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1 告白!?

ミッドナイトノベルズに先週から連載開始した「チートなのに巨乳だから異世界生活が思うように進まない」に引き続き連載を開始しました。よろしくお願いします。

なお、好きなネタは、どちらでも使いたくなってしまうので、かぶるものが多いと思いますが、暖かく見守っていただけると幸甚です。

 高校二年生になって数日が経った朝、僕の下駄箱に手紙が入っていた。

――上野隼人(うえのはやと)様。放課後に校舎裏へ来てください。渋谷汐里(しぶやしおり)

 これは、ラブレターだろうか。ラブレターなのか?

 いや、冷やかしという線もある。

 そう思い、逸る心を静める。

「おはよう。」

「おはよう。」

 廊下を歩いていると、クラスメートの富樫(とがし)徹平(てっぺい)が話しかけてきた。

「なぁ、渋谷汐里って知ってるか?」

 僕は徹平に手紙の差出人について尋ねた。

「渋谷汐里って一年生のめっちゃかわいい子だろ? お前、狙ってるのか? ライバル多いぞ。」

「いや、そういうわけじゃないんだが……。」

 僕は、にやけそうになるのを我慢して平静を装った。

 入学してすぐに上級生にまで名が知れる程かわいい子から僕にラブレターが届いたのだ。


  *


――キンコンカンコン。

 ようやく放課後になった。

 今日はどの授業も長く感じた。

 教室から校舎裏までの道のりも遠く感じる。

 もう、この角を曲がれば校舎裏だ!

 校舎裏には、テレビでも見たことがない程の美少女がいた。

「きっ、君が、渋谷汐里さん?」

 やばい。

 緊張で声が震えている。

「隼人!」

 汐里が僕に駆け寄り、抱き着いてきた。

 今、後輩から呼び捨てにされたような気がするが、それどころではない。

 心臓の音が観測史上最大だ。

「隼人、話があるの。落ち着いて聞いて。」

 抱擁が終わったが、落ち着いて聞けそうにない。

 というか、後輩に呼び捨てにされた上にタメ口を聞かれているような気がするが、まぁいいや。

「私ね……。」

「何?」

「昨日、前世の記憶が蘇ったの。」

「ん?」

 何やら、話の雲行きがおかしくなってきた。

 この美少女は、厨二病なのか?

 やばい。

 告白してもないのに振られた気分だ。

 しかし、もう心の準備はできた。

 もう何を言われても動揺すまい。

「私の前世はあなたの母親。上野香織です。」

 僕の心は凍り付いた。

 僕の母親は、僕が一歳になる前に交通事故で死んだ。

 歩道に突っ込んできたトラックから僕をかばって死んだのだ。

 悪いのはトラックの運転手だと頭では理解しているが、心の底では僕が母親を殺したのだと思ってしまう。

「何の冗談ですか。どこで僕の母親の名前を知ったのかわかりませんが、すごく不愉快です。」

 自分でも驚くほど冷たい声が出た。

「事故とはいえ、あなたを一人にしてしまって本当に悪いと思っているの。ごめんなさい。これからは私が側にいるから。お願い! 信じて!」

 汐里が号泣する。

「泣かないで。」

 さすがに女の子に大声で泣かれると居心地が悪い。

 僕は汐里に近づいて背中をさすった。

 すると、汐里は再び僕に抱き着いた。

「信じてくれる?」

 汐里は上目づかいで僕にそう尋ねた。

 目が真っ赤に腫れている。

「信じるかどうかは保留。一度頭を冷やして考えたいから今日は解散しよう。」

 そう言って、今日は帰ることにした。


  *


 母の生前、母と僕は母子家庭だったそうだ。

 父はどこにいるか分からない。

 会ったこともない。

 父と母は結婚していなかったのだ。

 母は父と結婚する気でいたが、父には既に別の妻と子がいたそうだ。

 僕は、母の兄、つまり僕から見ると伯父に引き取られて育ててもらっている。

「ただいま。」

「おかえり。あれ? 隼人、女の子を連れてきたの?」

 家に帰ると、従姉の美玖(みく)が出迎えてくれた。

「連れてきたんじゃなくて、ついてきたんだよ。」

 そう。

 汐里はあの後、家についてきたのだ。

 駄目だと言っても「それなら勝手について行く。」というからどうしようもなかった。

「もしかして、美玖ちゃん? 大きくなったわね!」

 美玖が困った顔をする。

「どうしたの? 騒がしいわね。」

「あら、聡子(さとこ)お姉さんだ!」

 汐里がなぜか上野家に詳しい。

 本当に汐里は母親だったのだろうか……。

 僕には母親に関する記憶がないから分からないが、この後、伯父さん、すなわち母親の実の兄が帰ってくる。

 せいぜい伯父さんの前で化けの皮が剝されないようにするがいい。

 そう思っていると……。

「……それでね、その時お兄さんが『僕の妹をいじめるな!』って言って私を助けてくれたの。聡子お姉さんには悪いですけど、お兄さんはシスコンなんですよ。」

「そんな昔の話をするな。恥ずかしいだろ。」

 伯父が帰るとすぐに兄妹の思い出話に花が咲いた。

 伯父はすっかり汐里のことを妹だと思っているようだ。

 伯母、美玖、僕もその空気に飲まれている。

「汐里、まだ帰らなくていいのか?」

「隼人、『汐里』じゃなくて、『お母さん』でしょ。」

「そうだぞ隼人。香織は君の母親なんだから『お母さん』と呼んであげなさい。」

 伯父にまでこう言われては仕方がない。

「もう、わかったよ。お、お母さん。」

「隼人!」

 汐里はまた泣きながら僕に抱き着いた。

 お母さんっていい匂いだな。

 やわらかいし。

 それに、かわいい!

 ドキドキしてくる。

 あれ?

 途中からおかしいような……。

 母との距離感のつかみ方がよく分からない。

「それじゃあ、帰るね~!」

「隼人、香織を送っていきなさい。」

 確かに、この美少女を夜一人で帰すわけにはいかない。

「じゃあ、送るよ。お母さん。」

「ありがとう。隼人。」

 道中、汐里は手をつないできた。

 四月の夜は少し肌寒いが、手は少し温かくなった。

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