や、艶やかな音を出す三年生の音色。私の好きな、先輩の音色。
ここまで手が届きそうな距離なのに、なんでだろう。海を挟んでいるみたいな距離感。
でも、そんな美術部と吹奏楽部のただ一つの架け橋が、部長と先輩だ。
だって部長と先輩は恋人同士なのだもの。
部活終わりには一緒に帰ってるし、友達とよく行くハンバーガー店でも二人でよくいる。
お揃いのスマホケースも持ってるらしいし、部長と、部長のお友達ともよく恋バナをしてる。
去年、入学式が終わって一週間くらい経って、美術部の見学をしたときに、吹奏楽部の先輩を横目にしただけで一目惚れしてしまった。
そんな片思いを一年もしていれば、慣れてくるような、むなしいような、微妙な感覚になる。
部長と先輩は来年には高校生だもんな。
おんなじ高校へ行くのかな。
聞いた話、先輩も頭がいいので、二人そろって進学校へ行くのかな。
おんなじ電車に乗ったりするのかな。
放課後デートするのかな。
春にふたりで入学して、お花見かな。
夏には夏祭りでりんご飴食べながら花火も見るんだろうな。
海なんかにも行ったりしそう。部長のおっぱい大きいもんな。先輩喜ぶかも。
夏休み明けたら、なんていうか、夏休みデビューみたいなことなるのかな。
秋になったら一肌恋しいから抱き合うんだろうな。
一緒に美味しいもの食べたりするんだろうな。
冬が近づくと、部長も先輩も手を繋いで二人で登校するんだろうな。
クリスマスはプレゼント交換するんだろうな。
大晦日はずーっとLINEとか通話とかして年越しするんだろうな。
それから一緒に初詣に行って、部長の晴れ着姿を先輩が見て、かわいいかわいい言うんだろうな。
冬休みが終わったら三学期で、一緒に学年末のテストの勉強とか一緒にやるんだろうな。
ズリっと音がして、筆がキャンバスを滑って一直線に水色が風景を切った。
私がこんなに先輩のことを思っても、先輩にこの思いは届かないんだろうな。
涙が出るくらい、寂しい。
私のことすら知らない先輩。
先輩に私のことを知ってほしい、お話したい、ほんの少しでいいから、触れてみたい。
でも、こんな思いですら叶わない。
だってあんな彼女がいるんだもの。
なんだか、キャンバスに一直線に走った色が、涙色のような気がして、本当に涙が出そうになっちゃった。
風景はざっと浮かぶのですが、情景や心情を綴るのは難しいですね。
ご覧いただきありがとうございます。