秋葉原ヲタク白書48 地下アイドルの値札
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第48話です。
今回は、事故死したメンズ地下アイドルの賠償が逸失利益を踏まえたモノとなる運動をするようリクエストされます。
ヤタラ演説の上手い運営にのせられて、中央通りをデモ行進するコンビでしたが実は曲者な運営の真の狙いは…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 メンズ地下アイドル
「"キス1"がっ!"キス1"が死んじゃったのょ!」
誰が騒いでるのかと思ったら、ジュリだ。
彼女はストリートギャングのヘッドの妹。
因みに、アラサーのセーラー服姿が痛いw
「ええっ?あのメンズ地下アイドルの"キスまで1秒"が死んじゃったの?!」
「そうなの!大阪でのライブの帰り道に東名高速のバス事故で!4人が全員死亡!」
「あ、あの居眠り運転で30人死傷とかTVで大騒ぎになってる事故?」
ココは、僕の推し(ているメイド)ミユリさんがメイド長を務めてるアキバの老舗御屋敷。
覚醒と同時に世界を滅ぼしかねない恐れがあり"破滅と誕生の戦士バー"と呼ばれる。
「メンズ地下アイドルか。アイドルと逝えばヒラヒラパニエのピンク女子ばかりと思ってたら、メンズもいるんだねぇ」
「差別発言!もはやソレ、セクハラ発言だから!女子にだって"逢いに逝けるアイドル"は必要なのよっ!」
「そう逝えば、この前、合コンしたメイド居酒屋の新宿店の子が逝ってたけど、最近ついに歌舞伎町でホストクラブの数がキャバ(クラ)の数を上回ったらしいな」
と、タメになる蘊蓄を披露した瞬間、僕の胸から背へと"デス光線"が貫通!
ミユリさんの両目から光線が出てるw合コンのコトは予め断ってあったのに…
「ソレで遺族に早速、賠償金の提示があったのょ!ヤタラと手回しが良くない?何だか、予め交通事故が起きるコトを知ってたみたいな」
「ええっ?そ、そ、そりゃタイヘン!アキバの一大事だっ!もしかして、仕込まれた事故だったとか?まさか、バスの客の中にスパイがいて敵国のスパイに交通事故を装って消されたとか?おおっ"キス1"自体がアイドルを装ったスパイ団だった可能性もアル。アイドルがスパイなんてアメリカのTVコメディみたいだね」←
「な、何なの?その慌てて何かを取り繕おうとスルかのようなマシンガントーク?とにかく!そーゆーおバカな疑問は、ミユリと竿姉妹の"マスターキー(僕の知合いの大陸から来た女スパイ)"にでもして頂戴。で、ソレよりも問題は賠償額よ。猫も杓子も、アイドルも一般人も全員一律らしいンだけど、コチラのダンカさんが、そのコトで、みんなに何か話があるそーなの」
革ジャンにバンダナのアラフォー男が登場。
最近、密かに流行中らしいオヤジ暴走族か?
「私は"キス1"プロデューサーのダンカと申します。私、怒っております。と言うのもバス会社が一部の遺族の言いなりになっているからだ。彼等は、受け取る賠償金の額について、全員が平等に扱われるべきだと固く信じている。でも、良いですか?何より"キス1"は成功していた。懸命に努力し、メジャーに肉迫する存在へと立派に成長していたのです」
「えっと、作者が逝わんとするコトを3点に絞って述べなさい」
「ハイ、先ず1点目。悪いけど"キス1"の経済価値は、一般人よりあって当然だと思う。他の安月給なサラリーマンやプー太郎や地下アイドルより"キス1"は努力して"勝ち組"になっていた。因みに、事故を起こしたバスには、そういう"勝ち組"の乗客は他にも沢山いた。その人達の経済価値は、賠償金額にキチンと反映され、遺族は相応の額を受け取るべきだ。ヲタクのみんなもそうは思わないか?次に…あ、あれ?今、何点目だっけ?」
何だw
どうも、もっと賠償を寄越せって話らしい。
しかし、遺族でもないのに余計なお世話だw
ソレに"キス1"ってホントに"勝ち組"なのか?
