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2 対決!?

 翌日、授業に全然ついていけなかった。

 昨日の授業をちゃんと聞いていなかったせいだ。

 まさか、母親からの手紙であんなにドキドキすることになるとは……。

 理解していないながらもノートだけはとった。

 返って勉強を教えてもらおう。

 そう。

 僕には専属の家庭教師がいる。

 従姉の美玖だ。

 美玖は正に才色兼備だ。

 見た目は伯母さんに似てきれいで、しかも現役東大生である。

 もっとも、現役東大生というと聞こえはいいが、大学八年生というちょっと残念な側面もある。

 大学八年生。

 もう留年はできない崖っぷちだ。

 それでも、高校の学習内容はバッチリだし、教えるのも上手い。

 早速帰って教えてもらおう。

「は~やと。一緒に帰ろう。」

「帰ってから美玖お姉ちゃんに勉強を教えてもらわないといけないから今日は遊べないぞ。昨日誰かさんがラブレターみたいな手紙を送ったせいで、授業に集中できなかったから。」

「隼人。あれラブレターだと思ったんだ。ドキドキした?」

「普通ドキドキするだろ。とにかく、今日は駄目だ。」

「勉強なら、お母さんが教えてあげるわよ。」

「高校二年生の内容だよ。お母さんに教えられるわけがないじゃないか。」

「お母さんを見くびっちゃ駄目よ。」

 結局、邪魔をしないことを条件についてくることを許可した。


  *


「ただいま。」

「おかえりなさい。って、今日も来たんですか。」

 今日も美玖が出迎えてくれる。

 よく考えると、この人は暇なのだろうか。

「今日は、隼人に勉強を教えに来たのよ。」

「勉強を教えるのは母親や下級生の役割ではありません。お姉ちゃんである私が教えます。」

「大学八年生は他人の勉強にかまけていないで自分の勉強を頑張りなさい。」

「私は勉強ができなくて留年したんじゃありません。趣味に時間をとられていただけで、本気を出せばちゃんと卒業できます。」

「だったら卒業してから言いなさい。言うだけならなんだって言えるわ。」

 母と姉がなぜか険悪な雰囲気だ。

「隼人には私という立派な育ての母がいるんです。実の親の生まれ変わりがしゃしゃり出てくる必要はありません。」

「実の親が戻って来たんだから育ての母はお役御免よ。そもそも、育ての母は聡子お姉さんでしょ。」

 そう。

 美玖はなぜか自分が育ての母だと主張しているのだ。

 何度か聞いたことがあるが、「私が隼人を育てているから」というトートロジーっぽい答えが返ってきた。

「それじゃあ、どっちの方が教えるのが上手か勝負よ!」

「受けて立ちます!」

 対決の火ぶたが切って落とされた。

 まずは数学。

 先生は美玖だ。

「……そしたら、ここは平方完成をして……。ちなみに、平方完成っていうのは、チルンハウス変換の一種で……。」

 今日の美玖は変に気合が入っていて、解説の途中で無駄な知識を入れてくる。

 正直言っていつもより分かりにくい。

 次は英語。

 先生は汐里。

「隼人はここの『トーキング』が分かっていないようね。ing形が出てきたら、進行形か動名詞か分詞のどれなのかを一つ一つ確認していけばいいの。そしてここは……。分詞構文では従属節の接続詞と主語が省略されるのが原則だけど……。」

 分詞構文の理解が進んだ。

 分かりやすかった。

「さて、どっちの教え方が上手だった?」

 全く迷う余地がない。

「お母さんです。」

 汐里がガッツポーズをし、美玖が崩れ落ちた。

「普段の美玖お姉ちゃんだったら五分五分だったのに、今日は分かりにくかった。チルンなんとか変換の説明って必要だったの?」

 美玖がうなだれて部屋から出ていった。

 かわいそうではあるが、今は勉強を進めなければならない。

「じゃあ次は……。」

 鞄から教科書を取り出していると……。

――バサッ。

 床に教科書が一冊落ちてしまった。

 その教科書を汐里が拾う。

「これは……。隼人、お母さんに保健体育を教えてほしいの?」

「ちっ……、違う!」

 僕は汐里の手から保健体育の教科書を取り上げた。

「あれ? どうして顔が赤くなっているの? もしかして、エッチなことを想像した? 大丈夫。頭の中がエッチなことでいっぱいになるのは、健康に成長している証だから恥ずかしがることはないわ。」

 母の言葉が息子の心をえぐる。

 母よ、言っていることはきっと正しいが、もう少し息子の気持ちを理解してくれないだろうか……。

「今日は、もう帰ってくれ。」

 汐里は不満そうな顔をしたが、素直に帰っていった。

 その後、美玖に勉強を教わりに行くと、いつもどおり分かりやすく教えてくれた。

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