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8 勉強会!?

「上野君、帰ろう!」

 実乃が元気に声をかけてきた。

 伏兵の二人も一緒にいる。

「じゃあ、行こうか。」

 途中、コンビニに寄って飲み物とお菓子を買い込む三人。

 本当に勉強をする気があるのだろうか……。

 タピオカミルクティーを買っているが、まだタピオカは流行っているのか?

 その後もダラダラしゃべりながら歩き、ようやく僕の家に到着した。

「ただいま。」

「おかえりなさい。あら、今日は知らない女の子を三人も連れ込むの?」

 いつものように出迎える大学生(ひまじん)

「人聞きの悪いことを言うなよ。勉強をするだけだ。」

「こんにちは、お姉さん。おじゃましまーす。」

 実乃達は元気にあいさつした。

 さすがトップカースト。

 すごく好感が持てるいい子達に見える。

 階段を上がって二階へ行き、僕の部屋のドアを開けようとすると……。

「突然来たのに、このまま私達も入って大丈夫? 隠さなきゃいけないものとか……。」

 実乃が余計な心配をしている。

 隠さなきゃいけないものは、汐里が「恥ずかしいことじゃないから」と言って堂々と本棚に並べようとしたから、すべて処分したのだ。

「そういう心配はいらないから。」

 僕は、そう言いながらドアを開けた。

 すると、隠さなきゃいけない人がいた。

 着替え中で下着姿の汐里だ。

 すぐにドアを閉めようとしたが、時既に遅し。

 三人もしっかりと汐里を目撃していた。

「おかえり、隼人。」

 汐里が抱き着いてくる。

 この時、僕はすべてを悟った。

 汐里はこれがしたくて、ずっとこの姿で僕たちの帰りを待っていたのだ。

「あら、お客さん? すぐに服を着ますね。」

 汐里は勝ち誇った表情で、口をパクパクさせている三人にそう言った。


  *


「その荷物、まさかお菓子パーティーをする気じゃないですよね? 彼女がいる男の子の部屋に上がり込んで……。まぁ、実際には、ここは隼人と私の部屋ですけど。」

 という汐里の言葉により、パーティー気分なんてなくなった三人は、勉強を始めようとした。

 しかし、三人共、カバンの中に教科書が入っていない。

 一体、何の勉強をしにきたというのだろうか。

 それを見た汐里は嫌味を言いながら、美玖の部屋へ行き、一冊の赤い本を借りてきた。

 表紙には、美玖が現在通っている大学の名前が書いてある。

「この程度のサービス問題も解けないのですか? 先輩。ここは……。」

 解説は分かりやすかった。

 しかし、不必要なまでに心に傷を付けながらしゃべるな……。

 というか、汐里はなぜこの問題が解けるのだろうか。

 勉強は捗っているかもしてないが、あまりにも心理的負担が大きい。

「それでは、そろそろ休憩にしましょうか……と思いましたが、これほどできないのであれば、休憩などする余裕はありませんね。今日は、泊まっていかれますか?」

 三人は全力で首を横に振る。

「そうですか。寝ずに勉強をしようかと思ったのですが、それなら私は隼人とあのベッドで今日もゆっくり眠ることにします。」

 そう、心が削られているのは三人だけではない。

 もうそろそろ僕もヤバイ。

 そう思った時……。

 部屋のドアが開いた。

「明日のデートだけど……。」

 美玖が入ってきた。

「あら、ちゃんと勉強してるのね。どれどれ……。あ、この問題は簡単でしょ。あれ? こんな問題も分からないの?」

 汐里と美玖。

 普段はいがみ合う二人が共通の敵を前に共闘している。

 その破壊力は半端じゃない。

 しかし、そりが合わない二人の共闘には歪が生まれる。

「……だからこの和歌の意味は……。」

 それは、美玖が古文の解説をしている時のことだった。

「その説明は正確ではないわね。その程度の浅い理解で合格できてしまうなんて嘆かわしいわ。ここはね……。」

「さっきの私の説明でも問題にはきちんと答えられます。」

「そんな『問題に答えられればいい』なんていう心掛けで勉強していたら、ただの試験馬鹿になるわ。学問は真理探求のためにあることを忘れては駄目じゃない。」

「理想だけ高く掲げても、行きたい大学に行けなかったら意味がありません。大学に入ってからやりたい勉強に没頭すれば……。」

「無理ね。大学受験だけを切り抜けようとするような人は、大学に入ったらレポートや試験だけを切り抜けようとするのよ。まぁ、それさえ切り抜けられずに留年している大学生はそれ以下だけど。」

 こうなってはもう駄目だ。

 この後もしばらく舌戦を繰り広げていた二人だが、とうとう美玖が自室へ逃げ帰ってしまった。

 きっと、美玖はこの悔しさをバネに今年こそは卒業することだろう。

 そして、もういい時間になっていたので、今日の勉強会はお開きになった。

 三人は魂が抜けたような顔をしているが、大丈夫だろうか。

「私達で送っていってあげましょう。」

「うん。」

 そして、当然のように僕と汐里は腕を組んで、三人を自宅に送っていった。

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