地下アイドルである時点で既に"負け組"では?
「甘い。みなさんは、何もわかっちゃいない。"キス1"の連中、月収がいくらか御存知ですか?100万ですょ100万。月収100万円の方、この中にいらっしゃいますか?いるハズないょな。アキバのヲタク自体が"負け組"なんだから」
「わぁ!このオッサン、御屋敷にケンカ売りに来たのかな?アキバのヲタクなめんなょ。ところで"キス1"は、どうしてそんなに高収入なのdeathか(急に敬語w)?」
「考えてみてください。記念写真だけでも彼等は月に1000〜3000枚は売る。彼等クラスだとバックは2割じゃなくて4割だ。1枚¥1000として、もうソレだけで月収は100万に届く。もちろん、他のオリジナルグッズの売上やライブのチケット代、ギャラやら何やらで…月に100万稼ぐ人間を"勝ち組"と呼ぶコトに御異議のアル方はいますか?あ、因みに運営も彼等のお陰で月100万は儲けさせてもらってまして、私は他に似たメンズ地下アイドルを2組ほど抱えてるので、まぁ月に300万ほど…あ、ぷぷぷっ、と、止まらないょ笑いが、失礼、ダ、ダメだ、やっぱり笑わせてくれ、わっはっは」
何だょ結局、アンタ様はソレが逝いたかったワケdeathかょ?
ハイハイわかりましたょアンタ様も"勝ち組"だ!眩しぃ!
で"負け組"のヲタクに何か御用deathか?
「ソコだっ!こうした事故におけるバス会社のアプローチは、常に非階層的なモノになる傾向があるっ!つまり、賠償金を犠牲者全員に定額で払いたがるのだっ!犠牲者の年収など一切考慮しないっ!コレは横暴だっ!私達遺族はソレを到底受け入れるコトは出来ないっ!」
何とココでオッサンは、拳を振り上げながらバーカウンターの上に登る。
あぁ!ガールズバーのゴーゴータイムじゃあるまいし何てコトするんだ!
オッサンを下から見上げても全然面白くなひ←
「我々は1組の地下アイドルを失った。しかし、コレは敗北を意味するのか?否!始まりなのだ!ウチの儲けガシラ!諸君らアキバのヲタクが愛してくれた"キスまで1秒"は死んだ!何故だ?!」
「交通事故だからさ(シャアの声で)」
「アキバのヲタクよ!討つべきはバス会社の軟弱な経営者である。もはや、バス会社に経営者ナシ!立てょヲタク!今こそ"定額制"をこそ我らの前に打ち倒すべき時である!」
し、しまったwダンカは"大衆を扇動する者"だったのか!
