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高校時代「小説」作品  作者: 迎 カズ紀
1年次作品
4/14

キミとの約束

1年次ラストの作品です

本日2本目の投稿

 暖かい日差しは久しぶりだ。ぽかぽかして気持ちがいい。

「咲花―。ご飯よー」

「待ってお母さん、すぐ行く―」

 サキカちゃんがミサキさんに呼ばれた。たぶんこの時間だしお昼ご飯なんだろう。ボクも行こう。

「あっ、空。ご飯だよー」

 階段を下りてくるサキカちゃんとあった。

「ちょっと待ってね。すぐ持ってくるから」

 そう言ってサキカちゃんはご飯を食べる所まで駆けて行った。

「お待たせ―。ご飯だよー」

 ありがとう、そう言うとサキカちゃんはにっこり笑った。ボクはいただきます、って動きをしてからご飯を食べた。

「えへへ、いつも空は美味しそうに食べるよね」

 たぶんほめてくれているんだろう。そういうサキカちゃんもいつも美味しそうに食べてるよ。

「じゃあ、またあとで遊ぼうね」

 サキカちゃんは今度は自分のご飯を食べるためにまたご飯を食べる所へ行った。


 日差しが当たるところでお昼寝しているとボクの名前を呼ぶ声がした。目を開けると、目の前にミサキさんがいた。

「ごめんね空。ちょっと咲花を呼んできてくれない?何回も呼んでるんだけど返事してくれないのよ。またイヤホンしながら音楽を聴いているんだと思うけど。」

 難しい言葉が多いよミサキさん。でも、呼んできたらいいんだよね。いってきます。

「ありがとうね空」

 ミサキさんの笑った顔がいつもと違う気がした。


 コンコンコンとドアを軽くたたく。サキカちゃん、お部屋から出てきてください。

「あ、空どうしたの?」

 ミサキさんが呼んでましたよ、と伝え、階段の方へ視線を向けると

「あ、もしかしてお母さんが呼んでる感じ?うひゃー、全然気付かなかったよ。空、ありがとう」

 と言って部屋から出ていった。

 サキカちゃんの部屋を見渡すと、茶色い箱がたくさんあって違和感があった。あんまりサキカちゃんの部屋に入らないけど、いつもはもっとゴチャゴチャしてるのに。キレイ好きになったのかな。


 しばらくするとサキカちゃんが戻ってきた。

「あ、空。あのね、大事な話があるの」

 サキカちゃんの顔もミサキさんと同じでいつもと違う感じだ。本当にどうしたの。今日はみんな変だよ。

「あのね、私、大学に近いアパートに住むんだ。だから明日でお別れなの。ごめんね空。」

 ダイガク……、ああ、最近その言葉よく使ってたね。

「私ね、動物のお医者さんになりたいんだ。大学で頑張って勉強して夢を叶えるんだ。そのために今まで頑張ってきたんだもの。隣の県だから、あんまり帰ってこられないかもしれないけど…。でも、私頑張るんだから。応援してよね、空。」

 サキカちゃん、難しい言葉ばっかりでわからないよ。ボクには難しすぎるよ。でも……、

「頑張ってねサキカちゃん」

 そう言ったらサキカちゃんは

「ありがとう」

 と言って、陽だまりのような笑顔を浮かべてくれた。

 三年前のキミもこんな笑顔だったね。あの時のボクにはわからなかったけど、今ではわかるよ。


 ―はじめまして。私は咲花。これからよろしくね。―

 あの時のボクは全然何を言われているのかもわからなかったし、今振り返ってもこの言葉くらいしか覚えていないけど……。あの時の笑顔はちゃんと今でも思い出せるよ。

 サキカちゃんの笑った顔、怒った顔、悲しい顔、全部覚えているよ。キミが悲しそうにしてる時、ギュッとだきしめるくらいしかできなかってごめんね。

 だから今もギュッとすることしかできないんだ。


「いってらっしゃい、サキカちゃん。ボクはまだまだ生きるから、また一緒に遊んでね」

 ボクの頭の上に、ちょっぴり温かくて優しい雨が降ってきた。


 *  *  *


 もうすぐ新しい生活が始まるんだ。優しく暖かい風がそう実感させてくれる。

「咲花、お父さんが車で待っているわよ」

「はーい。あ、ちょっと待って」

 私はもう一度家の中を確認した。

「よし、よし、ここも……うん、大丈夫だね。忘れ物なーしっと。最後に……」

 玄関に戻ると、空が私を見上げていた。少し悲しくなって泣いてしまいそうになる。だめだなぁ、笑わないといけないのに。

「空、行ってきます」

 ワン、と元気よく返事してくれた。名残惜しいけど、仕方ない。空に微笑んで私は家から出た。


「ねえお父さん。空ってさ、あと何年生きるのかな」

「さあ……。でも犬の寿命って短いとか言われるけどまだまだ生きるよ。だから安心して勉強してきなさい」

「はーい」


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