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6 同衾!?

 入浴が終わり、美玖の部屋で宿題、復習、予習をした僕は、自室に帰って寝ようとしている。

 今日組み立てたばかりの新しいセミダブルのベッドで。

 今日からこの部屋の住人は二人になった。

 そして、シングルサイズのベッドを捨てて新しくセミダブルのベッドを置いた。

 毎日眠るわが家なのだから、床で寝るわけにはいかない。

 学校一の美少女と同じベッドで寝るのか……。

 いや、思春期の息子が母親と同じベッドで寝るのか!?

「さあ、明日も朝早くから学校があるんだから、早くねんねするのよ。」

 汐里は僕を寝かしつけようとしている。

 やむを得ない。

「おやすみなさい。」

「おやすみ、隼人。」

 それからずっと寝ようとしているのに、全然寝れない。

「ねむれねむれ母の胸に。ねむれねむれ母の手に。こころよき歌声に。むすばずや楽しゆめ。」

 シューベルトの子守歌を歌う汐里の歌声は、マジ天使の歌声。

 僕は、あっという間に眠ってしまった。

 いや、そんな訳がない。

 もう子守歌で眠る年頃ではないのだ。

 美少女が隣にいることによるドキドキ、大なり、子守歌の睡眠作用だ。

「まだ眠れないの?」

「うん。」

「それじゃあ、お話を聞かせてあげるわ。むか~しむかし、ある所に、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこ、どんぶらこと桃が流れてきました。おばあさんは流れてきた桃を家に持って帰り、おじいさんと一緒にその桃を食べました。すると、おじいさんとおばあさんは若返りました。」

「え?」

「おじいさんは言いました。『やはり、ばあさんは良い女だぜ。今夜は寝かさないぜ。』すると、おばあさんもいいます『おじいさん、若返ったら、こっちもすぐに元気になっているわね。うふふ。』」

「ちょっと! そのやり取りはいいから。」

「しょうがないわね。そのなんやかんやがあって、おばあさんは一発で妊娠しました。すると、元気な女の子が生まれました。おじいさんとおばあさんは、その女の子がとても可愛いので、鬼にさらわれないように『桃太郎』と名付けました。」

「桃太郎って女なの?」

「そういう説もあるわ。桃太郎は元気に育ちましたが、怠け者で寝てばかりいました。しかし、鬼ヶ島にたくさんの財宝があると聞いた桃太郎は、鬼退治に行くことにします。」

 こんな言い方をしたら、桃太郎が悪者だ。

 たしか、桃太郎が盗人なのかを研究してニュースになった小学生がいたな。

 自由研究であそこまでできるなんて、素直に尊敬できる。

「そんな桃太郎におばあさんはきび団子を持たせました。桃太郎が旅に出ると『桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけたきび団子、一つ私にくださいな。』と石臼が話しかけてきました。桃太郎は『鬼退治についてくるならあげましょう。』といいました。桃太郎は同じ手口で、きび団子につられてやってきた針、糞、百足(むかで)、蜂、(かに)、卵、水桶を配下に加えていきます。」

「犬、猿、雉は?」

「どこかで遊んでいるわ。そうして、桃太郎の一味は鬼たちが平和に暮らしている鬼ヶ島に襲来しました。桃太郎は『鬼の皆さん、一杯やりませんか?』と言って、鬼達に度数の高いお酒を飲ませました。そして、鬼達が酔っ払っている間に、財宝をねこそぎ盗んで帰りました。帰った桃太郎は、金に目がくらんだ美女と結婚し、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」

「めでたくないわ! 悪が栄えてどうするんだよ。というか、桃太郎は女なのにどうして美女と結婚するんだよ。」

「愛に性別なんて関係ないわ。今時、ヘテロノーマティビティじゃ駄目よ。」

「今の話じゃないよね。昔の話だよね。」

「明治時代に西欧のキリスト教的な性倫理観が入ってくる前の日本は、性に関して寛容だったのよ。」

「へぇ~。」

「そもそも、男女の夫婦のエッチしか認めないのはキリスト教的な倫理観であって、普遍的な考え方とはいえないわ。ヨーロッパでも、古代ギリシャの哲学者プラトンがいう『エロース』は同性愛のだったの。だから、古代ギリシャの哲学者達は美のイデアに至るために……。」

 この話が始まって間もなく、僕は寝た。

 同性愛の話を一晩中聞かせられたらたまったものじゃない。

 美玖だけじゃなくて、汐里も婦女子なのか……?

 いや、汐里は僕がジェンダー問題に関心をもつよう説いているだけなのだろう。

 そう思いたい。


  *


「おはよう。」

 翌朝僕が目を覚ますと、目の前に汐里の顔があった。

 相変わらず可愛いな。

 なぜか膝枕されている。

 昨夜寝たのは結構遅かったのだが、この人はいつ寝ていたのだろうか。

 今日、僕の身に一体なにが起こるのか不安だが、頑張ろう。

「おはよう。お母さん。」

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