団塊世代より3ケタ(30年)は若いからウッカリ油断してたょ←
論旨に無理があるがガンダム生誕40周年の内に刷り込まれたセリフにカラダがパブロフの犬のように勝手に反応、激情がこみ上げる←
既に常連の何人かはバーカウンターの上でダンカと肩を組み"翔べ!ガンダム"を熱唱w
ソレを見上げるジュリの瞳に涙が溢れて、誰が持ってたのかジオン国旗が打ち振られる←
やれやれ。飛んだ騒ぎになったモノだ。
第2章 "定額制"を叩け
「…と逝うワケで、何だかよくわからないけど、賠償金の"定額制"を叩くコトになっちゃったンだ。知恵を貸してくれ」
「あのなぁ。古代ギリシャ以来、民主主義はアジテーター対策として、感動の満場一致は翌朝には無効とする手段を講じて衆愚政治に陥る愚を防いで来たンだがな」
「古代ギリシャで有効な手段でもアキバじゃ無効なんだから生姜焼き定食…じゃなかったショーガナイだろ?小難しいコト逝ってないで知恵を貸せ。返さないけど」
ココは、僕の小学校時代からの友人、橘ミツルの法律事務所だ。
彼はヤメ検弁護士で極めて優秀だが、ある日ヲタクに目覚める。
以来"アキバハンマー"を名乗りハンマーの被り物で法廷に立ってヲタクの権利を守る。
先日、巨乳司法書士のエリカと結婚したが、まぁ仲は僕が取り持ったようなモノなんだ。
「あら、テリィたん。お一人様?珍しいわね、ミユリは一緒じゃないの?せっかく私がメイド服でお出迎えしてるのに」
「あのなぁ。今日はタチマンと"男同士の話"ってのがあって来たんだ。メイドさんと逝えども女人禁制。僕だって、年がら年中ミユリさんを連れ歩いてるワケじゃナイんだょ」
「違うでしょ。連れ歩いてるのはミユリの方。ミユリがテリィたんを連れ回してるのょ。犬を散歩させるみたいに」←
胸の谷間クッキリ見せてエリカのお茶出し。
久しぶりの巨乳メイドの出現に目、目眩がw
とにかく!僕はタチマンに貸しがアル←
「でさ、ヲレに何して欲しいワケ?あ、エリカ、ちょっちマジでハズしてょ。後で穴埋めするから」
「あ!何かエッチな響き…だけど、まぁいいや。先ずさ、損害賠償って、詰まるトコロ、何なんだょ?どうやって計算すんだかも含めて教えてチョンマゲ。ヲタクにもわかるようにね」
「損害賠償、わかりやすい言葉で逝うトコロの"血の代償"は、今や大企業すらも一瞬で破産に追い込む地獄へのドアだ。チャイルドシートの欠陥や食品への毒の混入、油田設備の安全弁の不備などで死者が出たとする。その手の話は訴訟沙汰になれば、ほぼ必ず企業は負けて、払う賠償金は天文学的な数字となる。そこで企業は"コト"が起こるや、先ずはさておき、この分野で最強の法律事務所を雇って最低限の賠償額を計算させ、民事や刑事訴訟を起こされないようにアレコレと手を打つワケだ」
アレコレって何だろう?つまり遺族の間を金で解決して回るってコトかな?
表では社長に頭を下げさせといて、裏ではそんなコトに奔走してるワケかw
「で、この分野に強い法律事務所は、大抵は命の値段を決め、ソレを金で買うための"数式"を持っている。つまり、人の価値を金額に落とし込むための"数式"だ。この"数式"により、夫の形をした札束が未亡人を癒し、小切手が孤児を育てるスキームが出来上がる。賠償額自体は、基本的に死者の逸失利益を考慮して算出されルンだけど、ソレを弾く"数式"は"もっともらしさ"を競う内に無駄に精緻を極め、今では太陽系外探査衛星の軌道計算式よりも難解なモノになってしまった。しかし、この"数式"のお陰で、下手すりゃ殺人罪で罰せられかねない大企業が、晴れてお咎めナシで明日もビジネスに邁進するコトが出来る、と逝う仕組みだ」
「しかし、銃を撃てば死ぬとわかってルンだから、承知で撃った奴は罰せられるべきだと思うがな(自分で逝ってて意味不明w)。とにかく!ダンカは"キス1"の損害賠償について"定額制"ではなく"数式"を使うコトを求めている。そのための世論喚起をアキバのヲタクとして行って欲しい、と逝うのが今回のリクエストだ」
