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高校時代「小説」作品  作者: 迎 カズ紀
3年次作品
12/14

小夜曲

本日2本目の投稿です。同じく新入生歓迎号に載せたページ数稼ぎのため急遽制作した作品。ファンタジー用のネタ帳にいたキャラ達なので、いつかメインで書けるようにしたいです。

「セレナーデ?」

「そう、セレナーデ」

 それを使ってあの子に告白しなよ、とマリウスはカイに告げた。

「残念だけど、僕は音楽の魔法に長けてないんだよ」

 カイは横に首を振った。カイが使える魔法は植物に関連するものばかりで、魔法で選んだ茶の葉でおいしい紅茶を入れるくらいだった。

 マリウス自身が使える魔法も光の調整くらい。音楽の魔法は使えない。

「ぼくの知り合いにアスセナって女の子がいるんだけど、彼女が簡単なものなら教えてくれるはずだよ」

 ちょっと待って、とカイは思った。

「どうして今イリスに告白しなきゃいけないの?」

「ぼく、一度もイリスになんて言ってないけど……。まあ、良くないうわさを聞いちゃってね」

 カイの想い人のイリスは治癒の魔法が使えることで有名だった。そんな彼女は近々レイモンドという人に雇われ隣の国の行ってしまうらしい。

「出発は一週間後。それまでにアスセナからセレナーデの魔法を習って、イリスに披露しようよ」

 マリウスはいつもより強く言う。そりゃあ告白したいけど、とカイは思うだろうが強く押さねば実行しないとわかっているからだ。

 カイも数歳年上のマリウスには敵わない。しぶしぶ、といった感じでうなづいた。けれどもカイの目はとてもまっすぐで決心がついているようだった。

「美味しい紅茶も一緒に渡せば、へたっぴでも笑ってくれるよね」

 愛しのイリスのために。そう強く誓った。


 アスセナはまだ駆け出しの魔法使いだったが音楽の魔法はこの国の誰にも負けていなかった。

 魔法は基本的に生まれ持った属性のものしか使えない。けれども簡単なものならそれに長けている人に教えてもらうことで使えるようになる。

 セレナーデは一般的で有名な魔法らしい。アスセナの教え方がうまいこともあり、カイは二、三度の練習でなめらかに魔法を使って演奏できるようになった。ピアノで奏でるセレナーデの曲は少し不器用だが悪くない。

「ところでマリウス、どうしてセレナーデにしたの?」

 カイだけでは心細いだろうとマリウスも練習に付き合ってくれていた。

 マリウスは少し言葉につまりアスセナのほうを見た。アスセナは呆れた顔をしてマリウスをひじで小突く。

「イリスは夜が好きだから。セレナーデは小夜曲とも言うんだよ」

 マリウスはカイを直視せずに言った。カイはそれを不審に思ったがマリウスが影で何か考えているのはいつものことだっとので気にしないことにした。

「僕、もっと練習するよ。イリスを喜ばせたい」

 カイはがぜんやる気になって練習に励んだ。カイが経営しているカフェも休まず、夜遅くから練習を頑張っていたのでマリウスとアスセナ以外は秘密の練習に気付かなかった。

 常連だったイリスも引越しの準備でぴたりと来なくなった。マリウスはカイに寂しくないの、と聞いたがカイは首を横に振る一方だった。

「イリスに愛想着かされても知らないよ」

「大丈夫だよ。会えないのは辛いけど、これからもっと会えなくなるんだから」


 イリスの出発前夜、カイのカフェで送別会をすることになった。店にピアノはなかったがアスセナの協力でどうにかなった。

「カイの魔法で作った植物のピアノ、綺麗だね」

 大木を小さなサイズで生やし掘ったピアノに花を生やし、アスセナの魔法で音が出るようにした。それだけだと少し見栄えが悪いからマリウスの魔法でキラキラ輝くようにしてもらった。窓辺に置かれた一夜限りのピアノだが、皆からの評判は良くカイは安心した。

 イリスも喜んでくれたが、どこか不満げだった。

「イリス、あんまりピアノ好きじゃない?」

 おそるおそるカイは聞いたがイリスは首を横に振った。

「最近夜遅くに来てもいなかったのってこれのせい?」

 うん、とうなづくと同時にカイは後悔した。

「紅茶、淹れてあげられなくてごめんね」

「いいよ、その代わり今日はたくさん飲むからね。それに今日はカイが演奏してくれるんでしょ。さっきアスセナから聞いたよ。何を弾いてくれるの?」

 イリスが笑いながら許してくれたのでカイはほっとした。

「紅茶でも飲みながら聴いてよ。えっとね、セレナーデ」

 カイがそう言った瞬間イリスの顔は真っ赤に染まった。

 まだ告白していないのに、とカイはあわてたが、カイがその理由を知るのはもう少しあとだった。


セレナーデ

夕べ時に男の人が恋人の窓辺で歌う“愛の歌”

この世界では告白するときに

使われる魔法として有名

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