「ソコがよくわからない。通常は、例えば旅客機が墜落した時とか、同じ乗客でも高所得者の多いファーストクラスは"定額"から"数式"に切り替えるだけで遺族が受け取る額が10倍以上にハネ上がったりする。他方、低所得者の多いエコノミークラスは"数式"よりも"定額"の方が高額の賠償金となるケースが多い。で、今回だけど、まぁ如何に売れてるとは逝え、その、何と逝うか、ぶっちゃけ地下アイドルだょね?正直なトコロ、恐らく後者の"定額"の方が儲けが多いカテゴリーだと思うンだけど、運営は何で"数式"を推すのかな」
なるほど。僕も必死にアタマをヒネる。
「今回の事故を契機に、何処かの誰かが"金持ちは貧乏人より価値がある"ってコトを世にアピールしたいと思ってルンじゃナイか?そーだょコレは金持ちの、金持ちによる、金持ちのための仕組まれた事故に違いナイ。裏には"秘密結社 世界金持ち連合"がいて、政治的アピールを出すタイミングを虎視眈々と狙っているのだっ!」
「お前、小学生の頃からそーゆー社会陰謀論が好きだったょな。ソレから、その小学生並みのネーミングセンスも何とかならんかな。で、何と無くだけど、コレは経済社会への怒りに見せかけて、誰かが何かを企んでるって気がスル。ホントに社会の富の偏在に怒るなら、地下アイドルから話を始める理由がナイょ。ソレに"数式"でボロ儲けしてる法律事務所が、こんな形で自分の事務所や企業秘密にしてる"数式"が有名になるコトを望むハズもナイ」
「そーゆータチマンこそ、その小学生の頃からの人を信じない疑り深い性格のマンマ大人になっちゃって担任だったカワベ先生も草葉の陰で大号泣だゼ。もう検事は辞めたんだから、その"人を見たら泥棒と思え"精神は改めたらどぉよ。ってか、つまり結局ヤッパリそのタチマン的には"数式"を扱ってる法律事務所が怪しいってコトかな?」
タチマンが身を乗り出す。
「YES。で、知ってるのか?事務所を」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あ、知ってるわ。そのセンセ」
実は昨夜、後に"狂乱のガンダムナイト"と称され御屋敷で伝説化するバカ騒ぎの最中にランボー(者)がコッソリ教えてくれたんだ。
あ、ランボー(者)は政府公認のアキバ系高級娼館のマダムだ。
彼女の娼館を訪れる各国要人の寝物語は政権に筒抜けとなるw
で、彼女の顧客リストにダンカが不用意に漏らした弁護士の名前があるとのコト。
僕はランボー(者)とは色々貸し借りがあるが今回貸しを返してもらうコトにする。
彼女は"現場"に"エース"を急派する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
監視カメラの画像の中でスゲェ盛り髪の美少女が廊下でドアを指差して小首を傾げてる。
実は"エース"を見るのは初めてじゃナイが毎回あの髪はどうやって盛るのか謎に思う。
ココは電気街口の駅近ホテル"24"のオフィスで僕達はズラリと並ぶ画面を眺めている。
僕の横にはランボー(者)、その横に彼女には頭の上がらない支配人、そしてミユリさん。
「そう、そのドア。今、マユカが"接客中"だけどゲストには"サプライズで後から3Pをサービスで追加します"って逝ってある…あら?いつもより盛りが甘いけど盛り師、代えたの?」
「そーなの…ってそんなコトよりホントに音声だけでいいの?画像も撮ってもらって構わないのに。むしろ、撮ってもらった方が萌えルンdeathけど」
「絵は要らない。その分インタ(ビュー)の手を抜かないで。じゃ、逝って頂戴。GO」
瞬時にして"エース"は顔を妖艶な微笑で覆い尽くし、全く躊躇なくドアをノックする…
部屋の中では、賠償交渉一式をバス会社から受託寸前の"数式"を操る弁護士が熱戦中w
で、てっきり僕は、その、あの、何と逝うか、色んなコトが終わった後で腕枕とかされながらインタ(ビュー)するのかと思ったら…
何と最中にやってるょ!
"エース"ってスゲぇw
で、結果を要約すると…
"サクラ法律事務所"は損害賠償業界の最大手でいくつもの難事件を手掛けてる。
代表のサクラ氏(男性w)は、やり手だが投機に失敗、事務所は倒産の危機にあるw
「ええっ?倒産しそうなの?支払いは大丈夫?あんなサービスやこんなサービスって、実は全部オプションなんだけど、今宵はやめておく?ダーリン」
「サ、サ、サービスを止めるな、ベイビー。近々大口の契約を受、受、受託する予定ナンだ。お願いだから幼稚園の園服を、着、着、着ておくれ。ソッチの君はランドセル」←
「うーん、わかったわ。バカ」
ホントにバカだろw
盛り髪の幼稚園児←
今回、事故を起こしたバス会社は大手だから契約を受託すれば巨額の報酬が期待出来る。
さらに幼児フェチと判明したサクラ氏(男性w)は根っからの"定額主義者"と判明する。
あ、面倒なので氏のドモリは補正しますw
「ウチの事務所は、人の価値を金に置き換えるコトを生業として約半世紀、業界でも最古参の老舗なんだけど、大きな声じゃ言えないが、この仕事には無理がある。そんなコトが出来るのは誓って"神"だけだ。人がやって許される領域の仕事じゃナイ」
「スゴいわ!すなわち、サクラさん(男性w)は神なのね?」←
「神に代わって、人の値打ちを決める私を恨む人間は、君の後ろにマユカちゃんがいて…あ、マユカちゃん、裸にランドセルが可愛いょ萌え萌えだ…そのまた後ろに行列が出来る位だ。この街にある同じ分野の法律事務所とも話し合ったが"数式"で犠牲者の価値を決めるのは即刻止め、何もかも最初から"定額"にスルべきだ、と逝うのが業界の本音なのだっ!うっ!」
あ、最後の"うっ!"は補正モレだw
お願いだから、何だかは聞かないで←
どうやら"キス1"の賠償は、このママ放って置くと"定額制"に決まりそうだょ。
ダンカのリクエストに応えて"定額制"に持ち込むには、かなりの力仕事が必要だw
ま、ココまで来たらドッチでも良いけど←
第3章 ガンダムデモ
で、その気は全くナイが、翌日から結果として"力仕事"とやらに取り掛かるコトにw
小春日和の暖かく穏やかな日の午後。
中央通りにダンカの演説が響き渡る。
「このデモ行進により決定的打撃を受けたバス会社にいかほどの力が残っていようとも、ソレは既に形骸に過ぎない!敢えて言おう、カスであると!」
僕達は、万世警察の許可を得て、御屋敷の常連を総動員してデモ行進を行っている。
"狂乱のガンダムナイト"の流れで冗談半分に"ガンダムデモ"を始めてみたんだけど…
嗅ぎつけたダンカが勝手に乗り込んで来て、僕と感激の面持ちで握手を交わし、自らスピーカーを手に演説を始めデモの先頭を逝く。
うーん。彼は何か誤解をしてる気がスルw
「ヲタクょ立て!哀しみを怒りに変えて!立てょ!ヲタクょ!"数式"こそ、選ばれた賠償であるコトを忘れないで欲しいのだ。優良種である我等ヲタクこそ"数式"を救い得るのだ!ジーク・ジオン!」
もともとスピーカーで流れる街頭演説の声って聞きづらいモノなんだが、興奮するとダンカは早口になるので余計にワケわからナイw
結局最後の"ジーク・ジオン!"だけが際立ち、デモ参加者の唱和も自然と大きくなる。
すると、アキバ中のガンダムヲタクがアチコチから顔を出してワラワラと集まって来る。
最初は数名で始めた冗談デモが、みるみる100名単位で人数が膨れ上がり、今やデモ最後尾は遥か後方に霞んで見える、否、見えないw
さらに見渡すと半分はインバウンドで各国語で"ジーク・ジオン!"を叫び自撮りしてはセッセとSNSで世界中に情報発信を始める。
後で聞いた話だが"ノンキ・ホーテ"ではガンダムのコスプレが一瞬で売切れたらしい。
今やデモは、ジオン軍兵士の分列行進と化し国旗が振られ段ボール製ザクやドムが合流w
先頭で気持ち良く演説してたダンカは振り向くや驚き慌てて"数式"を連呼するも逆に「ジーク・ジオン!」の叫びにかき消されるw
やがてスマホTVのカメラクルーが到着し、少し遅れて地上波も来て、おおっ頭上にヘリが…
ああっ!みんなガンダムが好きなんだね!
そしてガンダムと逝えばジオン軍だょね!
絶対ソコは譲れないw
アキバ発で今や世界中に拡散した"ア・パオア・グー陥落デモ"は、かく始まったのだ。
今では要塞戦の始まった大晦日に日を移して世界中で同時多発デモが毎年発生している。
主催者としては想定外の展開ながら、ある意味で歴史の必然でもあったのか僕と御屋敷常連に世界のガンダムファンの尊敬が集まる。
アキバのネームバリューのなせる技だが…
全てはギレン気取りのダンカが悪いのだ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ガンダムデモ"の翌日、事故以来、賠償についてあらゆる選択肢を検討中として来たバス会社は一転"定額制"の採用を発表する。
"数式"の方が、賠償総額を抑えられるので会社には有利なハズだが、どうも弁護士サイドの助言を受けて役員会が決断したようだ。
かくして"数式派"は敗北を喫する。
第4章 ワンダーウーマンとのハグ
今回は、余り全貌がわからヌ内にココまで来てしまったけど、翌日の夜、御屋敷に"最後のピース"が登場し全体の絵が見えてくる。
で、先に断っておくけど"最後のピース"はワンダーウーマンのコスプレをしている。
「おはよう!コチラに"キス1"プロデューサーのダンカがお邪魔したと伺ったのですが」
「そんなコト、御屋敷が一見さんにペラペラ話すワケないでしょ。だから、私から教えてあげるけど、この前、来てたわょ。そーゆーアンタは誰?万世警察の新人さん?」
「私はワンダ。"キス1"リーダー、フブキの元カノ」
あぁ、最後の最後になって、またまたヤタラと面倒臭そうなのが来たょ。
常連が、後退りしながらワンダーウーマンのコスプレ女を遠巻きにする。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コスプレ女のカウンターパートを務めるのはセーラー服姿のジュリ。
同じコスプレイヤー同士お互いにチェックをし合いながら睨み合う。
メイド長のミユリさんは、カウンターの中で微笑みながら、お手並み拝見の構えだw
「今、フブキの元カノって名乗ったの?貴女、フブキと付き合ってたと逝いたいの?どうせ妄想でしょ?」
「いいえ。"リアル恋愛"だった。短期間だけど真剣だったの。だから、別れを告げられた時は激怒した」
「アナタ、指輪を外した痕がある。"不倫ピック"だったワケ?突然、フブキが貴女のケツから遠ざかって発狂中とか?あ、先に断っておくけど私、"同担絶対拒否"だから」
「フブキとは、残念だけど利害の衝突があった。彼との別離は、私が弁護士として生きる上での宿命だった」
え?この女、弁護士なのか?やっぱりワンダーウーマンじゃなかったのねw
ワンダーウーマンvsセーラー服と逝う誰もが泣いて喜ぶシチュエーションを率直に楽しみたかったが惜しいコトに2人ともアラサーw
"惜しい"と逝うより"致命傷"なんだけど笑、とりあえず、解説だけしておこう。
"リアコ"は"ガチ恋"と似てるが、対象の多くはMyTubeなどの"配信系アイドル"。
"不倫ピック"は話すと長いが、ココはオリンピック歓迎ジョークと逝うコトでOKだ。
"同担拒否"は"同担(推すアイドルがカブる人)"とはツルまない旨を宣言するコト。
ワンダが語る(コスプレのママでw)。
「私は、鉄道系バス会社の顧問弁護士をしていた。しかし、フブキがあーゆーコトになって、競合会社の顧問を続けるコトに疑問を持ち始めたんだけど…その矢先にフブキに捨てられた」
「あれ?鉄道系のバス会社って…あの去年、中央高速で事故ったトコロ?確か史上初の"バス運転手による煽り運転"が原因じゃなかったっけ?で、御社が運転手の"心のケア"費用をケチったのが事故の原因とか逝う事故調の報告書が出てたょね」
「その調査報告には、異議を申し立ててる。刑事訴訟も起こされてナイわ。とにかく!"数式"で死者の価値を決めてるのは幼女マニアの噂が絶えない"サクラ事務所"だけじゃないの。私だって損害賠償の分野ではトップクラスだから、フブキを死なせたバス会社から真っ先に相談を受けてる。だから、もし示談交渉一式を受託すれば、莫大な報酬が転がり込むハズだった。でも、死んだフブキのコトを思うと、私にはとても受けられなかった。あの日、私を見つめたフブキの、あの眼差しを思い出すと」
「でも、その眼差しにフラレたんでしょ、貴女?!」
「そう。わずか半年の恋だった。彼は脳腫瘍で、余命半年だったから」
「ええっ?」
"キス1"推しか否かを問わず、その時、御屋敷にいた全員が大きく仰け反る。
どうやらワンダが"キス1"フブキの元カノであるコトは間違いナイようだ。
他にどんなコトを知ってるのだろう。
「フブキは…ファンには知られてないけど、実は喫煙もしてた。余命半年の喫煙してる地下ミュージシャンなんて、賠償計算の世界じゃクズ以下ょ。逸失利益なんてゼロ同然だったわ」
「と逝うコトは"定額制"の方が高額と逝うコト?今回のバス会社の決断は、吉と出たワケだ。でも、確かプロデューサーのダンカは賠償が"数式"になるよう、僕達に働きかけてたンだけどな。彼は、ワザワザ賠償金が低額となるように働き掛けてたってコトかな?」
「ソレは逆。ダンカは、恐らく世間知らずなアキバのヲタクが"数式"を主張してデモとかしても、世間の反発を買うだけだと思ってたんじゃないかな。逆に賠償金額を"数式"で決めるやり方に批判が集まって、そんな世論を見極めてバス会社は"定額制"に傾く、と読んでたんだと思う」
ヒデェ話だ。アキバのヲタクは捨て駒かょw
「あの悪徳プロデューサーのダンカは、フブキの死で自分が儲けるコトしか考えてなかった。だから、こっそりフブキにマネージメント契約を見せてもらって少し書き換えておいた。コレで、フブキの賠償金は1銭もダンカには渡らない。ところで、フブキは、余命を承知でファンサービスに徹するコトを決め、私と別れる決心をした。ファンこそが、彼の恋人だったの。ジュリさん、だっけ?フブキにリアコしてくれてありがとう。だから、私達は私達のリアコを続けょ?私、貴方に負けないわ」
「…ズルいょ、そんなコト逝われたら、貴女を嫌な女って思えなくなっちゃう。ねぇ、ワンダーウーマン。この街では、昨日の自分から逃げ出すのを急ぐ必要はナイの。昨日から立ち直るために、安全な次元に一時退却しても誰からも責められない。アキバならね」
「…私の結婚は、夫の浮気で無残に終わった。慰謝料が入って喜んでたけど、知らない内に心の中に何もかも吸い込み消し去るブラックホールが出来ていた。夜な夜な過激なコスプレをして遊んでも絶対に消えない黒い闇。でも、その闇を、やっと消してくれたの。フブキが」
そして、僕達はセーラー服とワンダーウーマンがハグし合う、不思議な光景を目にする。
海外ドラマとかで目にするコミックストアのカウントダウンパーティのシーンみたいだ。
もうすぐクリスマス。そして新しい年が来る。
僕達自身が己の価値を知る年となるだろうか。
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"損害賠償(逸失利益)"をネタに、賠償専門の弁護士連中や曲者プロデューサー、幼馴染みのヤメ検弁護士、盛り髪のデリヘル嬢、もはや我が国発の文化とも逝える"ガンダム"のファンなどが登場しました。
TVで見聞きするNYの法曹界の空気を背景を秋葉原に置き換えて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。